世界支配を目論む超国家権力体(グローバルな金融・経済財閥連合体)が、自らの描く未来を手にするために、世界各国において中間層を抑圧する装置として上部と下部の双方に下部組織を設置したとする仮説は、強ち否定はできないように思えます。いわば、‘挟み撃ち作戦’なのですが、上下何れの組織も、超国家権力体の主要な収益源に麻薬密売やギャンブルなどが含まれているために、反社会的な活動と密接に関わることとなります。それでは、日本国の場合はどうなのでしょうか。
先日、最高裁の判決によって自民党野田聖子議員の配偶者が暴力団員であった事実が確定したとするニュースが報じられていました。同議員は、日本初の女性内閣総理大臣を目指していただけに驚きの声もあったのですが、むしろ、配偶者のバックを知りながら自らを総理大臣の座に相応しいと考えていた同議員の感覚に驚かされます。一般的な国民の常識ではあり得ないからです。もっとも、政界と‘裏社会’との繋がりは以前より指摘されており、政治家には選挙で見せている表の顔とは異なる裏の顔があることを知る国民は少なくはないのかもしれません。
日本の政治と裏社会との関係については、フランス人ジャーナリストであるフィリップ・ポンス氏の『裏社会の日本史』(筑摩書房、2006年)が、タブーを排して客観的な視点から詳述している点において大変参考になります。同書は、政治学の古典書を100冊読むよりも日本政治の闇、あるいは、政治家の不良化問題の理解には役立つと言っても過言ではありません。目からうろこが落ちるような記述も多く、自らの不明を恥じたのですが、同書は、民主主義国家の裏側、否、世界支配の構図をもそれとなく描き混んでいます。そして、同書は、本ブログの仮説を裏付けているようにも思えます。
何故ならば、GHQやCIAによる対日政策についても触れているからです(KCIAも関連・・・)。因みにCIAは、アメリカという国家の情報機関ではあるものの、その実態は、超国家権力体の出先機関とされています。戦後、敗戦国であった日本国の占領に当たって、GHQが、日本国の治安を維持するために「やくざ」を使ったことは事実のようです。当時の「やくざ」とは、親分子分関係が厳しく律せられている任侠の世界を生きる人々であったため、賭博を中心に反社会的な活動に従事しながらも、メディアによる美化の影響もあって‘保守的な組織’として、当時は大衆からも好意的に受け止められていたとされます。自民党、否、政界には、児玉誉士夫や小佐野賢治、あるいは、笹川良一といったフィクサー等を介したものであれ、これらの組織との関わりの深い議員も少なくありません。東京裁判で有罪判決を受けたものの、後に釈放された岸信介の名はしばしばGHQとの関連で登場してきますし(何らかの‘司法取引’が疑われる・・・)、60年代にあっても、佐藤栄作、河野一郎、田中栄一、木村篤太郎などの保守政治家たちも親交があったとされます。今日にあっても、二階元幹事長など、その行動や発言を見ておりますと、到底‘かたぎ’とは言いがたい政治家も見られます。
こうしたGHQ、並びに、その後のCIAとの結びつきは、暴力革命を目論む共産主義者との闘いにおける‘必要悪’として説明されています。‘暴力は暴力を以て制す’、という戦略となりましょう。戦後、民主主義国家として再出発したはずの日本国は、そのスタート地点から、既に戦勝国による暴力の容認という真逆の政策に翻弄されることとなるのです。なお、超国家権力体が麻薬密売やギャンブル等の‘元締め’である点を考慮しますと、冷戦期における‘共産主義の脅威’という根拠は、自らの利益を温存させるための方便であったのかもしれません(冷戦という二項対立構造もまた、超国家権力体による‘分断作戦’の一つである可能性も・・・)。
おそらく、戦後の間もない頃から1990年あたりまでは、日本国における‘挟み撃ち作戦’は、1955年に保守合同により設立された自由民主党を上部とし、「やくざ」とも重なる極右団体を下部とする構図によって遂行されていたのでしょう。もっとも、この時期は、東西冷戦期にありましたので、分断作戦の主戦場は保守と革新の左右のイデオロギー対決にありました。このため、右翼団体が動員されたのは、主として、労働争議や反政府デモといった革命勢力と目されていた社会・共産主義者との闘いの場です。しかも、上下の‘挟み撃ち作戦’の構図は、下部の「やくざ」が自らを‘はぐれ者’と認識して一般人には危害を加えないとする掟を固く守る一方で、一般大衆からは一目置かれる存在であったため(終戦直後には、これらの組織が韓国・朝鮮・中国系のマフィアから市井の日本人のみならず、警察をも護っている・・・)、中間層に対しては殆ど抑圧装置としての効果は及ぼしていません。すなわち、冷戦期における上下による‘挟み撃ち作戦’のターゲットは、左翼勢力であったと考えられるのです。