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オヤジの親父

2013-04-07 17:14:00 | インポート

4月になって例年より早い桜が満開になり、

もう散ろうとして柄にもなく感傷的になってしまったのからだろうか。

ふと5年前に亡くなった親父の事を思い出す。

車や趣味的な内容でないのは勘弁願いたい。

 

5年前のある日のことだった。

運転中の俺の携帯が鳴った時なんとなく嫌な予感はあったのだが出ない訳にはいかない。
時刻は17時を少し廻ったところだった。


「もしもしAさんですか?今どちらにおられます?早く病院に来てください。もう・・・。」
今向かっている道中だと返答すると看護師は言う事だけ伝えて電話を切った。

入院中の親父が今朝から危篤状態になり一旦病院に向かった後、
母親をタクシーで呼び寄せ夜の付添の準備の為、帰宅して再び病院に戻っているところだった。

それでも残り道中10分程の時間がとても長く感じられる。
間に合わない不安を抱えながら気だけが焦る。

親父は1年前にくも膜下出血で倒れたのだった。
既に核家族化して老夫婦二人の生活だったが年齢や健康状態の事もあり、
実家近くの建売りに移り住んだのは阪神大震災の翌年の事だった。

母親が階段下で倒れている親父を見つけ夜中に慌てて電話してきたのだ。
すぐに救急車を呼ぶ事と運ばれる病院名だけは忘れないようにと指示する。

近くの市民病院の処置も良かったのか2日間の昏睡状態の後、
手術も成功し意識も戻って来たのでした。
くも膜下の発作で階段から落ちたのか足を滑らせて頭を打ってくも膜下になったのかは

本人の記憶も曖昧で定かではない。
病院で判ったのはくも膜下だけでなく全身打撲で鎖骨、肋骨も骨折していた事実だけ。
主治医の言うにはオートバイで転倒事故したような状態らしかった。

夜にテレビを見ながら晩酌をするのが日課になっていた親父に飲み過ぎに
口やかましく言う母親はもう先に床についていたのでした。
寝室は二階にあり夜中に母親がたまたま見つけたのは不幸中の幸いとも思えた。

両親ともに昭和初めの世代で青春時代に戦争、敗戦を経験し
特に父親は現役時代に高度経済成長を迎えた典型的な中小企業のワンマン経営者というやつでリタイヤしてからも頑固さやプライドも高く、とにかく自分がルールブック的な親父なのだ。

外科的には上手く行ったはずだったが術後せん妄が激しかったのは驚かされた。
「せん妄」とは一見認知症のように思えるが手術をきっかけに記憶や意識の混濁、言語などに
障害がおきるもので簡単にいえば「ここはどこ?私は誰?」状態になることだ。
高齢者に多いようで緊急入院~手術で気がついたら突然病院のベッドに寝かされている状態は
俺でもビックリするだろう。

病人に対して不謹慎かも知れないがこういう状態は潜在的な意識が出てくるもので、
自分が過ごしてきた人生で身につけた見栄やプライドみたいなものが取れてしまい

大変興味深かった。

母親に対しても自分の女房との認識がなく何となく知っている世話役の女性扱いで、

遠方から駆けつけてきた姉や妹にも認知状態はやや鈍い。
なのに全く不思議なのだが俺に対してのみは大丈夫なのだ。
それどころか全く普通なのである。

行くと世間の景気や商売の話に加えて俺の妻、子供の様子を真剣に聞いて来る。

役者が演技してもそこまで使い分けることは不可能かと思える態度に笑ってしまいそうだった。
二ヶ月の入院生活でかなりまともにはなったのだけど、
その間に今まで聞いた事のない親父の子供の頃の話や親戚や生まれ故郷の話は面白かった。
どうやら脳に刺激が与えられて奥底に眠っていた記憶が蘇ってきたようなのだ。


俺という息子がいるにも関わらず(これは別なのか)世話してくれる看護師にメモを渡して
求婚したり、白衣の医者や彼女以外の看護師の事を怪しげな

宗教団体だと説明してくれたりしたのも面白かったぜ。

医者でも科学者でもないので断定は出来ないが

俺はこれは「女性と男性の違い」と「血」、今風に言えばDNAではないかと思っている。
認知症の身内に対しての接し方みたいな話で相手の言う事を否定せずに聞いてあげるというのがあったように思うが、

緊急患者で運ばれた時はナースステーションの傍の部屋で、

意識が回復して別の部屋に移された時、丁度最初は南側に街が見える風景で

変わった北側の部屋からは山が窓から見えていたのだった。
それを「最初神戸に連れて来られたと思ったら今度は広島にきたようや。」と親父が言うのを
母親も姉も「お父さん違うで、ここは○○病院やで。」と強く言い返し、
俺は「部屋が変わって風景が違うからなあ。」程度の言い方をする訳だ。

こちらにすりゃ意識が戻って会話できるだけでも有難いので

神戸でも広島でもどうでも良い事と思えるのだが、

彼女達には「お父さんまだおかしい。」というふうに考えるのであった。

細かい部分は無視して大局的に話をすれば判るだろうと何度言っても

母親や姉、妹にはどうしても出来ないようなのだった。

 

そうなると段々と俺にしか言いたい事を言わないようになる展開は見えている。
話が通じるのは俺だけと思われて昼間でもしょっちゅう呼び出されるのも困ったものだった。
長年連れ添った母親にしてみれば認知されないショックが大きかったのだろうが、
嫁と言えども元々は赤の他人である。
そう考えると嫁より血の繋がった子供には何か通じるものがある気がしてならない。

 

10年前に先に亡くなった妻のお母さんが末期ガンで昏睡状態になった時の事、

妻のところもうちと同世代の両親だ。

亭主関白にじっと大人しく仕えている感のあった女性であったが義父が病室に入る度に

脳波が乱れるのだ。

実の娘が付き添っている時は安定しているのに毎回そうなるのは不思議だったけど、

義父自身が付き添いに来てオロオロするのを見ていると気の毒に思えたものだった。

一旦退院して帰宅した際にフォークルの着メロで恥をかいたのは以前に書いた通りだ。

その義父も2年後に他界してしまったが、夫婦の初めは他人と思ったのもその頃だった。


後日それを決定づけるような出来事が起きるのだが、その時は何となくそう思っただけだった。

 

入院して落ち着いて来るとお決まりの肩たたきがやってきた。

もう緊急性が無くなったので退院するように言われるのだ。

 

本人はもう十分帰宅して元の生活が出来ると思っているようだが俺以外に対する認知状態は

非常に悪い上に下の方もまともに出来ない様ではとても連れては帰れない。

 

一見元気に見える母親は親父が倒れる5年前に肺癌を患っており判った時点でステージ3。

術後の経過は落ち着いているが親父の介護が出来る訳もなかったのである。

それよりプロの看護師か俺と言う通訳なしに日常生活が営めるはずもないのは判り切っている。

 

結局リハビリ病院を紹介してもらい、そこも3カ月で追い出され運良く特別介護老人ホームに

入ることが出来て暫くはホッと出来た矢先に今度は肺炎を起こして意識不明になり

ホーム近くの病院に1週間前に救急車で運ばれたのだった。

 

もう何度も経験することではないが両親のお陰で後期高齢者の保健制度や介護認定、

老健施設や特老ホーム、リハビリ病院など色々と知って良い経験が出来た。

世の中知っていれば得をして知らなければ損をする事がとても多いのである。

 

点滴や治療のお陰ですぐに意識は回復し、もうすぐ再びホームに帰れると思っていただけに

まさかこんな急に容態が悪くなるとは夢にも思っていなかったのだ。

車はようやく病院の駐車場に着いた。

急いで病室の扉を開けるとシーンと静まっている。
主治医と看護師、母親も黙ったままだ。体につけられた管の先の計器も反応がない。
あかん間に合わんかった・・・。

 

つづく(?)


コメント

--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。

若隠居 [2013年4月9日 21:53]
???

若隠居 [2013年4月9日 21:55]
あれ?
失礼!

昼間、
いくら「投稿する」を
くりっくしても、
投稿できなかったので、
寝る前に試したら、、、、。
若隠居 [2013年4月9日 21:57]
人生の最後は、
親本人にしても
子にとっても
さまざまなドラマがありますね~
車好きオヤジ [2013年4月10日 16:33]
ご隠居コメント有難うございます。
どうも他人事とはいえ人の生死にかかわるような
重たい話で引かれてしまったようですね。
敢えて書かねばならぬというより単にネタ不足だった
だけですので続編はやめておきましょう。
~アキラ~ [2013年4月10日 20:44]
確かにコメントが難しい内容ですが、オヤジさんらしい文章だと思います。
仕事がらお年寄りの死に接する機会が多いですが、やはり寂しい気持ちは慣れませんね。
祖母が今年の8月で100歳を迎えます。だいぶ弱ってきたので心配ですが、まだ会話もしっかりしています。がんばって100歳を迎えてほしいものです。
車好きオヤジ [2013年4月10日 21:50]
アキラさん毎度おおきにです。
今の自分を振り返ると親がいて存在しているみたいな
当たり前のことをふと思う気になってしまいました。
で、この私にも子供がいるみたいな・・・。
その二人の子供も今月それぞれ巣立って行きました。
順送りなんですけどね。

若隠居 [2013年4月13日 7:00]
再コメント
続編待ってますよ~
私達夫婦は、いろいろあって、
親を9人、いろいろな形で見送りました。

親の世話を終え、子供が巣立ち、
ホッとして気がついたら、
今度は、自分達の番だね~
と笑っています~

還暦すぎたら、
ジジババでお終いかと
若い頃は思っていたけど、
どうしてどうして
これがまた楽しいんだよね~
車好きオヤジ [2013年4月13日 9:43]
ご隠居おはようございます。
今回は長過ぎるとの批判はなかったようで良かったです。
気が向いたらアップするかも知れませんが
オチはおまへんでしょうな(笑)!
若隠居 [2013年4月13日 10:18]
内容からして、
オチは期待できないだろうと思っていますよ~
でも、人生の最期の話、
最後まで読みたい~
はやてこまち [2013年4月13日 21:58]
こんばんは。
コメント出来ずにおりましたが、じっくり読ませて頂いてました。

本文とは関係ありませんが、今朝の大きな地震は大丈夫でしたか?
車好きオヤジ [2013年4月13日 22:35]
はやこまさん、こんばんは。
ノープロブレムと申しておきましょう。
今日野暮用で日中淡路から徳島往復しましたが、
少なくとも幹線や街の雰囲気も普段通りでした。