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バイオマスの利用!食品廃棄物からエタノールつくる技術実用化

2010年05月11日 | エネルギー
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 廃棄物からバイオエタノール
 食品廃棄物からバイオエタノールをつくりだす技術の製品化に新日鉄エンジニアリング社が成功した。同社は自治体や、大量の食品廃棄物を排出している企業などへの営業活動を始める。

 同社は北九州市で5年かけて実用化を目指した実験事業を実施、1日約10トン(乾燥重量約2.9トン)の食品廃棄物を破砕選別、糖化、発酵、蒸留して約500リットルのエタノールが製造できることを実証した。このエタノールを3%混ぜたE3バイオガソリンを同社の業務用車と北九州市の公用車約20台に使用し、既に走行試験も実施済みだ。

 食品廃棄物は国内で年間、約2,000万トン排出されるが、うち1,700万トンはリサイクルされず、ほとんどが焼却処理されている。新エネルギー国家戦略によると現在、ほぼ100%石油に頼っている運輸部門のエネルギー消費を、2030年までに石油依存率80%まで引き下げなければならない。この目標を達成するにはエタノールに換算して年500万-700万キロリットルのバイオマス燃料を使用する必要があるとされている。

 今回、製品化に成功した技術を利用し、国内で発生する食品廃棄物すべてを処理できたとすると、年約70万-約100万キロリットルものエタノールをつくり出せる計算になる、と同社は言っている。

 この成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託を受け、新日鉄エンジニアリングに北九州市と株式会社西原商事が協力して得られた。(2010年4月20日 サイエンスポータルニュース)

 新エネルギーとは何か?
 石油依存社会からの脱却は、世界にとっても重要な課題だが、とりわけエネルギー資源の少ない日本にとっては、重要な課題である。そのため石油に変わる新エネルギーの利用が考えられている。

 新エネルギーとは「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令」により指定されており、バイオマス、太陽熱利用、雪氷熱利用、地熱発電、風力発電、太陽光発電など再生可能エネルギーのことである。

 バイオマスとは、生物由来の資源のことであり、その中にバイオエタノールがある。バイオエタノールは、カーボンニュートラルな自然エネルギーであり、燃焼させても地表の循環炭素量を増やさないと同時に、既存の化石燃料の供給インフラや利用技術を大きく変更せずに利用できるため、地球温暖化に対する関心が高まる中で代替燃料として注目されている。

 日本では、政府全体が「バイオマス・ニッポン総合戦略」に取り組んでおり、輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料の普及を目指す下で、ETBE(バイオマス由来ガソリン添加剤)、E3(3%のエタノールを含むガソリン)などの導入が推進されている。

 2010年度に原油換算で50万kL相当のバイオ燃料を輸送用燃料として導入する目標が立てられており、そのうちの21万kL相当分の実現について協力を求められた石油連盟では、同量のETBE供給を目指して態勢整備を開始した。

 2007年4月にはその第一歩として、首都圏50か所のガソリンスタンドにおいてETBE混合ガソリンの供給が始まった。さらに、E3よりも高濃度のエタノール混入に対応するため、国土交通省では、E10対応の車両の安全・環境性能に関する技術指針の整備も進めている。現在の法律では「揮発油等の品質の確保等に関する法律」で、ガソリンへのエタノールの混合許容値は上限が3%までと定められており、普及のためには法改正が必要である。

 バイオエタノールは何からつくられるか?
 バイオエタノールの原料は、理論的には炭水化物を含む原生生物由来の資源であれば何でもよい。しかし、生産効率の面から糖質あるいはデンプン質を多く含む植物資源が選好されており、現在では主に次のような農産物が原料として利用されている。ブラジルではサトウキビに由来するモラセスが、米国ではトウモロコシが、欧州では甜菜が主な原料となっている。

 その他、スイッチグラス(イネ科の一年草)、パルプ廃液、バガス、廃材木、もみ殻・稲藁など、多様な植物由来資源に含まれるセルロースなどの多糖類を分解して原料とする研究が進められているが、2007年の時点では実証プラントが操業を開始した段階であり、商用化には至っていない。

 また日本では東京農業大学において残飯等からバイオエタノールを抽出する研究がなされている。また、2008年には宮崎大学により、食料系、葛粉として加工されるクズの根部分からバイオマスエタノールを濃縮抽出する技術が開発された。その葉、茎から濃度11.38%のエタノールが出来たことで注目されている(トウモロコシの場合は8%ぐらい)。

 そして、今回、新日鉄エンジニアリング社が、食品廃棄物からバイオエタノールをつくりだす技術の製品化に成功した。今後いよいよ実用化に向けて動き出す。食糧となるトウモロコシやサトウキビを使わず、廃棄物を有効利用する素晴らしい成果だ。日本など先進諸国では食品廃棄物が多い問題もあった。
 
 バイオエタノールの問題点
 バイオエタノールといえば、2007年1月、トウモロコシの価格が1ブッシェル(約21kg)あたり4米ドルを突破したが、これは2004年から2006年にかけての平均価格のほぼ2倍の水準である。また、砂糖の価格も同時期の比較で2割ほど高くなっている。

 この間、トウモロコシやサトウキビがバイオマスエタノールの主要原料となっており、バイオマスエタノールの生産量が増勢を維持していることを背景に、バイオマスエタノールの増産が原料となる農産物の価格高騰を招きエタノールと食料との競合が生じているという見方が広まった。

 とくに米国におけるトウモロコシを原料とするバイオマスエタノールの生産には多額の補助金が支出されているため、補助金を支出してまで食料品を燃料に転換することで食料品価格を上昇させることはないという批判が聞かれた。

 このような批判は、バイオマスエタノールの商業的な生産が増加することによってバイオマスエタノールの原料となる作物に対し追加的な需要が生じているとみられることを考えると一定の説得力がある。たとえば米国の場合、平年のトウモロコシ生産量の15%がエタノールの原料となっている(2006年)。

 トウモロコシのような農産物の場合、需要の増加に対応して供給が増加するためには最低でも翌年の生育・収穫期まで1年の時間が必要であることを考えると、たとえ需要の増加がわずかであっても大幅な価格の上昇を招くことはあり得ないことではない。また、他の作物からバイオマスエタノールの原料作物に転作する生産者が増加すれば、転作によって供給が減少する作物(とくに大豆)の価格が今後高騰する可能性も指摘されている。

 その他の問題点
 バイオエタノールは、仮に地球上の全耕地面積でエタノールの原料を栽培してエタノールを生産しても、現在消費されているガソリンを置き換えることができないことや、バイオエタノールの利用を拡大していくにつれ発生する問題の大きさを考えると、バイオエタノールを中心的な代替燃料として想定することは適当ではないという意見も強い。

 またさとうきびにせよトウモロコシにせよ栽培する必要があり、その為には農業機械を動かし、肥料や農薬を投入するためのエネルギーが必要である。このようなバイオマスエタノールの代替エネルギー源としての妥当性に懐疑的な立場からは、米国などにおいてエタノールの生産に多額の補助金が投入されていることも強く批判されている。(Wikipedia)

 

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