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謎の「深層流」の真相は?南極沖に海の循環「エンジン」発見!

2010年05月16日 | 地学
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 表層海流
 日本のまわりの代表的な海流とは何だろう。そう、黒潮や親潮、対馬海流やリマン海流などがある。海流はどうして起きるのであろうか?

 海には一定のリズムで、寄せては返す波がある。台風などが近づくと、波やうねりは大きくなり、荒れ狂う姿を見せることもある。波が高くなるのは、そう風のためである。風の力が海流をつくる。これを表層海流という。

 表層海流が風によって起こるということは、例えば池の表面に風によって、さざなみが立つのを見ても、直感的に理解できる。したがって昔の海洋学者は、深海では風の影響が無いので完全に静止した世界であろうと考えていた。

 深層海流
 ところが、現在の計測機器の発達により深海にも、潮汐による流れに加えて、表層よりかなり弱いながらも海流があるということがわかってきた。深層の流れを駆動するおもな原因は密度の違いと考えられているが、近年の研究では風がおもな駆動力の起源という説も有力である。

 海水の密度は全地球で一様ではなく、その違いは明瞭で不連続である。表層で形成される水塊の間には明瞭な境界が存在し、その性質を維持している。軽い水塊が重い水塊の上に乗るというように(木片や氷が水に浮くように)、形成された時の状態で決まる密度によって、重い方が潜り込み、軽い方が乗り上げるというような状態を示す。

 海水の密度は、温度と塩分と圧力によって決まる。冷たい海水、塩分の多い海水は、それぞれ温かい海水、塩分の少ない海水より高密度になる。水塊は最も安定した状態を保つため流動する。これを熱塩循環という。

 海の循環「エンジン」
 北海道大の深町康・助教(海洋物理学)ら日豪の共同チームが、南極大陸沖の深海で、水温0度以下の冷たい海流(深層流)が赤道に向かって大量に移動している様子を突き止めた。

 流量は毎秒1200万立方メートルと試算され、東京ドーム10杯分に相当する。深海を長時間かけて移動する冷たい海水の循環は気候に影響を与えると考えられているが、未解明な部分が多い。科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(電子版)に掲載された。

 チームは南極大陸から約500キロ北のインド洋で、水深1000~4500メートルに70個以上の機器をつなぎ、流速や水温を2年間連続で測定した。その結果、水深3000メートル以上の場所で、深海としては非常に速い毎秒20センチ以上の流れを確認した。海流は赤道に向かって北上しており、全体の流量は毎秒1200万立方メートルと試算した。

 深層流は、比較的高温の海流が極域で冷やされ、北大西洋のグリーンランド沖と南極大陸沖で沈み込んで生じる。低温の深層流は1000年以上かけて地球を一巡。こうした熱の循環は気候に影響を与えると考えられているが、南極から赤道方向への深層流は、北大西洋に比べて観測が遅れている。

 深町助教は「深海の流れとしてはこれまでに計測された中で最も速い。海の循環を駆動する『エンジン』の一端が見えてきた」と話す。(毎日新聞 2010年5月11日)

 南極は地球の心臓だ!
 深い海の中にも海流があるとは驚きであるが、この流れのスピードは秒速数cm程度で、1000年から2000年かけて、地球を一周するという。

 この広い海洋で、深海に海水がもぐり込む場所が、北極と南極付近にある。どうして極寒の海域で海水の沈み込み現象が起きるのであろうか?

 南極のきびしい寒さは、冷たくて重い海水も大量に作りだす。この海水が海の底へ沈んでいくので、かわりに海底から深層水が上がってくる。南極の寒さは、海をかきまわすポンプになっている。

 南極海の深層水は、養分をいっぱい含んでいる。大量の深層水がわき上がるために、南極の海は、日本の周りの海より、栄養分が8~10倍も濃い!この栄養でオキアミが大量に育ち、大きなクジラもそれを食べにやってくる。

 海の水が寒さで温度が下がり、ついに凍ってしまうときには、海水の中の水分だけが氷になる。塩分は凍らないで氷の外へ追いだされるので、塩分の濃い重い海水ができる。

 海水が凍っていく氷の下では、塩分が濃くなって重くなった海水が底へ向かって沈んでいく。南極の凍る海で生まれた冷たくて重い海水は、深い海の底に沈みこんで南極の外へ流れ出す。この流れ出す力が、地球全体をまわる深層流を動かしているのだ。

 深層流は千年以上かけて地球の海を回っていて、地球の気候などの環境に大きな役割を果たしていると考えられている。深層流の上部の流れは、黒潮など表面の海流とは違う流れだ。3000~4000メートル以上の深さを流れていて、表面の温度や養分に影響を与えている。

 地球は赤道など熱帯地方が暖め、北極や南極で冷やされている。このバランスをとって、地球の穏やかな気候を保つことに、深海流は大切な役割を果たしている。

 南極で作られた栄養分の濃い海水を、深層流が世界の海に運んでいる。この栄養分が世界の海でプランクトンを育て、地球の豊かな海を作りだしている。

 

参考HP Wikipedia「熱塩循環」「海流」・南極サイエンス基地「深層海流を動かす南極の氷」 

新しい地球学 ―太陽‐地球‐生命圏相互作用系の変動学
渡邊 誠一郎
名古屋大学出版会

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海―知られざる世界〈第2巻〉めぐる生命の輪・深層海流二千年の大航海 (NHKスペシャル)
NHK「海」プロジェクト
日本放送出版協会

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