
視神経の再生に成功!
視神経を再生させる仕組みを突き止めるとともに、傷付いた視神経を再生させることに、東京都神経科学総合研究所など日米の共同研究チームがマウスの実験で成功した。日本で最大の失明原因である緑内障など視神経の傷みが原因で視覚障害を起こす病気は多く、チームは「新たな治療・予防法の開発につながる」と期待する。米科学アカデミー紀要に発表した。
視神経は、網膜で受け取った視覚情報を、眼球から脳に伝える働きをしている。ヒトの場合、網膜表面に並んだ細胞体から長さ約7センチの視神経が約100万本、脳に向かってコード状に伸びている。
同研究所分子神経生物学研究部門の行方和彦研究員(分子生物学)と原田高幸部門長(眼科学)らは、神経細胞でしか働かないDock3(ドックスリー)というたんぱく質に着目。培養中のマウスの神経細胞に、このたんぱく質を作る遺伝子を導入すると、手のひら状の視神経の先端が活発に動き、伸びることを確認した。
次に、このたんぱく質を作る遺伝子が、野生型マウスの約5倍強く働く遺伝子改変マウスを作成。眼球近くで視神経を傷付けたところ、野生型の視神経はほとんど再生しなかったのに対し、改変マウスでは大幅に再生した。
Dock3は、視神経の先端で細胞の骨格を作る仕組みに刺激を与え、再生を促すとみられる。同様のたんぱく質を作る遺伝子はヒトにもあり、原田さんは「視神経は一度傷付くと治療できないのが現状だが、傷んでも(根元部分の)眼球内の細胞体は一定期間、正常のまま保たれる。この間にDock3による遺伝子治療などで傷付いた部分を再生できれば、視覚機能を回復させることが可能だ」と話す。(毎日新聞 2010年5月2日)

緑内障とは何か?
緑内障は視神経が死んで、失明する危険のある病気である。その原因は眼圧が高くなることで、視神経を圧迫することにある。日本では40歳代では2%、70歳代になると10%を越える(2004年)。日本国内で治療中の患者は約30万人。潜在患者数は400万人ともいわれる。
ではどうして眼圧が高くなるのだろうか?それは角膜とレンズの間にある房水という液体が循環しなくなって、溜まることが原因だ。眼球の前の方にある角膜と水晶体は、カメラにたとえるとフィルターやレンズにあたる組織。当然、透明でなければならず、血管も存在しない。
このため必要な栄養は、眼球前方を満たしている房水という液体から得ている。緑内障という名前は、この房水がなにかの原因で過剰に溜まったときに、角膜がむくんで瞳が青っぽく見えることに由来する。 実際には瞳の色の変化や、痛み充血などを伴わず進行する。
カメラのフィルムにあたる網膜には、一面に視神経がはりめぐらされている。その視神経が、太い1本の束となって脳へ向かうところを、視神経乳頭〈ししんけいにゅうとう〉という。
緑内障は、この視神経乳頭が眼球内側から押し潰されることで(医学的には陥凹〈かんおう〉という)、正常に機能する視神経が減少する病気。一度失われた視神経は、二度と元に戻らない。病気の進行とともに、見える範囲が徐々に狭くなり、最悪のケースでは、失明する。
再生医療との関係
現在再生医療の分野で注目されている幹細胞。3月28日のNHKスペシャル「人体製造」では、何と失われた指が生え代わった!細胞外マトリックスが体内に存在する幹細胞を呼び寄せる性質があるらしい。番組では幹細胞を使った美容整形、臓器再生などを紹介していた。
幹細胞というのは、自己増殖しながら、組織や器官をつくる別の細胞に変わることのできる万能細胞のこと。注目されている幹細胞では、iPS細胞、ES細胞、骨髄幹細胞、間葉系幹細胞などがある。先日、東北大学の出沢真理教授らの研究チームが皮膚細胞の中から、新しい幹細胞「Muse(ミューズ)細胞」を発見した(4月20日の米科学アカデミー紀要)。
これらの幹細胞を使って、犬、豚などを使った実験で、あごの骨の細胞から完全な歯を再生することが確認されている(歯胚再生)。上田実らにより名古屋大学付属病院で実際に再生歯科外来が設けられている。埼玉医科大学総合医療センター心臓血管外科が、虚血性心筋症の男性患者の心臓組織に、本人の骨髄細胞を移植する再生医療に成功している。
難しい目の再生
目の角膜を患った患者への治療としてドナーからの提供による角膜移植が行われているが、ドナー提供者が少ないこと、拒絶反応があることなどから、自己細胞を使った再生角膜による治療が試みられている。片目を患っている場合、もう一方の目の角膜の一部を採取して培養し移植する方法や、両目を患っている場合には口腔粘膜(幹細胞が多く含まれている)より採取した細胞を培養して移植する方法など、研究が進められている。
今回の視神経を再生させる仕組みは、幹細胞によるものではなく、遺伝子操作によるもの。視細胞にDock3というタンパク質をつくる遺伝子を組み込むことで、視神経細胞が再生した。視神経細胞の再生は珍しく、いよいよ全身を再生できる可能性が出てきた。将来ヒトは死なない体を手に入れることができるのだろうか?
参考HP Wikipedia「緑内障」・参天製薬「緑内障」・目と健康「緑内障」
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