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人は創造主になれるか?DNA合成、増殖する「人工生命」誕生!

2010年05月21日 | ライフサイエンス
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 人は創造主になれるか?
 人工的に合成した細菌のゲノム(全遺伝情報)を別の細菌の細胞に組み込み、生きた細菌を作ることに成功した。この成果は、米国のクレイグ・ベンター博士が率いる研究チームが2010年5月20日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表。

 すでに人類は、2003年にはウイルスを人工的に作ることに成功。 2008年1月には、細菌のDNAを人工的につくり、細菌に移植することに成功している。この人工DNAの移植も米国のクレイグ・ベンター博士が率いる研究チームが成功している。クレイグ・ベンター博士は、ヒトゲノム解読の先駆者でもある。

 生命をデザインするすばらしい成果である。創造主は遺伝子操作によりあらゆる生命を造ったという説もある。人類はまさに「創造主の領域に近づいた」といえるかもしれない。

 将来はポケモンのような、人工的なペットなどの高等生物の造形も可能になるかもしれない。具体的には、まず、バイオ燃料を製造したり、有害物質を分解したりする有用な微生物作成などに利用したい。

 だが、人工的な生物を環境中で利用した場合、ほかの生物や自然環境にどのような影響を与えるのか未解明な点が多い。生物兵器開発に利用される恐れも指摘され、十分に安全対策を考えていく必要がある。

 遺伝子の化学合成と組み換え
 研究ではまず、牛の感染症を起こす細菌「マイコプラズマ・ミコイデス」のゲノムをコンピューターでデータ化。この情報に基づき、改めて「ミコイデス」のゲノムの断片を化学合成した。この断片を大腸菌と酵母に入れて遺伝子組み換えでつなぎ合わせ、ゲノムをまるごと再現した。

 完成した人工ゲノムを、よく似た細菌に移植したところ、移植された細菌が人工ゲノムの作用で「変身」し、「ミコイデス」のたんぱく質を作るようになった。細胞の「ハードウエア」にあたる細胞質は、移植先の細胞を流用しているが、「ソフトウエア」のゲノムが人工ゲノムに入れ替わったことになる。同研究所は移植を受けた細菌を「合成細胞」と呼んでいる。

 この技術を応用すれば、望みのゲノムを設計して微生物に組み込み、現存しない「新種」を生み出せる可能性がある。石油大手エクソン・モービルはバイオ燃料を大量に生産する藻を作るため、この研究に資金を提供。製薬大手ノバルティスもワクチン開発のスピードアップに利用しようと研究を始めた。(2010年5月21日  読売新聞)

 人工生命とは何か?
 人工生命(Artificial Life)を Alife と呼ぶことがある。手段によってそれぞれ、「ソフトAlife」(コンピュータ上のソフトウェア)、「ハードAlife」(ロボット)、「ウェットAlife」(生化学)と呼ばれる。厳密にはこれらの工作物を生物として認めるかどうかについては生命の定義にも拠り疑問も残るが、生命の様に振舞いをする物をもってこのように定義する。

 主に「生命とは何か」という哲学的な命題に端を発する学術分野で、研究対象は大まかに、コンピュータ上に形成されるソフトウェア、既存の細胞機構に類似した機構を採用したウェットウェア、機械類で形成されたハードウェアの存在様式が想定されている。

 ウェットウェア
 今回、単細胞生物の一つである、人工の細菌を生み出すことに成功した。この細菌は、外部からのエネルギーを得て、自分の構成要素を環境から取り入れ、自己複製的に分裂する。

 すでに、2003年の段階で塩基配列より人工ウイルスを約2週間で合成することには成功している。ただしウイルスは他の生物細胞内に侵入して自身の複製を行わせないと増殖できないため、生命の範疇に含めるかどうかには議論の余地がある。

 これは米代替バイオエネルギー研究所が1200万ドルの予算で2002年から行っている研究の一端で、5386塩基対を持つ物だが、単純な微生物(単体で生存・繁殖する能力を持つ)は100~1000倍の遺伝情報を持つ。

 将来的にはナノマシン技術の一つとして、特定の機能を持たせた人工単細胞生物の医療分野における活躍も期待されているほか、特定の物質を分解ないし無毒化する機能を持つ人工微生物による環境保全や、所定の分子構造を持つ生産物(燃料用アルコールから医薬品まで、様々)をもたらすことも期待できる。

 「ウェットウェア」すでに環境流出?
 ただ、人工ウイルスでも既に問題が指摘されている。韓国より報告のあったブタの遺伝情報のサンプルから、十数年前に開発された人工ウイルスの遺伝情報が検出されたというものだ。

 ウイルスは感染の過程で宿主の遺伝情報に自身の遺伝情報を書きこむため、進化学にもウイルス感染による遺伝子書き換えの影響を指摘するウイルス進化説があり、もし人工ウイルスが環境中に流出した場合、どんな生物に感染しうるのかや、どんな影響があるのかが予測しがたい。

 なおバイオテクノロジー的な技術によって改変された生物(LMO:Living Modified Organism)の漏出に関しては生物の多様性に関する条約に含まれる「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(通称:カルタヘナ議定書)」において監視対象として制限されているが、生命そのものを製作した場合に於いても、同様の監視と漏出防止のための努力が求められよう。

 また人工微生物もナノマシン同様に、グレイ・グーの可能性が指摘できる。特に単なる機械装置とは違って、人工生命が環境中にある素材から自己複製が可能な場合、予め無限増殖を予防する措置も必要と考えられている。(参考:Wikipedia)

 

参考HP Wikipedia「人工生命」 ・アイラブサイエンス「人工生命誕生!細菌ゲノムの完全合成

人工生命―デジタル生物の創造者たち
スティーブン レビー
朝日新聞社

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