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「夜市」  恒川光太郎  角川ホラー文庫

2014-07-18 | 読書


 恒川光太郎の一連の作品を読んで、出発点のこれは読まないといけないと思った。
日本ホラー小説大賞を受賞している。ホラーというジャンルは少し日常から浮いた、不思議な世界が面白い。

 ホラー小説大賞は「パラサイト・イヴ」しか読んでいないと思っていたが、調べてみると「黒い家」「ぼっけえ きょうてえ」を読んでいた。

 この「夜市」は不思議な世界に迷い込む話で、それが作者独特の表現で綴られている。
 先に「秋の牢獄」「草祭」と読んできて、現実から異界に誘われるところがいかにもありそうな、いつかそんな体験をしたような、感じたことがあるような、懐かしい風土的な記述に惹かれる。そういう作風がいい。妖怪変化や異形のもの、見えない世界に生きているべきものが、現実にそういう世界があるかような変に納得する部分がある。


「夜市」
 学校蝙蝠が「夜市」が開かれると言っていた。裕司といずみは公園の奥にある道から不思議な「夜市」に入り込む。
裕司は子どもの頃に来たような記憶がある。「器」を売る店で「野球の器」を買ってヒーローになる。野球がうまくなる才能をかった時、支払いのために弟を売ってしまった。何か売らないと出られない道だった。
現実に帰ると、世界から弟の痕跡は何も残っていなかった。目立つほど野球はうまくなったが、満足できなかった。
 蝙蝠の話を聞いて、どうしても店に行き、弟を買いもどしたいと思った。
お金をためて持って行ったが、弟はすでにいなくなっていた。
死人が往来する道、両脇に並んだものでないものまで売る店、そんな世界で、裕司は弟を探す。
悲しい、妖しい運命の道が広がって、操られていく。


「風の古道」
 これも異界に続く道に迷いこむのだが、その道は現実には見えないが、いわば魑魅魍魎が当たり前に存在して暮らしている。影のようなものもいれば、見える姿で生活している物もいる。
神のようなものもいれば、骨も歩いている。獣の類もいて、そういう世界で生まれると、不思議なことにもなれて、何に比べて不思議なのか、別の世界を知らなければそこで生きていくのは不思議でもなんでもない。

友達と狭い小道からこの異界にある古い道に迷い込んでしまう。土地のあるところには、それが現実には舗装された国道であっても、水の上でも古い道は分かれ細かく分岐しながら続いている。 
外に出るには閉じていない道を探して二人は歩いていく。
知り合った旅人の案内で歩いていたが、途中で友人が撃たれる。生き返らせることができるという寺を探してまた歩き出す。
 これはわずか十日間の出来事だった。幻のような道や世界が有るかのよう思え、今ある世界しか見ることのできないこの世の仕組みが、どこかで異界と交わっているかもしれない、そういったことがあるかもしれないと感じられるようなことを優しい言葉で描き出している。








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