Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(70)

2014-03-18 07:15:05 | コラム
ずごっ「く」→「く」いずしょう(クイズ・ショウ)

震災後を見つめたドキュメンタリー映画に「過剰な演出」があったとされる、『ガレキとラジオ』問題。
いわゆる「佐村河内」問題。
佐村河内ちゃんやiPS細胞「森口さん」と比較すると、メディアのほうも「どう叩いていいのか迷っている」ように見える「STAP細胞」問題。

やらせ、八百長、ドキュメンタリーにおける演出とか、虚偽・・・いろんな表現があるが、簡単にいってしまえば「嘘」。


嘘が発覚したあとの袋叩きを見て気持ちよくなるほど、性格は捻じ曲がってない。
いや捻じ曲がってはいるけれど、ここに反応するような曲がりかたではない、、、と。

どうせ騙されるのであれば。

コーエン兄弟の映画でいう、スマートな嘘であるとか。
たったひとりの証人を抹殺するために、遠回りにもほどがある! とツッコミを入れたくなる伏線を用意した『ユージュアル・サスペクツ』(95)であるとか。
「これは実際に起こった出来事をモチーフにしている」というテロップが、最後の最後に反転する『バタリアン』(85)の演出も巧妙だった。

そう、
騙された! ではなく、そうだったのか!! と、驚きたい。

しかし現実の世界では、壮大な嘘は成立し難くて・・・。


クリント・イーストウッド、現在83歳。
ロバート・レッドフォード、現在77歳。

ともに、ハリウッドで活動をつづける「おじいちゃん」俳優。
それ以外の共通点として、コンスタントに監督作を発表している、、、というのがある。

イーストウッドの監督作は多岐にわたるというか、新作の度に作風がガラリと変わって作家性というものを(批評家が)見出すのは難儀、
ただレッドフォードに関しては、「イーストウッドに比べれば」その作家性は見出し易い。

米国の良識といえばいいのか、良心といってもいいのかもしれない、いや知性か、一貫して米国の文化論「のようなもの」を見つめる。

個人的には地味な『ミラグロ』(88)がベストだが、
もはやクラシックと化した『普通の人々』(80)、ブラッド・ピットが若き日のレッドフォードにも見える『リバー・ランズ・スルー・イット』(92)あたりが人気だ。

そんなレッドフォードが、人気クイズ番組『21』で実際に起こった「やらせ事件」を描いた映画が『クイズ・ショウ』(94)である。

50年代後半―。
高額賞金を獲得出来るクイズ番組『21』は、米国庶民のあいだでは「夢の象徴」とされていた。
連勝をつづける王者ハービー(ジョン・タトゥーロ)はユダヤ人で、はっきりいって華がない。
庶民の人気者のはずだが、実際、視聴率は横ばいだった。
スポンサーの製薬会社ドン(演じるは、わが神スコセッシ!!)はハービーを嫌っていて、プロデューサーに「あいつを降ろせ」と電話を入れる。

そこに現れたのが、容姿も家柄も抜群に優れた大学講師チャールズ(レイフ・ファインズ)だった・・・。


やらせの問題は日本でも「周期的に」起こる―ということもあり、この映画は公開時「そこそこ」話題にはなった。
ただ知性派のレッドフォード演出に物足りなさを覚え、「たいしたことなかった」という感想が聞かれたのも事実。

みんな、スキャンダラスな展開を期待したのだろうね。

でもレッドフォードは、そんなことに関心はなかった。
50年代の空気を描くことと、家柄もいい青年が「まわりの雰囲気に、なんとなく」呑まれていく過程を描きたかったんだよね。


さて。
映画小僧としては、実際のやらせの現場「知っているのに、知らない振りをしなければならなくなった」ハービーに向けられたクイズ問題に興味を持ってほしい。

「55年に米オスカー作品賞に輝いた映画は?」

番組視聴者は、口々に「『マーティ』だ」と答える。

そう、米国庶民なら誰でも答えられる優しい問題だったのだ。

だからこそハービーは、「その問いだけはやめてくれ」と拒否をした。

「ど忘れした」というイイワケだって通用する、、、とは思う。

でも、ね。
映画『マーティ』は、容姿のさえない男の恋愛を描いた、ある意味でハービー自身と重なる「リアル」アメリカン・ドリームの物語。
チャールズは知らなくても、ハービーは知っていなければならない。答えなくちゃならない。

ハービーの哀切が伝わってきて、プロデューサーさんよ残酷過ぎやしねぇかい? と思ったものである。






次回のしりとりは・・・
くいずしょ「う」→「う」ぉーるがい。

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明日のコラムは・・・

『テクニシャンより、技巧派のほうが「ことばとして」格好いい』

コメント (2)
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