「映画のなかの友達」という視点でいくつか挙げてみようと思ったが、笑ってしまうくらいに暗い作品ばかり出てくる。
これもまた、自分の嗜好というわけか。
たとえば『真夜中のカーボーイ』(69…トップ画像)。
主人公のジョーは、スラム街で生ゴミのように生きるラッツォを軽蔑しつつも、なぜか離れられない。
フロリダで過ごすことを夢見たふたりは、しかし・・・という物語。
たとえばダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』(99)。
喰うことに必死過ぎるヒロインは、やっとのことで見つけた友人をも裏切り、職を得ようとする。
たとえば『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)。
暗い物語というわけではないが、最後のデ・ニーロの表情がなんともいえないので。
アル・パチーノは情に厚いキャラクターを多く演じていて、
たとえば『カリートの道』(93)では、悪徳弁護士(ショーン・ペン)との縁を切れないでいる。
彼女に「彼と手を切って」と懇願されても、「恩がある。友達だ」と返す。
たとえば『フェイク』(97)では、よき相棒と思っていたジョニー・デップが潜入捜査官だった衝撃の事実を聞かされる・・・も、「お前だから」と赦してしまう。
グッとくるなぁ!!
一般的には、『スタンド・バイ・ミー』(86)あたりが広く支持を得そう。
たしかによい話だし、憧れる関係性だが、ガキのころにああいう経験の出来るひとは稀であろう。
クラシックファンのひとは、「美しい友情の始まりだな」という名言が登場する『カサブランカ』(42)を挙げるかもしれない。
女子同士の友情物語では、『テルマ&ルイーズ』(91)と『フライド・グリーン・トマト』(91)をすぐに思い浮かべる。
前者は哀しい結末だがそれさえも美しく、後者の関係性は「ひたすら」羨ましい。
さて。
上京して、最初に出来た友達の話。
友達というより、同志といったほうが適切かもしれないが。
名前は河野くん。
同じ日に静岡から上京してきた、新聞奨学生である。
自分はにっかつの映画学校に進学するための、彼はコンピューター系の専門学校に進学するための上京だった。
奨学生には新聞専売所からアパートを無償で提供されるが、最初の数日間は専売所2階の寮で寝泊まりすることになる。
どっちも都会が怖いと思っている、イナカッペである。
すぐに仲良くなり、まだ学校も始まっていないので、暇さえあればどちらかの部屋に行き、田舎のことやこれからのことなどを話し合った。
ホームシック「なりかけ」というのもあったかもしれないが、上京した翌日から始めた配達業務に(とくに河野くんのほうが)参っているところがあり、ひとりになると「帰りたい・・・」と思ってしまう、、、そんなわけで、仕事時と寝るとき以外は一緒に居たかもしれない。
河野くんが落ち込むには理由があった。
彼の配達区域にはマンモス級のマンションがあり、部屋番号がきちんと並んでいなかった。
1号室の隣りが3号室になっていたり、5号室の隣りが10号室になっていたり。
3階建てのマンションくらいであれば、まだ若いのですぐに覚えられたはず。
でも10階建てを超える規模のマンションであったから、「いつになっても覚えられない。だから配達が速くならない。だからだから、遅いというクレームの電話ばかりが入る」と嘆き、「自分は向いていないかもしれない」と落ち込んでしまっていたのだ。
なんでまた、そんな誰にも親切でない構造のマンションが・・・と、河野くんに同情した。
そのころ、新聞奨学生のバイブルになっている映画の存在を知った。
中上健次の小説を映画化した、『十九歳の地図』(79)である。
新聞奨学生をやっている主人公が、自分が負け犬であることを自覚するまでの物語―と書くと、そんなのがバイブル? と思われるかもしれないが、ネガティブなものがひとを落ち込ませるとはかぎらないわけで、自分も河野くんも、えれー勇気づけられたんだよね。
あぁ仲間がここに居るって。
そんな風に励ましあい、互いの学校生活が始まった。
田園地帯に住んでいたという河野くんは、新宿の学校に行くための満員電車も堪えたようで、学校を1年で辞めてしまう。
ここからが面白いのだが、彼は地元に帰らず、そのまま新聞店で専業として働き始めた。
数ヶ月後、別の専売所に異動となった。
1年後―。
朝日系列の合同の新年会で、久し振りに河野くんに会った。
純朴な青年だったはずの河野くんは、コンパニオンの女の子と野球拳をしていた笑
ひとは変われるものだな―彼の成長? を、わがことのように喜んだのであった。
おわり。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『俳優別10傑 海外「な行」篇(1)』
これもまた、自分の嗜好というわけか。
たとえば『真夜中のカーボーイ』(69…トップ画像)。
主人公のジョーは、スラム街で生ゴミのように生きるラッツォを軽蔑しつつも、なぜか離れられない。
フロリダで過ごすことを夢見たふたりは、しかし・・・という物語。
たとえばダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』(99)。
喰うことに必死過ぎるヒロインは、やっとのことで見つけた友人をも裏切り、職を得ようとする。
たとえば『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)。
暗い物語というわけではないが、最後のデ・ニーロの表情がなんともいえないので。
アル・パチーノは情に厚いキャラクターを多く演じていて、
たとえば『カリートの道』(93)では、悪徳弁護士(ショーン・ペン)との縁を切れないでいる。
彼女に「彼と手を切って」と懇願されても、「恩がある。友達だ」と返す。
たとえば『フェイク』(97)では、よき相棒と思っていたジョニー・デップが潜入捜査官だった衝撃の事実を聞かされる・・・も、「お前だから」と赦してしまう。
グッとくるなぁ!!
一般的には、『スタンド・バイ・ミー』(86)あたりが広く支持を得そう。
たしかによい話だし、憧れる関係性だが、ガキのころにああいう経験の出来るひとは稀であろう。
クラシックファンのひとは、「美しい友情の始まりだな」という名言が登場する『カサブランカ』(42)を挙げるかもしれない。
女子同士の友情物語では、『テルマ&ルイーズ』(91)と『フライド・グリーン・トマト』(91)をすぐに思い浮かべる。
前者は哀しい結末だがそれさえも美しく、後者の関係性は「ひたすら」羨ましい。
さて。
上京して、最初に出来た友達の話。
友達というより、同志といったほうが適切かもしれないが。
名前は河野くん。
同じ日に静岡から上京してきた、新聞奨学生である。
自分はにっかつの映画学校に進学するための、彼はコンピューター系の専門学校に進学するための上京だった。
奨学生には新聞専売所からアパートを無償で提供されるが、最初の数日間は専売所2階の寮で寝泊まりすることになる。
どっちも都会が怖いと思っている、イナカッペである。
すぐに仲良くなり、まだ学校も始まっていないので、暇さえあればどちらかの部屋に行き、田舎のことやこれからのことなどを話し合った。
ホームシック「なりかけ」というのもあったかもしれないが、上京した翌日から始めた配達業務に(とくに河野くんのほうが)参っているところがあり、ひとりになると「帰りたい・・・」と思ってしまう、、、そんなわけで、仕事時と寝るとき以外は一緒に居たかもしれない。
河野くんが落ち込むには理由があった。
彼の配達区域にはマンモス級のマンションがあり、部屋番号がきちんと並んでいなかった。
1号室の隣りが3号室になっていたり、5号室の隣りが10号室になっていたり。
3階建てのマンションくらいであれば、まだ若いのですぐに覚えられたはず。
でも10階建てを超える規模のマンションであったから、「いつになっても覚えられない。だから配達が速くならない。だからだから、遅いというクレームの電話ばかりが入る」と嘆き、「自分は向いていないかもしれない」と落ち込んでしまっていたのだ。
なんでまた、そんな誰にも親切でない構造のマンションが・・・と、河野くんに同情した。
そのころ、新聞奨学生のバイブルになっている映画の存在を知った。
中上健次の小説を映画化した、『十九歳の地図』(79)である。
新聞奨学生をやっている主人公が、自分が負け犬であることを自覚するまでの物語―と書くと、そんなのがバイブル? と思われるかもしれないが、ネガティブなものがひとを落ち込ませるとはかぎらないわけで、自分も河野くんも、えれー勇気づけられたんだよね。
あぁ仲間がここに居るって。
そんな風に励ましあい、互いの学校生活が始まった。
田園地帯に住んでいたという河野くんは、新宿の学校に行くための満員電車も堪えたようで、学校を1年で辞めてしまう。
ここからが面白いのだが、彼は地元に帰らず、そのまま新聞店で専業として働き始めた。
数ヶ月後、別の専売所に異動となった。
1年後―。
朝日系列の合同の新年会で、久し振りに河野くんに会った。
純朴な青年だったはずの河野くんは、コンパニオンの女の子と野球拳をしていた笑
ひとは変われるものだな―彼の成長? を、わがことのように喜んだのであった。
おわり。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『俳優別10傑 海外「な行」篇(1)』