Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

初体験 リッジモント・ハイ(255)

2018-02-16 09:00:33 | コラム
地顔がニコニコ(悪くいえば、ヘラヘラ)しているので、接客業に向いている―というのは「よくいわれる」し、そうした自覚もある。

実際に飲食店でアルバイトしたことが何度かあり、自分でいうのもアレだけど、お客さんにたいへん好評? だった。
(だって、お客様ハガキでお褒めのことばをいただいたんだもん! そうなんだもん!!)

ただ、モノカキとしての能力(自分では、そこそこ有していると思っている)がゼロになったとして、次に自分が就くべきは工場系の仕事、とくに食品工場のライン作業だろうな―という自己評価をしている。

まだモノカキとしてぜんぜん喰えなかったころ、高収入だからと深夜帯勤務のアルバイトで稼いだが、この時間帯に稼働している代表格が工場系の仕事だろう。

定位置からほぼ動かず、ちまちました作業を延々と繰り返す・・・たしかに時間の経過はものすっごい遅く感じるが、自分とは相性がよかったようで、一部からは「手が4本あるひと」と評されるほど作業がスピーディで、また正確だった。




10年くらい前になるだろうか、なんとかモノカキだけで喰えるようになり、ダブルワークから卒業した。
業界的に安定した世界ではないが、もし困ったらライン作業があるじゃないか、、、そんな風に思っていた。

その5年後―。
急な出費が重なり、翌週までに数万円を用意しなければならなくなった。

久し振りに求人サイトにアクセス、検索ワードに打ち込んだ文字は「短期、週払い、深夜帯、食品工場」。

土・日・月の短期シフトが決まり、初日の土曜日、ムダに自信満々で某食品工場に向かったのだが―。


たとえば、野菜スティック。



自分はニンジン係になったのだが、ニンジン3本を揃えて容器に投入するだけなのに、ラインのスピードが速過ぎて間に合わない。

あぁキミはこの作業には向いていないようだね、、、と、隣りのラインに移動される。

たとえば、ロールケーキ。



でっかいロールケーキをマシンで切断、それをラインに乗せていくだけなのに、やっぱり間に合わず、工員たちを待たせることに。

あぁキミはここでもダメだね、、、と、さらに隣りのラインに移動。(ひょっとしたら異動、のほうか)


隣り同士のラインなので、自分がなぜ移動(異動)させられてきたかを工員たちは知っている。

白装束にマスク、のスタイルだから表情は分からないが、いやいや目だけで分かります「使えないヤツがやってきた」という感じが。

なかには口の悪いひとも居て、「出来んのかよ、アイツに」なんていうことばも聞こえてきた。


「あれ、おかしいな。得意なはずなのに。なんで出来ないんだろう…」


さらに、「ほら、やっぱり出来ないじゃん。チーフ、アレをべつのラインに回してよ。迷惑だよ」という声も聞こえてくる。


たらい回し状態になってしまった。

たぶん、落ち着いて作業に臨めば出来たはずなんだけれどね。
数年前に手が4本あると評価されたわけなのだから、しかし1発目で失敗し周囲の評価が厳しくなると、途端にこころが折れてしまった。

そういうひとは、どこの現場にも居るはずだが「突き刺さってくるヤジ」も堪えた。
さらにいえば、ムダに自信満々だったのも逆効果だったか。


それにしても・・・
メンタル、弱っ!!


チーフも自分の使いどころに迷い、「牧野さん、ごめん。ちょっと早いけど1回休憩に入ってくれるかな」


久し振りに、みじめな気分になった。

煙草も美味くない、きっと自分の居なくなった現場では「ウチのラインに入れてくれるな」といわれ、チーフが頭を抱えていることだろう。


よし、帰ろう。

事務所に顔を出し、「すいません、早退させていただけますか」


「どうかされましたか」
「気分が悪い、、、と嘘を吐けばいいんでしょうけれど(苦笑)、なんか自分、どこへ行っても使えないみたいで、いま、たらい回し状態でして。自分に向いてないみたいなんです」

現場に電話をする職員。

「なんか、ご自分で向いてないと判断されているみたいですよ。帰しても問題ないですよね」


「それではこちらに、サインしてもらえますか」
「はい、なんかすいません」
「いえいえ、無断で帰っちゃうひとも多いですから」


自転車に乗り、夜空を見上げる。

「あぁ、人生でいちばんみじめなクリスマスかもな…」

そう、クリスマスの夜だった。


この年だけだと思う、チキンもケーキも食べなかったクリスマスは。

以上、「成人以降の初めてのイップス」エピソードでした。


ん?

翌日と、翌々日はどうしたかって?

欠勤の届け出をして、物流倉庫で仕分けのアルバイトをしましたよ。


あぁ記していたら、当時を思い出し哀しくなってきた苦笑


おわり。


トップ画像は、フィンランド産の傑作映画『マッチ工場の少女』(90)。
動画で元気出そう! ということで「まだ始まってもいねぇよ」。



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明日のコラムは・・・

『手でピストル真似て、涙をのむ。』
コメント (3)
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