地顔がニコニコ(悪くいえば、ヘラヘラ)しているので、接客業に向いている―というのは「よくいわれる」し、そうした自覚もある。
実際に飲食店でアルバイトしたことが何度かあり、自分でいうのもアレだけど、お客さんにたいへん好評? だった。
(だって、お客様ハガキでお褒めのことばをいただいたんだもん! そうなんだもん!!)
ただ、モノカキとしての能力(自分では、そこそこ有していると思っている)がゼロになったとして、次に自分が就くべきは工場系の仕事、とくに食品工場のライン作業だろうな―という自己評価をしている。
まだモノカキとしてぜんぜん喰えなかったころ、高収入だからと深夜帯勤務のアルバイトで稼いだが、この時間帯に稼働している代表格が工場系の仕事だろう。
定位置からほぼ動かず、ちまちました作業を延々と繰り返す・・・たしかに時間の経過はものすっごい遅く感じるが、自分とは相性がよかったようで、一部からは「手が4本あるひと」と評されるほど作業がスピーディで、また正確だった。
10年くらい前になるだろうか、なんとかモノカキだけで喰えるようになり、ダブルワークから卒業した。
業界的に安定した世界ではないが、もし困ったらライン作業があるじゃないか、、、そんな風に思っていた。
その5年後―。
急な出費が重なり、翌週までに数万円を用意しなければならなくなった。
久し振りに求人サイトにアクセス、検索ワードに打ち込んだ文字は「短期、週払い、深夜帯、食品工場」。
土・日・月の短期シフトが決まり、初日の土曜日、ムダに自信満々で某食品工場に向かったのだが―。
たとえば、野菜スティック。
自分はニンジン係になったのだが、ニンジン3本を揃えて容器に投入するだけなのに、ラインのスピードが速過ぎて間に合わない。
あぁキミはこの作業には向いていないようだね、、、と、隣りのラインに移動される。
たとえば、ロールケーキ。
でっかいロールケーキをマシンで切断、それをラインに乗せていくだけなのに、やっぱり間に合わず、工員たちを待たせることに。
あぁキミはここでもダメだね、、、と、さらに隣りのラインに移動。(ひょっとしたら異動、のほうか)
隣り同士のラインなので、自分がなぜ移動(異動)させられてきたかを工員たちは知っている。
白装束にマスク、のスタイルだから表情は分からないが、いやいや目だけで分かります「使えないヤツがやってきた」という感じが。
なかには口の悪いひとも居て、「出来んのかよ、アイツに」なんていうことばも聞こえてきた。
「あれ、おかしいな。得意なはずなのに。なんで出来ないんだろう…」
さらに、「ほら、やっぱり出来ないじゃん。チーフ、アレをべつのラインに回してよ。迷惑だよ」という声も聞こえてくる。
たらい回し状態になってしまった。
たぶん、落ち着いて作業に臨めば出来たはずなんだけれどね。
数年前に手が4本あると評価されたわけなのだから、しかし1発目で失敗し周囲の評価が厳しくなると、途端にこころが折れてしまった。
そういうひとは、どこの現場にも居るはずだが「突き刺さってくるヤジ」も堪えた。
さらにいえば、ムダに自信満々だったのも逆効果だったか。
それにしても・・・
メンタル、弱っ!!
チーフも自分の使いどころに迷い、「牧野さん、ごめん。ちょっと早いけど1回休憩に入ってくれるかな」
久し振りに、みじめな気分になった。
煙草も美味くない、きっと自分の居なくなった現場では「ウチのラインに入れてくれるな」といわれ、チーフが頭を抱えていることだろう。
よし、帰ろう。
事務所に顔を出し、「すいません、早退させていただけますか」
「どうかされましたか」
「気分が悪い、、、と嘘を吐けばいいんでしょうけれど(苦笑)、なんか自分、どこへ行っても使えないみたいで、いま、たらい回し状態でして。自分に向いてないみたいなんです」
現場に電話をする職員。
「なんか、ご自分で向いてないと判断されているみたいですよ。帰しても問題ないですよね」
「それではこちらに、サインしてもらえますか」
「はい、なんかすいません」
「いえいえ、無断で帰っちゃうひとも多いですから」
自転車に乗り、夜空を見上げる。
「あぁ、人生でいちばんみじめなクリスマスかもな…」
そう、クリスマスの夜だった。
この年だけだと思う、チキンもケーキも食べなかったクリスマスは。
以上、「成人以降の初めてのイップス」エピソードでした。
ん?
翌日と、翌々日はどうしたかって?
欠勤の届け出をして、物流倉庫で仕分けのアルバイトをしましたよ。
あぁ記していたら、当時を思い出し哀しくなってきた苦笑
おわり。
トップ画像は、フィンランド産の傑作映画『マッチ工場の少女』(90)。
動画で元気出そう! ということで「まだ始まってもいねぇよ」。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『手でピストル真似て、涙をのむ。』
実際に飲食店でアルバイトしたことが何度かあり、自分でいうのもアレだけど、お客さんにたいへん好評? だった。
(だって、お客様ハガキでお褒めのことばをいただいたんだもん! そうなんだもん!!)
ただ、モノカキとしての能力(自分では、そこそこ有していると思っている)がゼロになったとして、次に自分が就くべきは工場系の仕事、とくに食品工場のライン作業だろうな―という自己評価をしている。
まだモノカキとしてぜんぜん喰えなかったころ、高収入だからと深夜帯勤務のアルバイトで稼いだが、この時間帯に稼働している代表格が工場系の仕事だろう。
定位置からほぼ動かず、ちまちました作業を延々と繰り返す・・・たしかに時間の経過はものすっごい遅く感じるが、自分とは相性がよかったようで、一部からは「手が4本あるひと」と評されるほど作業がスピーディで、また正確だった。
10年くらい前になるだろうか、なんとかモノカキだけで喰えるようになり、ダブルワークから卒業した。
業界的に安定した世界ではないが、もし困ったらライン作業があるじゃないか、、、そんな風に思っていた。
その5年後―。
急な出費が重なり、翌週までに数万円を用意しなければならなくなった。
久し振りに求人サイトにアクセス、検索ワードに打ち込んだ文字は「短期、週払い、深夜帯、食品工場」。
土・日・月の短期シフトが決まり、初日の土曜日、ムダに自信満々で某食品工場に向かったのだが―。
たとえば、野菜スティック。
自分はニンジン係になったのだが、ニンジン3本を揃えて容器に投入するだけなのに、ラインのスピードが速過ぎて間に合わない。
あぁキミはこの作業には向いていないようだね、、、と、隣りのラインに移動される。
たとえば、ロールケーキ。
でっかいロールケーキをマシンで切断、それをラインに乗せていくだけなのに、やっぱり間に合わず、工員たちを待たせることに。
あぁキミはここでもダメだね、、、と、さらに隣りのラインに移動。(ひょっとしたら異動、のほうか)
隣り同士のラインなので、自分がなぜ移動(異動)させられてきたかを工員たちは知っている。
白装束にマスク、のスタイルだから表情は分からないが、いやいや目だけで分かります「使えないヤツがやってきた」という感じが。
なかには口の悪いひとも居て、「出来んのかよ、アイツに」なんていうことばも聞こえてきた。
「あれ、おかしいな。得意なはずなのに。なんで出来ないんだろう…」
さらに、「ほら、やっぱり出来ないじゃん。チーフ、アレをべつのラインに回してよ。迷惑だよ」という声も聞こえてくる。
たらい回し状態になってしまった。
たぶん、落ち着いて作業に臨めば出来たはずなんだけれどね。
数年前に手が4本あると評価されたわけなのだから、しかし1発目で失敗し周囲の評価が厳しくなると、途端にこころが折れてしまった。
そういうひとは、どこの現場にも居るはずだが「突き刺さってくるヤジ」も堪えた。
さらにいえば、ムダに自信満々だったのも逆効果だったか。
それにしても・・・
メンタル、弱っ!!
チーフも自分の使いどころに迷い、「牧野さん、ごめん。ちょっと早いけど1回休憩に入ってくれるかな」
久し振りに、みじめな気分になった。
煙草も美味くない、きっと自分の居なくなった現場では「ウチのラインに入れてくれるな」といわれ、チーフが頭を抱えていることだろう。
よし、帰ろう。
事務所に顔を出し、「すいません、早退させていただけますか」
「どうかされましたか」
「気分が悪い、、、と嘘を吐けばいいんでしょうけれど(苦笑)、なんか自分、どこへ行っても使えないみたいで、いま、たらい回し状態でして。自分に向いてないみたいなんです」
現場に電話をする職員。
「なんか、ご自分で向いてないと判断されているみたいですよ。帰しても問題ないですよね」
「それではこちらに、サインしてもらえますか」
「はい、なんかすいません」
「いえいえ、無断で帰っちゃうひとも多いですから」
自転車に乗り、夜空を見上げる。
「あぁ、人生でいちばんみじめなクリスマスかもな…」
そう、クリスマスの夜だった。
この年だけだと思う、チキンもケーキも食べなかったクリスマスは。
以上、「成人以降の初めてのイップス」エピソードでした。
ん?
翌日と、翌々日はどうしたかって?
欠勤の届け出をして、物流倉庫で仕分けのアルバイトをしましたよ。
あぁ記していたら、当時を思い出し哀しくなってきた苦笑
おわり。
トップ画像は、フィンランド産の傑作映画『マッチ工場の少女』(90)。
動画で元気出そう! ということで「まだ始まってもいねぇよ」。
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明日のコラムは・・・
『手でピストル真似て、涙をのむ。』