たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

白毛門沢。想定外のヤブ越えと岩場急斜面の草むしり登りで結構クタクタ。

2016年08月01日 | 谷川岳周辺
◎2016年7月30日(土)─ハイトスさんみー猫さんななころびさん

駐車場(7:26)……ハナゲの滝(8:00)……白毛門沢分岐・東黒沢先様子見(8:25~8:40)……タラタラのセン付近(10:12)……ヤブ漕ぎ終了(11:09)……白毛門ピーク(14:22)……駐車場(17:48)

 ハイトスさんから無性に沢歩きをしたいようなコメントをいただき、白毛門沢をお誘いした。ネット記事では初級だの一級の沢だなどと、やたらとやさしい沢のような扱いだが、「ナメとスラブ」が売りの沢のようで、こちらとしてはこれとて一人での遡行に自信はなくも、近々行ってみたいと思っていた沢で、つい最近、高木に声をかけてもナシのつぶてのままになっている。ハイトスさんのご意向はタイミングが良いというか、自分には渡りに舟といったところで、では、皆さんで行きましょうかということになった。今回はハイトスさん、みー猫さん、ななころびさん4人での白毛門沢歩き。
 4人で歩くのはちょうど一年前の押溜沢以来となるが、その際、ハイトスさんはヒザに打撲を2回ほど受け、以降、ヒザの具合が悪くなったといういわくがある(ご本人談)。まぁ、常念岳日帰りをやられるくらいだから、ほぼ痛みも身体の動きに順応してしまったものと見受けられる。下りがきついようだが、登り時に痛みはないようだし、ゆっくりと下る分には問題もないでしょう。
 そのハイトスさんから、白毛門駐車場7時半集合というお達しがあったが、こちらとしては遅くとも6時半頃から歩きたかっただけに、せめて7時15分集合に繰り上げしていただいたが、その時間とて、遅すぎるという感がある。
 ななころびさんは6時半にはすでに待機していて、その後、自分が6時45分、ハイトスさん7時、続いて時間つぶしで沼田で高速を下りたみー猫さんが到着。駐車場には準備中の方々もいらした。大方は沢歩きのようだ。この時期、風通しの悪い登山道を白毛門に登るには精神力と体力が要る。馬蹄形縦走の方々がどれほどいるかは知らないが、この時間だ。早い方はすでに朝日岳を目の前にしているのではないだろうか。ちなみに、この日、白毛門沢に入渓した方はかなりいたようで、翌日の日曜日の朝の時点でネットレポを3つ(2グループ)ほど見かけた。
 ところで、自分の思惑として、建前上は白毛門沢から白毛門、登山道を下るという本日のコース設定ながらも、東黒沢をそのままウツボギ沢に向かい、ウツボギ沢から白毛門を目指ざし、下りは白毛門沢を使うという手もあるなと考えていたが、白毛門沢下りはとんでもないことであることを後で知り、さらに、この腹案は時間的にも日帰りはとてつもなく不可能なことであった。現場知らずの机上の計画というものはそんなものだろう。

(揃ったところで早速出発)


(先行者は5人ほどか。みー猫さん撮影)


(入渓)


 出発。ななさんとみー猫さんは半袖だ。出がけに悩んで長袖にしたが、半袖が正解だったかも。橋を渡ると、沢(東黒沢)の先に堰堤が2基見えた。入渓はその先だろう。橋を戻って沢沿いの道を進んで、河原歩きの後に入渓。水は期待した程の冷たさはなく、抵抗なく沢に入れる。水量が少ないのかどうかは知らないが、早々から適度に楽しめる。女性交じりのお若い3人組(4人だったかな)を先に見送る。

(いい感じの沢だ)


(気持ちが良い。みー猫さん撮影)


(小滝も適度にある)


(これは目障りだが、この先もこれは避けられない)


 ところどころで滑る。ことに黒光りしている岩は要注意。気にせずに乗るとツルンといく。今日の沢靴、自分はアクア系だが、3人はフェルト。滑るのは自分だけかと思っていたら、皆さん滑っている。結局、微細なところを除けば同じか。ネット情報に、この沢は、前半部がフェルト系、後半部はアクア系の沢靴がよろしいと記しているのを見かけたが、どちらでも滑るところは滑る。ワラジだとどんなものなのだろうか。
 ところどころに流木コーナーがあって、こういうのは美観的にも好ましくないが、これを越える際にはやはり気を遣う。樹が滑るし、細い幹のものは足もかけられない。

(ナメナメといった感じだが、注意しないと滑ってしまう)


(広々とした渓相だ。そういえば魚影は見なかったなぁ)


(癒しの空間といったところか。みー猫さん撮影)


 ゴロゴロ石で歩きづらいところもある沢が、次第に大きな岩のナメになってきた。よくは知らないが、この大きいのがスラブというのだろうか。この岩とてすました顔をしていても、注意して乗らないと滑る。快適さが倍増した。前方を男女の2人連れが歩いているのが見える。大きなナメの岩の上を流れる水流に足を置き、逆らって歩くのは何とも気持ちが良い。先週の小淵沢は楽しめたが、それとはまったく渓相の違うこの白毛門沢もまたいい感じの沢だ。ところどころの小滝でハイトスさん直登いかが? と促すが、まだまだ先もあるからと断わられる。その辺は仁田元沢のビデオ撮りで懲りていらっしゃるようだ。

(先に見えるのがウワサのハナゲの滝ではないのか)


(やはりそうだった)


(縦にして撮ると)


 ところどころの小滝をどうやって越えたかなんてのは、まったく記憶にも残っていないが、これをいくつか繰り返すうちに、ネット記事だけでも鮮明な記憶に残る、幅広で奥行きのある回廊状の滝が出てきた。これがハナゲの滝。まさか「鼻毛」ではないだろうが、そんなイメージを与える「ハナゲ」よりも「花華の滝」とでもすればいいのにはと思うが、それはさておき、なかなかの滝だ。この滝でキャニオニングなる水浴びのツアーをやったりするようで、見ていても、尻で滑ったら気持ちがいいだろうなと納得もする。しかし、帰路に登山道から覗いたこのハナゲの滝、意外に急な滝に見えていた。雨後にさしかかれば、相当な濁流になっているかもしれないが、目の前にあるハナゲの滝は少なくとも早いとこ登ってみたい気持ちにウズウズさせられる。

(下は気持ちよく歩ける)


(ハイトスさんが写メールすると言うので。みー猫さん撮影)


(上の流れはやはり強い)


(見下ろす。微妙に急だ)


(これなら一目瞭然。ななころびさん撮影)


 見上げると、先行の2人連れは女性をロープで結んでいるようだ。こちらはてんでバラバラ歩きだが、水流を行くつもりでいても、やはり滑ったり、水流が強かったりで、どうしても右岸水際を歩き、緩そうなところで真ん中に寄ってみたりするくらいしかできない。やはり、流されてグッショリになるのは避けたい。まだまだ先もある。ここで水遊びをして帰るのも一つの手だろうが。
 ハナゲの滝、上は幅も半分になり、流れが急になっている。右岸側を見ると、ロープの張った巻き道が来ていた。どこから続いていたのか。幸いにも、今日はこれを頼ることはなかった。

(トイ状の流れ)


(楽しみながら)


(白毛門沢分岐に出た)


 ハナゲの滝の余韻を残しながら先に進む。平たい岩盤というか一枚岩の流れ、その間にあるトイ状の流れが続く。まったく飽きない。両岸がやや狭くなったところで二俣になった。右はこれまでの東黒沢の続き。左直進は白毛門沢となる。つまり、白毛門沢は東黒沢の支流ということだろう。さて、ここで、寄り道をしているような時間の余裕があるわけでもないのだが、このままちょっと東黒沢の様子を見に行ってきましょうよと提案。半ば勝手に先に行ってみる。先行の2人連れはこちらに入って行った。自分の頭の中には、場合によっては、そのまま東黒沢遡行の腹案がある。

(では、東黒沢この先の様子見にちょっと行きますかね)


(こちらもなかなか)


(楽しめそうです)


 癒し系の沢が続いていたが、結局は、本当に下見で終わった。戻りの途中、みー猫さんがお助けロープを出したが、ここでは使わなかったようだ。ロープといえば、今日は、だれかがロープを持参したら、自分のロープは持って行かないつもりでいたが、みー猫さんのお助けロープだけだったので、ザックの中に30mロープは入れてあるが、最後まで使うこともなかった。

(白毛門沢に入る。5m滝。左巻き)


(ヘリの流れが結構ある)


 分岐に戻って、白毛門沢に入る。階段状のナメを過ぎると早々に流木コーナーのお出迎え。流木といってもそのメインは枝木なのだが、この現象を何というのか知らないので流木とした。枝の集まりだから、見た目は大きな鳥の巣のようになっている。そして5mほどの直瀑。これは左から高巻くが、本日の最初の巻きでもある。横から見ると、上部は一枚岩のような滝で、これなら登れたかなと思ったが、こういう錯覚は曲者だ。

(ちょっと汚い感じの風景になってしまったが)


(不思議にテカテカの茶系は滑らない)


 比較的におとなしい沢歩きになって、また倒木帯。この辺はまだ楽しんでいて、小滝を含めて無理に巻かずともに沢の中を通しで歩いて行けるが、濡れる度合いが高くなってきた。汗とともに全身がびっしょりになり、ヘルメットの中は洗髪したかのようにぐっしょりで、頭に巻いた手拭いを時々絞るようになった。下半身も腰下まで濡れ、ズボンのポケットに入れたカメラも、防水とはいってもレンズが曇ってくる。

(黒光りは要注意)


 依然として岩の黒光りは滑る。一瞬、無防備に固まってしまうこともある。慌てて動けば落ちてしまう。滑りつつある間に対処の算段を立てられる余裕があるからまだいい。沢幅は次第に狭くなってきた。入渓してまだ1時間半くらいしか経っていない。気温も高くなったためか、随分と長く感じる。標高はまだ900mを越えたばかりで、150mくらいしか登っていない。あと800mもここを登らなきゃならないのかと思うといささかうんざりしてきた。先日の小淵沢は沢区間が3時間弱だった。ちょっと物足りなさを感じたが、自分の沢はやはりせいぜい4時間が限度といったところかと思う。このまま行けば、最低でも5時間はかかるか。果たして山頂まで行き着けるのか不安になってくる。

(ここは滑るのでちょっと厳しかった。ハイトスさん撮影)


(ハイトスさんにバックアップされる)


(自分は写真右を巻いた)


 沢がトイ状になり、その先はすぐにV字になっていた。上に出るには右から小巻きしないといけないが、3人の様子を後ろから眺めていると、先頭のみー猫さんが登り切るのをスタンバイしているななさんがズルズルと後退するのを、後ろのハイトスさんが腰を支えて押し上げていた。そして、みー猫さんのお助けコープで脱出。それを見ていて、どうも自分には相性が悪そうな場所に思えた。反対側の左から高巻いてみた。枝木があって助かったものの、足元不安定で苦戦した。薄い踏み跡はついていた。

(まだまだ楽しめる)


(次第に左右からの圧迫感が出てくるが)


(見どころスポットはまだ続くし)


(ナメも依然として続いている)


(そして、突きあたりが白毛門だと思うが)


 相変わらずのナメが続く。気持ちよく歩けはするが暑い。水をすくって飲んでみたが、温くてシャキっとしない。ようやく谷間の間からピークが見えてきた。ほっとした。目標物の見えない歩きは応える。周囲に高いところは見えないから、あれはきっと白毛門だろう。休む。暑いから頻繁に休憩を入れないと先に進まない。そういえば、いつものふくらはぎの攣り、今日は今のところない。きっと水温のせいだろうな。これから先もあまり力を加えないようにしないと。休んではてんでに菓子パンやらを食べる。

(10m滝。右から行けそうだったが身長が不足していた)


(巻きの途中からタラタラのセン)


 10mだか12m滝が出てくる。ここは右から巻いて行けるらしいが、手がかりになる石は黒光りしている。ちょっと様子見で行ってみたが、途中、ちょっと越えなきゃならない石があって、ハイトスさんのような上背があれば問題なく行けるが、自分は無理といった感じで、あっさりと戻った。これまでのこともあって、皆んな危ういことはやめましょうといった共通認識になっていて、左から踏み跡に沿って巻き、上に出た。
 上に出たはいいが、その先も登れそうにもない大きな滝になっていた。その先がタラタラのセン(15mとか)らしい。自分らにはお呼びではない。見るだけの滝だ。再び、これを巻くべくヤブに入る。

(この辺の巻きはまだ良かったが)


(やがて視界も悪くなって徘徊)


 巻きながら、タラタラのセンをチラ見したまでは良かったが、巻きの踏み跡を追い込んだばかりにヤブ中の迷走になってしまった。灌木の枝と葉が生い茂った過激なヤブだった。踏み跡はすぐに消えた。突破口が見当たらずのままにやがて沢音も消えてしまった。自分とななさん、みー猫さんとハイトスさんの2手に分かれていたが、姿は見えない。みー猫さんグループは左上を歩いているらしいという気配だけは感じる。
 どんどん沢から離れているような気がする。気になってGPSを取り出すと、やはり沢から50m以上西に離れたヤブの中を徘徊している。ここで軌道修正するしかなく、沢方向に戻るべくまたヤブをかき分ける。しかし、さっぱり進まない。

(ようやく沢に戻ったが)


(まだヤブに逃げる)


 ななさんが尻餅をついた。これではしかたもなく笑えもしない。枝がしなって先の足元がはっきりしないのだ。小沢を2つばかり越えると、ようやく本流の沢音らしきものが間近に聞こえてきた。そして、沢を遡行する人の声。あっちだこっちだと言い合っている。最後は尻セードの状態で沢に降り立った。
 目の前に丸っぽい大岩があった。今、その下にいる。大岩を回り込んでみると、大きなナメ滝になっていた。これはどうも行けそうもないと、またヤブに戻る。今度はある程度しっかりした踏み跡があった。

(ようやく脱出。この先で大休止)


 ヤブから抜け出してほっとする。ここで大休止。10m滝の下から始まったヤブ越えは一時間余りにも及び、体力もかなりすり減らした。ところで、この白毛門沢を登るに際し、ネット記事に、笑ったパイナップルのような大岩の写真がよく出ていて、これは見なきゃなと思っていたのだが、この先にそういうパイナップル岩はなく、帰宅してから記事を読み返すと、沢に降り立った際に出会った丸い大岩がそれであり、そこには20m程の大ナメ滝が流れていたことを知る。まったく残念だ。余談だが、このパイナップル岩を林家三平(もちろん初代)に例える向きがあるが、自分はあの方の落語がどうも嫌いで、落語ではなく漫談だと思っていた。それゆえ、林家三平に例える気になれないのである。
 ヤレヤレ状態でハイトスさんとタバコを吹かす。みー猫さんからキャンディをいただく。沢水を飲むとやはり飲んだ気がしない。冷たかったらガブ飲みしたろう。途中、コンビニで買ってきた羊羹を食べる。白毛門はまだ遠いが、山頂付近はうっすらとガスを帯びてきている。どうせ天気は期待できないし、もしかするといずれ雨になるかもとみー猫さん。

(流れは緩くなったが)


(まだ楽しめる)


(ようやくジジ岩、ババ岩が見えてくる)


(見ようによってはいやらしくもか。ななころびさん撮影)


 改めて行動開始。沢がさらに狭まってくる。倒木も太いのが目立つ。そろそろ沢も終わりに近づきつつあるようだ。
 惰性とはいえ、まだまだ楽しめる。右から沢が流れ込み、段差のある階段状の滝で水しぶきを浴びる。また濡れた。黒ずんだゴツゴツした岩、これを何と称するのか知らないが、これは引っかかりもあって安心して登れる。何とも、初級だか一級なりのお粗末な沢ではなく、結構楽しめるじゃないか。ジジ岩、ババ岩らしき巨岩が見えてくる。バックはガスで、山頂は隠れた。上に行くに連れて名前の知らない花がいくつか出てきて、どうでもいいような花まで撮るようになった。みー猫さんがななさんに花の名前を教えていたが、脇で聞いていた自分は、その名も即忘れ、数分後の頭の中では別の花の名前になっていた。

(そろそろ終わりだろう)


(振り返って来し方を見る)


 水流が細くなってきた。同時に、岩場の急斜面になった。先行の4人ほどのグループが上で休憩をとっている。追い越すのは本意ではなく、ここでまた休憩。休みの繰り返しをしているうちに天気がまずい方向に向かわねばいいが。ここまで来たら、雨が降っても登るしかない。

(ミゾ歩きに転じた。雨後は滝だろうが)


(稜線が見えているのかと思うが)


(かなりの急斜面になっている)


 とんでもない急斜面だった。いずれ終わるだろうと思ったが、これは最後の山頂まで続いた。少し休めそうな狭い空間に出ては一息つく。下から2人連れが上がって来て、下を歩いていたハイトスさんとみー猫さんをあっという間に追い越した。その際、何やらやり取りをしているのが見えた。みー猫さんかハイトスさんのファンかなと思ったが、後で聞くと、みー猫さんがカメラを拾得していて、その持ち主の方だった。どうも、我々が巻きの途中で聞いたあっちだこっちだの声の方々で、ヤブから抜け出したあたりで落としたのだろうか。その間に、下って探し回っていたのだろう。それにしても速い方々で、お一人は女性なのだが、我々もあっさりと追い抜かれてしまった。

(この時点ではあの奇岩がパイナップル岩かと思っていた)


 右手に頭に樹を生やした奇岩が見えた。その時、あれがパイナップル岩かと思ったが、向かう方向は左手。奇岩からは離れて行く。しかし、こちら側に踏み跡が続いているのではしょうがない。あちらを大回りすれば、ほどほどの越えやすい岩場が続いていて楽そうではあるが、これは錯覚で、どこを歩いてもきっと同じだろう。

(ハイトスさんの撮影ではおだやか斜面)


(近づく)


(あんなところで水汲みをしている)


(間もなく。ななころびさん撮影)


 やがて草付きになった。とはいっても、ベースは岩場(これをスラブと記している記事もあった)だ。手がかりは草むしりになってしまった。束でつかまえては乗り越える。根こそぎで抜けたら、かなり下まで落下する。それでも、みー猫さんとななさんはスタコラと先に行く。ハイトスさんのことが気になった。足尾のカラ沢右岸の草むしり斜面登りを思い出したからである。あの時もフェルト沢靴での登りであったし、沢はもうお終いと、早々にヘルメットを外してもいた。姿を探すと、左下で急斜面にへばりついているようだが、どうもそうではなく、沢の最後の一滴を汲んでいらっしゃる様子。後で聞いたが、藻が入り込んで、きれいな水がなかなかペットボトルに入らなかったようだ。ハイトスさんのことはともかく、自分の目先のことが気になっている。

(山頂真下)


(一服して山頂側を眺める。やはり夏の山といった雰囲気)


 正面に稜線が見えてきた。見上げる分にはよいが、見下ろすのはちょっとためらう。転ぶ方向を間違えたら、また沢にまで転がってしまう。ここは用心しないと。ハイトスさんも立ち上がって続行。みー猫さん、ななさんが姿を隠してしばらく経ってから、山頂に到着。ドンピシャの位置だった。思わずお二人と握手。久しぶりの険しい山行だった。巻きと最後の壁でかなりの神経と体力を費やしてしまった。ここを下るなんてとんでもない話だ。以降、これは考えないようにしよう。
 山頂には他に6~7人ほどいらした。単独遡行の方もいた。まずは一服したかったので、早々に離れたところに行って一服。ついでに地下足袋に履き替える。ヘルメットを脱いだ頭にポツリと雨が落ちてきた。そして、遠雷も聞こえている。こちらに来なけりゃいいがと願うしかない。合羽は持ってきていなかったので、念のため、フード付きのヤッケを着る。

(笠が岳と朝日岳)


 ようやくハイトスさんが上がって来た。周囲も我々だけになってしまった。みー猫さんから冷たいノンアルを振る舞われる。冷たくておいしい。これが生ビールだったらさぞおいしかったろう。大ジョッキのかけつけ2杯は欲しい。

(下る)


 ハイトスさんの靴の履き替え、ヒザへのサポーター巻き、ストック出しを待って、4人での記念撮影をしてそそくさと下山にかかる。ハイトスさんはお気の毒にタバコを吸う時間はなかった。雷はまだ鳴っていて、朝日岳の上はガスがかかっている。
 ストックといえば、今回はストックを持参しなかったので手ぶらでの下山だが、3人ともにシングルながらもストックを持っていて、自分はあまり慣れないから仕方もないが、ななさんを見ていると、沢の登りでもストックを危なげなく操り、さらに、皆さん、下りの岩場でも器用に使って、なかなか自分にはできない芸当だなと思った。自分なら、頻繁に出したり畳んだりを繰り返すであろう。

(白毛門を振り返る)


(改めてジジ、ババ岩)


 別にハイトスさんに気を遣ったわけではないが、往路と同様にえらく長い下りであった。この暑い盛りに、下りでこうなら、馬蹄形縦走の方は、初っ端でまいってしまっても仕方があるまい。とにかく風がない。雷の音はさらに遠くに去り、今はくすぶり音になっている。さらにポツリも上がり、とにかく湿度が高くなっている。直下の岩場下りでもそうだったが、心地よい風はない。みー猫さんが上を脱いだのに合わせ、自分もとうとうヤッケを脱いだ。

(松ノ木沢の頭)


(武能岳)


 地下足袋のスパイクがひっかかって歩きづらかった岩場から抜け出して松ノ木沢の頭の山頂寄り小ピークに着いたが、その間の眺めは感慨のあるもので、これまで気にも留めることのなく歩いていた沢伝いコースの様子が見え、さすがに上部は急な斜面に見えている。
 松ノ木沢の頭を過ぎて少しは歩きやすくもなったが、依然として急坂の下りだ。開けたところに出ても風はほとんど感じない。すでにかなりの汗だくになっている。ところで、後で「松ノ木沢」とはどこの沢なのか気になって調べると、南西に落ちる沢のようだ。あまり面白味のない沢なのか、ネットで検索してみたが、沢遡行の記録は見あたらなかった。

(タラタラのセンかと。紅葉の頃はきれいだろうな)


(こんなところの通過には神経を使う)


(ハナゲの滝。みー猫さん撮影)


 再び左手下の白毛門沢側を気にしながら下った。まずはタラタラのセンが見えた。あるいはその下の10m滝か。いずれにしても随分と急な滝だが、右岸の一時間巻きコースもまた急峻ではないか。つい内心の笑いもまた出てくる。
 なおも下る。ようやく、土合山の家らしき建物が見えてきたあたりで左手を見ると、今度はハナゲの滝が見えた。あそこも案外急だったんだなとこの時知るが、見る角度、高度というのもあるのだろう。

(ようやく着いた)


 次第に飽きてきたが、あと標高100mはある。大分久しく我慢しながらの下りになっている。周囲は次第に薄暗くなってきた。そして、ようやく登山口。「朝日岳 白毛門」の標識があった。山頂からここまでの標識は「松ノ木沢の頭」のみ。他に赤テープを数本見かけただけだった。しかし長い下りだった。ハイトスさんも途中でヒザ痛に遭ったようだが、何はともあれ無事に到着。

(橋を渡って)


(お疲れ…)


(さまでした。この先の隅にテントが数張りあった)


 河原で顔を洗う、傍らでファミリーがテントを張って食事の準備中か。ななさんがパパにつかまって、いろいろと聞かれていた。あれでは顔も洗えなかったのではないか。さて、風呂でも入って帰りましょうかという話が出たが、こちらはもう疲れていてどうでもよく、流れ解散ということになってしまったが、一人ならわざわざ風呂に寄っていかなくともと、川で濡らした手拭いで全身を拭いて、着替えをしたら、それだけでもすっきりした。
 この中で一番近いのは高速利用1時間半の自分だが、遠いのはななさんで一般道で2時間半。ハイトスさんに、眠くなったら、コンビニの駐車場に入って5分でも10分でも寝るようにと釘を刺されていた。
 本日の歩きは10時間20分。同コースを歩いた普通の記録よりもかなり遅い歩きだ。寄り道もしたし、予想外の大回りの巻きもしてしまった。かかった時間はどうでもいいが、雨にあたることもなく、結構、楽しい沢歩きを久しぶりに楽しんだ。それだけで十分だろう。
 帰ってから風呂に入ったら、身体のあちこちが青アザ、黒アザになっていた。さらに、指の爪が2か所剥けていた。

※今回はご三方の撮られた写真も勝手に使わせていただいております。

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18 コメント

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久しぶりの激戦でした (ななころび)
2016-08-01 23:33:05
こんにちは。記事を読んでいて、当日のいろいろな事が思い出されて、何だか感激しました(笑)。
私の撮った?ジジ、ババ岩の画像、光量不足ですが案外いいですね。ハイトスさんに私がバックアップされる画像は、実物とおり縦向きの方が、迫力でそうです。
当日の登りは、山歩きの面白さ凝縮って感じで、皆さんに感謝です。
私はヤブの巻き中シリセード、うつ伏せで何度も滑りました。私もアザ、傷何箇所かできてます。
あの大滝を巻く前半のみー猫さんとのヤブ歩き、後半のたそがれさんとの密ヤブ間の強行突破は、忘れられない思い出になりそうです。
私は山頂までで力と気力を使い尽くして、下山路がやたら長く感じました。
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Unknown (でん)
2016-08-02 00:36:08
沢水は冷たくなかったようですが、画像を見ると冷たくて涼しそうです。
何度も歩いた白毛門の登山道から見た白毛門沢はこんな感じになっていたのですね。
パイナップル岩と言われているのは、岩の上に植物があるやつですか?
見ようによってはジジ岩、ババ岩もそんなふうに見えますよ。
松ノ木沢は、たぶんたそがれさんが言っているので間違いないと思います。
土合橋から湯檜曽川右岸の林道をしばらく行くと広場になっているところがあり
その対岸が松ノ木沢だった記憶があります。
ひとつ奥の沢は、ゼニイレ沢だったかな?
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白毛門沢 (ハイトス)
2016-08-02 00:37:33
こんばんは。
早速のアップ、楽しませてもらいました。
まだ体がギシギシ言ってます。
思っていた以上に皆さんの足を引っ張ってしまいました。
下りは膝の具合で想定内だったのですが、上りで何度も息が上がってしまって待たせてばかりで申し訳なかったです。
それにしても今回は沢登り半分、岩登り半分といったところでしょうか。
スラブに入ったところでタビに履き替えようかと思いましたが結局面倒になってそのままフェルトで行ってしまいました。
ところで白毛門沢は頂上まで詰めるとなると入門用ではなく初級の沢ですね。
ついに初級の沢に手を出してしまいましたね。
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Unknown (瀑泉)
2016-08-02 00:49:59
久々にTファミリーの皆様で,何処にいかれたのかなぁ~と思ったら,白毛門沢でしたか。
ハナゲの滝にしても,タラタラのセンにしても,やはり良い滝ですネ。
上越の沢は豪雪に磨かれたスラブだから,沢屋でなくても憧れるんですが,流石にレベルが高くてネェ・・・
まぁ,それでも,唯一,此処だけは,行けるかなぁ~とは思ってますが,いまだに足を運べずですヨ。
ところで,ハナゲの滝のハナゲは,「鼻毛」だと思ってましたが,違うのかな。まぁ,一部,キャニオリングをやっている処のHPで,鼻毛とありますが。
それと,ハイトスさんも,白毛門の激坂を下れるようでは,本格的に回復ですかネ。
う~ん,上越は行きたいけど,流石に遠いなぁ~・・・ななさんは一般道で2時間半でも,自分は高速で2時間半だから。。。
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白毛門沢 (みー猫)
2016-08-02 05:52:01
おはようございます。
今回は涼しい沢登りを・・・と思いながら、バラエティに富んだ歩きになり、楽しませていただきました。いつものように、たそがれさんの記事で、すべてを表現していただいたので自分はアップはゆっくり、文面は参照、または引用しちゃいたい・・・(笑)・・最後の登りは、久々に早く終わらせたく感じましたです。前回の八海山が楽に感じました。みなさん、お疲れさまでした~♪
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ななころびさん (たそがれオヤジ)
2016-08-02 12:29:25
ななころびさん、こんにちは。先日はお疲れさまでした。
久しぶりに四人ともにぐったりといった感じでしたが、家路への帰りの気分は心地よいものでしたよ。充実といいますかね。
今回は、皆さんから寄せられた写真をすべてコピーしてみましたが、きれいな写真ばかりで、よほど、自分のは使わない方がいいのではと思ったほどでした。
バックアップ写真の縦横はちょっと悩みましたが、ななころびさんがそうおっしゃるならと、縦に直しました。確かに少しは迫力が出たようですね。確か、ななさんのバックアップはもう一度あったような気がするのですが。
ななさんもアザですか。こちら、まだ消えていませんよ。別に痛みはないのですがね。こういうのも久しぶりです。何でもありといった山行だったわけですよね。
どうでもいいことですけど、この時期の密ヤブはしんどいものですね。身体もベトベトしていますしね。涼しい時なら少しは違っていたのでしょうけどね。

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でんさん (たそがれオヤジ)
2016-08-02 12:30:03
でんさん、こんにちは。
沢の水は期待した程の冷たさはありませんでした。自分としては、この時期ですし、ひんやりした水に足を入れたかったのですが、温めではちょっと残念なところもありますが、冷たきゃ冷たいで、足も早々に攣ってしまうし、むしろ温いあたりでちょうどいいのかもしれません。
途中で巻いたタラタラのセンという滝は、白毛門沢の大滝とも呼ばれているようで、登山道を歩く方にも目に触れ、よく写真にもアップで出ていますが、やはり紅葉をバックにした写真は素晴らしいですね。
パイナップル岩。ジジ、ババ岩はベッタリした安いカツラをかぶった感じで、てっぺんが草状になっていますが、パイナップルの方は木なのですよ。生い茂るというほどのものでもないのですが。大きさはジジ、ババよりも二周りほど小さいようです。何せ、見そこなっているので、それ以上は表現できませんわ。沢の周辺で小ぶりの岩をいくつか見かけましたが。
ゼニレイ沢を調べました。大がかりなスラブの沢のようですね。傾斜もすごいらしく、こちらは今後共に縁はありませんわ。松ノ木沢がしょぼい沢なら、紅葉の時期にでも歩く価値はあるかなと思ったりして。何せ、この白毛門沢がこの界隈の限度かなと思っていますから。
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ハイトスさん (たそがれオヤジ)
2016-08-02 12:30:37
ハイトスさん、こんにちは。先日はお疲れさまでした。
身体がまだギシギシですか。確か、夜中にトイレに起きるとかおっしゃっていましたが、そろそろ注意しませんとね。何とか症候群でしたっけ。
ところで、今回の歩き、ハイトスさんの想定がいかがなものだったかは知りませんが、少なくとも私にはまったくの障害(?笑)になるものではありませんでしたよ。気になったのは、山頂直下の水汲みだけで、なかなか山頂にお顔を出さないので心配にはなりましたが、その時だけです。実は、内心、ハイトスさんがそのままズルズルだったら、下に救助に行かなきゃならないだろうけど、それは勘弁願いたいものだなと思ったりしていました。
下りでも、結構、皆さん疲れていましたし、ハイトスさんに合わせたといった感覚はありませんわ。
タビとは、ハイトスさん、地下タビもご用意されていたのですか。しかし、あの斜面で履き替えは至難の技でしょう。狭い空間で無理な姿勢で履き替えしたら、足は攣るし、ヒザにも負担でしょう。
ハイトスさんの入門、初級の感覚が今一つわかりかねますが、仁田元沢から中倉尾根までは初級とすれば、今回の沢詰め、私には危険度が加わって三級レベルになるのですがね。
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瀑泉さん (たそがれオヤジ)
2016-08-02 12:31:16
瀑泉さん、こんにちは。
瀑泉さんを前にこんなことを申すのもおこがましいのですが、尾瀬あたりの沢と違って、白毛門沢あたりになると、沢の景観がまったく違うものですね。白毛門沢にしてもとにかく規模が大きいということでしょうか。瀑泉さんが行きたいけど遠いとおっしゃるお気持ち、よ~くわかりますよ。
ただ、自分には、技量的には、他にせいぜい東黒沢を先に行ってみる程度のことしかできないような気がいたします。今回も同行の仲間がいたからこそ遡行できたという面もありますね。
スラブの地形は豪雪だからこそですか。なるほど、ただの大きな平たい岩というわけでもないのですね。そう考えるとおもしろいものです。
ハナゲの滝はやはり鼻毛ですかね。あの滝にはちょっと気の毒なような気もいたします。ただ、白毛門の「毛」からすると、「ゲ」は少なくとも「毛」でしょうね。赤城山下の鼻毛石とも関係はないようだし。
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みー猫さん (たそがれオヤジ)
2016-08-02 12:31:48
みー猫さん、こんにちは。先日はお疲れさまでした。
私のお粗末な記事で茶を濁すというお考えはあまりよろしくないのではと思いますよ。みー猫さんレポのファンもいらっしゃることだし。
まして、実際のリーダー格は経験豊富なみー猫さんだし、我々はその他大勢、お囃子といった存在でしたしね。
しかし、今回は何でもありといったバラエティ豊かな山行でしたねぇ。沢にヤブは付きものですが、一時間ものオリジナル版ヤブコースというのもねぇ。さらに岩有り、草むしり有りでしたし。これに雷雨が加わっていたら最悪だったわけですが。
最初のうちはハイトスさんの病状を気にかけたりしておりましたが、中盤以降は頭からすっ飛んでもいましたよ。ハイトスさんもあそこまで回復されて良かったです。もう、ハイトスさんの膝痛も、山歩きには影響なしと解釈してよろしいのではないですか。
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