僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

星見ちゃんの家…①

2006年10月05日 | SF小説ハートマン
「それのことだよ。」
おじさんは2杯目のコーヒーにミルクを入れながらアルバムを示した。

お父さんの方をチラッと見ると、後ろ向きでパソコンを操作している。
「ネットで地震のこと調べてみるよ。何だかすごいらしから。」

「お父さんなら大丈夫だよ。宇宙君のことはみんな知っているから。」
「知ってるって、えっ僕のことって。これのことですか?」
僕はおじさんに手首を見せた。おじさんはにっこり笑って大きくうなずいた。

「これ、ハートマンの…」
「そうだよ。バイオリストコンピュータだね。」
「それじゃぁトントのことも?」
「そうだ、みんな知ってる。そのことで宇宙君に教えておきたいことがある。」
「星見ちゃんも知ってるの?」
「いいや、星見はまだ知らない。でもいずれ知ることになるだろうとは思うよ。」

僕はまず驚いた。それからトントのことを思い出して涙がにじんできた。

「死んじゃったんです、トント。」
「知ってる。だから今日宇宙君を呼んだんだ。」
「・・・・・」
「悲しいことだったけど、トントの役割は終わったんだ。トントは本当に良くやった。宇宙君ももちろんよく頑張った。誰にも言わずに一人でやり遂げたんだ。これはうそじゃない。おじさんも、それから宇宙君のお父さんも、もっと他の人も、宇宙君がまだ知らない沢山の人が宇宙君を見守っていたんだ。これからもそうだ。トントがいなくなっても宇宙君は一人じゃない。それを今日伝えたかった。ちょっとこっちに来てごらん。」

おじさんはアルバムを持ってソファーに僕を誘った。   つづく
コメント (21)
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