僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」 窓際のビオラ

2009年04月14日 | ケータイ小説「パトスと…」
水をやったついでにしおれた花をいくつかつまむ。
咲き終わった花は種を作るのにエネルギーを使うので株が弱るのだ。

子育てが終わった母親が急に老け込むのと似ていると先輩が言っていたが、辰雄は1歳半の子どもを抱いた先輩の奥さんを思い浮かべ、人間はその時が一番輝くのだろうと感じた。

その奥さんのことは先輩が結婚する前から知っていた。結婚直後のはつらつとした美しさよりも今のしっとりした落ち着きが好きだった。
これが色気と呼ぶものなのかも知れないと勝手に分析してみたりもしていた。


窓際の明るい場所に置いてあるビオラは空気の動かないビルの中にあっても勢いを保って健気に咲き続け、可憐な色気を振りまいている。

7階の窓から見下ろすと都会の風景が箱庭の玩具のように見える。
交差点で車が止まると溜まっていた人達が一斉に動き出す。やがて信号が点滅を始め人が動きを止めるとバイクを先頭に車達が競争のように走り出す。

ついさっきはその中に自分がいて、こうして誰かに見られていたのかも知れない。

そう思った時、信号待ちをしている人間達の中にその人を見た。









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