まいぱん日記

身近なあれこれ、植物のことなど

犬のうた(エセーニン)

2018年12月02日 | ロシア

 

  犬のうた  エセーニン作

黄ばんだむしろの下の

赤錆びた穀物小舎で 朝早く

牝犬が七匹の仔を生んだ

にんじん色の仔犬七匹。

 

夕闇が降りても 母親はまだ

なめずりまわし 毛並みをそろえてやっていた。

あったかい葉は犬のおなかの下で

雪が溶けちっちゃい流れになっていた。

 

夕闇ふかく めんどりたちが

とまり木にじっと並んだとき

ご主人がしかめつらで出て来て

七匹を一匹のこらず袋にしまいこんだ。

 

母犬は ご主人に おいすがり

雪だまりとみれば駆け込んでいた。

さて そのとき ながくながくふるえたのは

まだ凍てついていなかった水の鏡だけ。

 

辛うじて足をはこぶ帰りみち

脇ばらの汗をなめる身には

わが家にかかる月も

わが子の一匹かと見えた。

 

ぐんじょうの中空を 音高く

歯をむいて牝犬が仰ぐ。

と かぼそい月はするするっと辷り

野末の丘にかくれてしまった。

 

ひとさまがなぐさみに投げつける石、

そのおめぐみに 音もなく

雪中へ転げ込む犬の 二つ目は

黄金の星 星……(1915)

     『エセーニン詩集』内村剛介訳 (彌生書房 昭和43)

 

エセーニンの詩はすでにUPしたことがあります。https://blog.goo.ne.jp/maipan/e/da9fc4b45d7dcd2469d6e356701b9c48

これを書いたのはまだまだ若かったエセーニンです。

だれの関心もひかない哀れな母犬を詩によむことは当時としては意外で、新鮮だったのではないでしょうか。

 画像は、ありょははさんがロシアで先生について習って作られた塗りの箱です。

この箱を見るといつもエセーニンの「犬のうた」が思い浮かびます。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 犬をよんだ詩(ツルゲーネフ) | トップ | 紅葉の荻窪 太田黒公園へ »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
犬の詩 (こまこ)
2018-12-02 19:53:45
エセーニンも犬の詩を書いていたんですね。内村剛介さん、懐かしいお名前ですね。この母犬の悲しみ、伝わります。最後で作者は救いを書いているんですね。気高くも神々しい言葉で。
返信する
新鮮でしたね (まいぱんまま)
2018-12-03 09:53:29
内村剛介さんは戦後10年余を経て文壇に現れて、ばっさばっさと切ったり、推薦して後押ししたり、勢いのある方でしたね。『さらば、モスクワ愚連隊』関連で声をかけられたんでしたか?
エセーニンの日本への紹介も内村さんですね。勢いがありすぎて、誤訳っていうか、意味のとりちがいも多い(笑)
返信する
はじまりは (こまこ)
2018-12-05 10:05:59
はじまりは1974年ころのソルジェニーツィンの話からのようですが、その後も何回か。担当は私ではなく、もうひとりの人でした。その後の回には聞いていました。そうですか、詩を訳した人なんですね。
返信する
詩の訳はこれだけ (まいぱんまま)
2018-12-06 00:58:44
ソルジェニーツィンですか。1974年は国外追放された時です。あれは大変な事件でした。
『さらば、モスクワ愚連隊』はもう少しあとでした。
ソルジェニーツィンも内村さんも90歳近くまで生きられて、亡くなりましたね。
返信する

コメントを投稿

ロシア」カテゴリの最新記事