新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

敬意低減の法則

2016-06-20 07:41:45 | コラム
丁寧すぎて滑稽な敬語:

昨19日の産経の「日曜に書く」のコラムに論説委員・山上直子氏が”「お訴え」はいらない?”と題して載せていた敬語の批判を興味深く読んだ。この「お訴え」は選挙運動が始まると「かようなわけで、有権者の皆様に、お訴えさせていただきたいのであります」のように連呼されると不快指数が上がってしまうのだと山上氏は言うのだ。私もこの「~させていただきます」には違和感があるし、余り好ましくない表現であると書いた事もあったし、記憶が正しければ「頂門の一針」の主宰者・渡部亮次郎氏も「イヤな物言いである」と指摘された。

山上氏は東京外国語大学名誉教授で言語学者の井上史雄さんの意見を引用して「私も気になっていましたが、〈お~させていただきます〉という言い方は増えています。今後もっと増えると思います」と指摘している。更に続けて”確かに、テレビでも日常でも「ご提案させていただきます」「お送りさせていただきます」などと枚挙に暇がなく、オフィスでは定着した気がする。一方で多用されると丁寧すぎて滑稽だ。たとえば、「体験談をお尋ねさせていただきたいと思い、お宅にお伺いさせていただいたところ、たいへんご親切にご対応いただき・・・」といった具合。慇懃無礼とさえ感じるが、どうだろう。”と言っている。同感だ。

続けて”井上さんによれば、普及の背景には「敬意低減の法則」があるそうだ。つまり、敬意の程度、言葉の丁寧さというのは、使われているうちにその度合いが下がって、しだいにさほど丁寧に聞こえなくなってくる。典型的な例が「貴様」で、かつては目上に使う言葉だったが、対等になり、現在では相手をののしる言葉に変化した。「させていただく」は授受表現で、元は江戸時代以降に発達した「~てもらう」だ。ところが「~してもらいます」では物足りなくなり、より丁寧な、美化語的な用法として「~ていただく」が登場した。しかも、東京の話し言葉として急速に広がったが、方言分布を見ると近畿出自の言葉らしい”とある。

引用はこのくらいにして、私はこの「~させていただく」を苦々しい思いで聞いていたし、自分では使わないように努めてきた。だが、持論である「耳から入る言葉の影響の恐ろしさ」で時々自分自身がそう言ってしまってゾッとしていたものだった。そういう思いがある時に、この山上氏のコラムに接して快哉を叫びたい思いなのである。このような過剰というか丁寧すぎる敬語には他に「お会いする」がある。いや「お会いさせていただく」もある。

この言葉については既に国文学者KS氏の意見を聞いておかしいと確認したし、Atokではそう入力すると「お目にかかる」への変更を提案されると書いてきた。KS氏は「お会いする」では自分に敬語の「お」を使うのはおかしいと指摘されていた。何れにせよ、こういう過剰な敬語はテレビの登場するタレントやら等の連中が使うことで普及し、知性と教養が不足しがちな国会議員なども使うので、今日此処まで普及したと思っている。また、私は学校教育における「国語」の教え方にも疑問を感じている。何としても「要改善」ではないのかと「ご提案させていただきたいのだ。


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