新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

3月13日 その2 日本とアメリカでは文化違うのだ

2025-03-13 13:43:05 | コラム
「値上げ」とはnegotiateするものだとは知らなかった:

導入部:
これから縷々申し上げることが「トランプ大統領の25%のtariffの賦課を、何故回避できなかったのか」の私流の説明になるので、先ずご一読願いたいのである。簡単に言えば「ここにも異文化が存在していた」ということ。

我が社だけではなく、日本市場に進出したアメリカの製造業界の会社が驚いたのが、この異文化だったのだ。アメリカの市場ではメーカーは何らかの事情で生産や管理費等のコストが上昇すれば、即刻躊躇うことなく販売価格に転嫁するのだった。その際の慣行は「この度当社のこの製品はX%を何月何日から値上げすると発表、乃至は公示/告示かメデイアに掲示する(post)だけの作業」なのである。

こういう商習慣が通用していた国から日本市場に進出して、自国の習慣の通りにprice increaseをpost、即ち四方八方に向けてアナウンスすれば事が終わるのだと思っていた例が多かった。ところが、日本市場では「一方的な通告で済まそうとはとんでもない話だ」と、アメリカの製造業者の礼儀を弁えない高飛車な態度が非難されてしまったのだった。

そこで急遽、市場を調査してみると、日本の商習慣は「サプライヤー側から値上げの事情や背景を説明し、提示した新価格の受け入れを申し入れ、話し合いの上で値上げの幅が決定される」となっていたことが分かった。

そこで出た嘆き節が「日本では値上げとは交渉する性質だったのか」だったのだ。しかも、必ずしも提示した全額が通る訳でもなかったことも驚きだったのだ。この辺りの違いを「セラースマーケットとか、バイヤーズマーケットという表現があるが、アメリカではプロデューサーズマーケットだった」と私は説明してきた。

トランプ大統領は25%の賦課の声明を2月に出していた:
この点を私なりの経験を踏まえて考えれば「トランプ大統領はこの時点で公示または告示すること(アナウンスすることでもある)で発表したので、事は済んでいる。もしも反対や異議がある国は即刻申し入れが来ると考えていたのかもしれない」のである。我が国も黙ってはいなかったが、官房長官の記者会見や武藤大臣の「3月渡米」の表明では黙っていたのと同じで、25%を了承したと看做していたかもしれないのだ。

表現を変えれば、トランプ大統領があの声明を発表した時に「我が国は不服であるから除外を要望するとともに、直ちに担当大臣を派遣して話し合いを開始したいので、正式な会談を予定願いたい」と言って置くべきだったのだ。確か中国は例の報道官が激しい口調で反論していた。カナダは報復関税を課すことを表明していた。即ち、黙ってはいなかったのだ。

私の勝手な推論では、石破首相も武藤大臣も「トランプ大統領も商務省も『適用除外リスト』に載せて貰ってあるのだろうから、3月に確認に赴けば間に合うだろう」と、日本式に考えておられたのではないのかとなる。3M社だったかの製品に「ポストイット」(post it)というsticker(ステッカー)があるが、アメリカ側は“We posted it.”だったと思っているのだろう。

執拗に繰り返して言えば「海外との取引では相手側が何らかの重大な意思表示を間接にでもした場合には、沈黙しているのは宜しくない。こちらからも賛成か反対か、イエスかノーかの意思を表示しておくことが肝心」という点である。「除外されるだろう」という類の、希望的観測記事を掲げたメデイア側にも問題なしとはしない。


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