新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

時移り、人変わる

2023-09-25 15:14:05 | コラム
ヤマト運輸が日本郵便に:

ヤマト運輸はこのほど「小型荷物の配達を委託している約3万人の個人事業主との契約を2024年度末までに終了すること」を明らかにした。即ち、ヤマト運輸はチラシなどの小型荷物の配達について、6月に提携を発表した日本郵便る方針を明らかにしたのだ。

このニュースを聞いて感じたことはといえば「時移り、人変わる」だった。だが、同時に一寸話が変わるかもしれないが「盛者必衰かな」とも思ってしまった。というのも、私は昭和26年(1951年)12月にストライキがあった三越に、スト破りの目的で雇われた大学生としてアルバイトを始めた経験があったからだ。

それと言うのも、あの頃のことを思い出せば、大和運輸(当時の社名)が三越の(「都内と近県への」だったか)配達を全面的に請け負っていたのだった。記憶では大和運輸の配達の能力は素晴らしく、間違いや遅延に対する苦情などは先ずなかったのだった。それが何時の間にか三越と縁が切れたと聞いたので、あれほどの配達網と配達員を如何にして処置するのかと思っていたら、「宅急便」を始めるに至ったのだろうと推察していた。

その宅配便という事業には、その後佐川急便を始めとして多くの運送会社が参入して今日の盛況を招いたのだった。恐らく多くの需要家や一般家庭でも「便利な時代になったものだ」と大いに利用したのだろうと見ている。「宅急便」は確かヤマト運輸の登録商標?であるにも拘わらず、宅配を意味する代名詞の如くに普及してしまったと感じている。

ところが、そこに思いがけない「黒船」がワシントン州のシアトルからやってきたのだった。1990年代の記憶では、シアトル市街の南の外れにあった薄汚れたビルの中にあったamazonという書籍の通販をしていた会社が、手広くあらゆる商品の通販をするという新規の業態を引っさげて我が国の市場に参入した。それからは、昔のことしか知らない私などは「時移り、人変わる」だと痛感させられるに至った。

そのamazonが今日では「アマゾン」として猛威を振るっている。ディジタル化され、ICT化の時代に生きる人たちにはECというのか通販とすれば良いのか知らないが、店頭で品物に触れないでスマートフォンの機能を余すところなく活用して配達される買い方に移行してしまったようだ。一時は私でさえ、クロネコメールだったかを重宝に使っていたものだった。それが「時移り人変わって」日本郵便に委託する時になったそうだ。

私のように1955年から我が国の紙パルプ産業界にお世話になり、1972年からはアメリカの紙パルプ産業界に無謀にも転進して今日に至った身からすれば、ヤマト運輸とアマゾンが時代を変えようとまで視野に入れて宅配業に進出した訳ではないだろうが、製紙産業にも多大なる影響を与えていたことが印象的なのだ。ご存じの方も多いと思うが、製紙産業はインターネットの時代になって印刷媒体が衰退してもがき苦しんでいるのだ。

だが、宅配便と通販というのかECと称すべきか知らないが、毎日毎日膨大な量の商品が段ボール箱に入れられて配達されるのだ。簡単に言えば、今や製紙産業界での数少ない成長品種が段ボール原紙であり、段ボール箱なのである。しかも、使用済みの箱の大部分は回収され、リサイクルされて製紙原料に戻り、再び箱になって各家庭や需要家の所に配送されているのだ。環境問題の優等生ではないか。

紙パルプ産業界で過ごしてきた身として言っておきたいことは「今やアメリカでも我が国でも安定的に成長している会社はといえば、段ボール原紙のメーカーであり、その先にある段ボール箱加工業界なのである。我が国では専業者のレンゴー(昔を知る方には聯合紙器といえば通じるか)は成長が続き、23年度には売上高は9,000億円に達し、第2位の日本製紙に肉薄している。

アメリカでは長い間世界最大の紙パルプメーカーだったインターナショナルペーパーも、間もなく首位の座を段ボール原紙メーカーと紙器用原紙メーカーの名門会社が合併したウエストロック社に奪われそうな所まで来てしまっている。矢張り「時移り、人変わり」はアメリカでも進んでいるのだ。

なお、アメリカでもう一種類成長が続く業種がある。それは衛生用紙のテイシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパーなのである。お気付きの方もおられるかと思うが、これらの紙は使用済みになった後で回収して再生することは先ず不可能なのだ。それだけではなく、世界的に生活様式が変わり、この種の紙の需要はC国でも伸びているのだ。



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