世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

シリーズ⑮:シーサッチャナーライ歴史公園#2

2016-11-28 08:41:07 | タイ王国
<続き>

●ワット・チャーン・ローム

クメール軍を破った戦勝記念として、ラームカムヘーン王の命により13世紀末に建立したといわれている。
ここのチェディーは正方形の基壇の周囲を象が取り囲んでいる。某ガイドブックは38頭と記すが、実際は36頭である。そのガイドブックの執筆者は、現地調査したかどうか疑わしい。


正面右側の基壇で、対角を向く象の他に辺には正面を向く象が4頭置かれている。いずれも程度の差はあるものの、漆喰が剥げ落ちている。
階段を挟んで正面左側の基壇である。左端は対角を向く、そこから階段までの4頭は正面を向いている。正面を向く象は左右合わせて8頭。それに対角を向く象が左右の端で1頭ずつである。
この写真は正面の反対側の裏面である。右手前が対角を向く象、一番奥が対角を向く象(やや見にくいが)で、その間に辺の前方を向く象が8頭並んでいる。これを模式図に現わすと下図となる。
●の位置に象が配置され、合計で36頭となっている。この36という数字に拘って、以下の噺を紹介したい。
ある著書によると、基壇を囲む象は36頭あるが、塔を復元する際36頭になったと推察され、当初は33頭だったであろう・・・と記述されている。さらに”それはエラワンと呼ぶ象で、33の頭をもつインドラ神の乗り物と結びつくからである”・・・とある。
象の基壇への配置図を上に示した。合わせて36頭である。では著述者が述べる33頭をどのように配置したのであろうか?・・・バランスよく配置する手当が見当たらない。
確かにチェディーはそれ自体が須弥山を現すと云われている。須弥山の頂上に忉利天が在り、33天が住まいするという。エラワンだけではなく33という数字はバラモンや仏教に登場する数字ではあるが、36が33になるはずもない。
この36頭の配置はヒンズーや仏教の世界観から来ていると思われる。・・・と云っても適切な説明方法が思いうかばないが、金剛界曼荼羅の世界観をもって説明してみたい。
金剛界曼荼羅を構成する仏の数は、同一グループが4の倍数でできている。これは左右上下が対称という曼荼羅の幾何学形態による。上の配置図を再度御覧願いたい、対称であることが分かる。金剛界曼荼羅には、中央の大日如来以外は四仏、十六大菩薩、内の四供養菩薩、外の四供養菩薩、四摂菩薩よいう36尊である。つまり4及び4の倍数は仏教の世界観を示している。その36頭の象が配置されていることになる。
くどくどと説明してきたが、象の基壇の上に壁龕が設けられ、そこに仏像が安置されている。
タイで多くの寺院を参拝した訳でもないので、断定的な表現はできないが、このような形式のチェディーは珍しいのではないかと思われる。




                                    <続く>