8月10日 NHK海外ネットワーク
今年5月 軍がクーデターを宣言したタイ。
アメリカなど欧米諸国はタイの軍部を厳しく非難した。
これに対し中国はクーデター後ほどなく軍事政権の支持を表明。
欧米とは全く反対の姿勢を打ち出した。
7月にはタイの外相代行を招き
外相を務めたことがある国務委員が対応するなど手厚く迎えた。
さらに8月9日 中国はタイとの二国間会談に応じ経済支援を約束するなど接近を図っている。
(中国社会科学院 副研究員)
「中国は自分たちの事情に合わせてタイとの関係をどうするか考える。
タイの政権や指導者がこれまでと代わったからといって
政治や経済の関係を断ち切ることはしないだろう。」
こうした中国の姿勢は各国による外交交渉の場にも影響を及ぼし始めている。
NHKが入手したASEAN共同声明の作成段階の内部文書。
フィリピンが中国を念頭にその行動を制限しようという新たな提案を行ったのに対し
タイがかねてから中国寄りだったラオスとカンボジアなどととともに
中国を批判する文言を削除するよう求めたことがはっきりと記されている。
(タイ シハサック外務次官)
「フィリピンの提案は共同声明ではなく今ある枠組みの中で協議すればよい。
ほかに適切な枠組みがすでにある。」
タイは中国との間に領土問題がない。
南シナ海の問題では争っている当事国同士1対1で解決したいという中国の考えに
もともと理解を示してきた国である。
軍事政権になって欧米や日本から冷たくされている間にいっそう関係を強化すれば
中国包囲網意に深くくさびを打ち込めるという計算がありそうである。
王毅外相は南シナ海の問題は複線構想で処理するのがよいと述べた。
複線というのは2本のレールのことで
1本目は争いはあくまで当事国同士で解決するというもの。
中国は領有権問題がある国の中でも相手によって対応を使い分けている。
王毅外相はベトナムの外相と会談して関係改善を呼びかけたが
一方 フィリピンのことは記者団の前で強く非難した。
1国1国対応を変えて個別に撃破していこうという戦略である。
2本目のレールは南シナ海の平和と安定は中国とASEANで守るというもの。
中国は来年 初めて行われる中国ASEAN国防相会議を開こうとしている。
南シナ海の沿岸国でないという理屈でアメリカや日本を外して中国に有利な情勢に持ち込もうという動きを今後加速するとみられる。