1月16日 キャッチ!
夏を迎えたブラジル一の観光名所 リオデジャネイロ。
休暇を楽しもうという国内外からの人たちでごったがえしている。
しかし今リオデジャネイロの急速な治安の悪化が問題となっている。
東京23区2つ分の大きさのリオデジャネイロ市に
「ファベーラ」と呼ばれるスラム街が住宅と隣接して点在している。
ファベーラではここ数年 麻薬組織同士の縄張り争いが激化しており
頻繁に銃撃戦が起きて住宅街にいても流れ弾が飛んでくる。
去年の11月までに州内で起きた銃撃事件の犠牲者は約4,900人。
一昨年の同じ時期より300人も上回っている。
また誘拐事件も去年は85件と約4割も増えている。
こうした状況に市民も不安を隠せない。
(市民)
「この街は無法地帯だわ。」
「僕は3回も強盗に遭ったよ。」
「今のリオでは仕事もできず
家族と住めない状況だよ。
妻とリオを出て行こうと思っています。」
治安悪化の原因の1つはここ数年の州の財政難である。
原油価格の低迷などで州の主な産業である石油関連企業の業績が悪化。
税収が減少したために治安当局の予算が一昨年と比べて約3割削減された。
警察のパトロールも大幅に制限されることとなり
これに乗じて麻薬組織が活動を活発化させている。
組織は新たな構成員として行き場のない失業者に狙いを定めており
失業者の増加が組織を勢いづける原因ともなっている。
常に危険と隣り合わせな状況のもと
危険を余儀なくされる市民は今あるインターネットサイトに注目している。
サイトの名は「どこで銃撃戦が起きているのか」。
この名のとうり
銃撃戦や集団強盗がどこで起きたのか
直近の位置情報を教えてくれるサイトである。
そのサイトを運営するのがマルコス・バチスタさん(36)。
多くの人たちに危険を回避してもらおうと仲間4人でこのサイトを起ち上げた。
タクシー運転手や地域住民から寄せられる情報の中から
目撃情報が複数寄せられる有力なものだけを選別。
ツイッターやフェイスブックなどを通じて無料で提供している。
フェイスブックのサイトは去年ユーザーが3万人増加。
現在4万5,000人が利用している。
去年 州内で起きた銃撃戦の回数はこの団体が確認しただけで5140回。
1日平均14回以上である。
集団強盗も433回にのぼっている。
(サイト運営者 マルコス・バチスタさん)
「ユーザーからは
“あなたたちが私たちの警備員だ”
“あなたたちなしでは生きられない”と言ってくれます。」
こうしたなか行政もようやく重い腰を上げ始めた。
12月 州政府と市政府が連携して
主に観光客が多く訪れるコパカバーナ地区で新たな治安対策を始めた。
州政府が大通りに設置した防犯カメラの映像を集中管理。
事件が起きた際には市政府が現場に配置したワゴン車と情報を共有して警官隊を送る。
警官隊はスマートフォンの特別なアプリを使って
事件現場の映像や容疑者の写真などをリアルタイムで受け取り
事件の早期解決に役立てる。
当局はITを活用して治安の向上に努めたいとしている。
(州政府治安曲 アウヴェス次局長)
「去年は以前に比べて半分のパトカーしか稼働せず
パトロールに影響が出ました。
今年も予算の大幅カットが予想されますが
州の資金を利用して
影響を最小限に抑えたい。」
“危険なリオデジャネイロ”という汚名を返上し
憧れの観光地であり続けられるのか。
住民や治安当局の取り組みが始まっている。