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芝の上の「供養」

2018-02-25 07:00:00 | 編集手帳

2月10日 編集手帳

 

 先頃、
スポーツ報知の競馬面で思いがけずホロリとする記事を読んだ。
今週末から短期免許を得て中央競馬に加わるフィリップ・ミナリク騎手(42)が、
急逝した友の鞍(くら)を携えて来日したという。

もとの鞍の持ち主は同じドイツ所属でイタリア出身のダニエレ・ポルク騎手。
1月初め、
がんを公表すると、
ひと月を待たずに34歳の若さで逝った。
両騎手は4年ほど厩舎(きゅうしゃ)で寝食をほぼ共にした時期がある。
互いに苦労を知り、
よきライバルでもあった。

ポルク騎手が一つ思いを遂げたのは昨年11月のジャパンカップの騎乗だった。
着順はふるわなかったものの、
日本を好きになって帰ったらしい。

同じくジャパンカップで騎乗し、
すべてをそばで見ていたミナリク騎手が友の形見を担いできた理由を分からぬ人はあるまい。
その鞍で馬を走らせることは欧州では何と言うのだろう? 
日本ではまさしく「供養」と呼ぶ。

とはいえ今回の来日で、
独トップの騎手が騎乗機会に恵まれたのはその腕前を買われたからにちがいない。
やや色づきを失った冬芝の上に、
競馬ファンは二人の影がかさなる騎乗を見ることになるだろう。


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