評価点:75点/2008年/日本
監督:加戸誉夫
熱すぎる野球アニメ映画。
サウスポー投手としてメジャー昇格を果たした茂野吾郎(声:)は、日本へ帰り福岡へと向かう。
思い出したのは、小学校5年生のとき、父親の仕事で転校したころのことだった。
小学校4年に横浜のリトルリーグの強豪と接戦の末打ち砕いた茂野は、右肩の故障を抱えていた。
福岡でもリトルリーグを、と考えていた茂野は、名門の博多南の門を叩く。
一度は断った博多南だが、茂野が三船のエースピッチャーだと気づくと、彼を口説きに訪れる。
順風満帆に見えた新生活だったが、父親の茂野はエースとして勝てなくなり、母親には新しい命が宿っていた。
孤独を感じる吾郎は次第に笑顔を失っていく。
野球漫画の映画化と言えば「ルーキーズ」だって?
そんなアリエンティな一昔の野球漫画なんて、僕は全然評価しない。
どうせ、かっこいい役者を寄せ集めただけでしょ?(観てないけど)
日本にはもっとおもしろい漫画、おもしろい野球映画がある。
それが現在73巻まで続く長寿漫画の「MAJOR」である。
僕はジャンプ派だったので、長らくこの漫画とは縁がなかったが、友人に勧められて一通り知っている。
といっても、長すぎて全部は読んでいないわけだが。
「タッチ」も確かにおもしろいかもしれないが、ここまで野球に対して情熱を傾けている漫画はそうはない。
それが、アニメ化されることになり、そして映画化されるまで成長した。
世の野球小僧は、是非この漫画を読むべきである。
そんなこんなで、今回その「MAJOR」の映画版を観たわけだ。
▼以下はネタバレあり▼
小学校入学前に母親と父親を亡くし、保育園の先生に育てられる。
その保育士の母親と、父親の親友茂野と結婚することになり、本田姓から茂野へと姓をかえる。
その暗く重い少年の心を支え続けていたのが、野球という親子の関係さえもつなぐものだった。
暗い!
暗すぎる!
少年誌としては、重すぎる!
けれども、この作者は野球を知っている。
そしてタイトルに「MAJOR」とつけておきながら、幼少期から描こうというとんでもない企画力を持っている。
何よりも、すべて野球に通じるような情熱を持っている。
通り一辺倒の展開で、結局野球やチームメイトへの情熱に気づいて危機を克服する、という話になっている。
それでもコミック本70巻を超える連載を続けてこれたのは、それだけおもしろいからだろう。
この映画は、そうした長い物語のほんの一部分でしかない。
アニメ化された時に、この部分だけはカットされた。
それはこの映画化をもくろんでのことだろう。
だから、原作やアニメを観ないと、ちょっとついて行けないところがあるかもしれない。
この映画のおもしろさは、そうした長い物語を知らなくても、まとまりあるように作ってあるところだ。
流れを知っている方が楽しめるのは間違いないが、きちんと一本の作品ということを強く意識している。
ジャンプのほかの映画化作品や、ほかの少年向け映画とはひと味違っているのはその点だ。
潤沢な資金がNHKから出ていたのか、このシリーズはきわめて完成度が高い。
観客に観てもらおう、あるいは視聴者を楽しませようという意識が観ている側に伝わってくる。
どこかの「アマルフィ」とかいう映画とは全然違う。
例えば、プロの古賀と茂野、少年の古賀と吾郎とのやりとりのリンクや、吾郎が疎外感を感じるあたりのやりとりは、課題が同時にやってくる。
そして、その課題の克服を、「一人では野球はできない」という古賀の父親にの言葉によって吹っ切る。
それは家族の中で孤独を感じていた少年、吾郎へも響くようになっている。
課題と克服が見事に一致するのだ。
その複雑な心情を、見事に短時間で描ききっている。
これだけのことを、違和感なく見せていることが、なによりもすごい。
観客に気づかれない配慮を、この制作陣はできるのだ。
ただ原作に依存しているようなアニメなら、きっとここまでのものは作れなかっただろう。
「今ここで降りたら、俺は一生後悔する」
という強い意志はそのまま中学生や高校生へも継承されていく。
その前後の物語を知っている観客にとっては、もはや当たり前の台詞とも言えるが、初めて観る観客にもそれがすんなり受け取れるように感じる。
それは、それまでの物語の中で、そのようにもっていっているからだ。
キャラクターに依存していないというのは、最後まで踏襲されているわけだ。
「後悔はしていない。
けれども、もう野球ができないと言われたら、俺どうしていいか分からなくて。
野球をとったら何が残るのかなって。」
だからこそ、その後に訪れる絶望感は絶大なものだ。
そして、それをひっくり返す茂野英毅の言葉は、大きなカタルシスをもたらすことになる。
漫画にある熱すぎる野球への情熱を正しく映像化している、そんなアニメだ。
だが、残念ながら古賀の妹はいらなかった。
このあたりの原作を読んでいないので原作でもいたのか、アニメ化に当たって作ったのか、それは知らない。
けれども、違和感たっぷりのあの声優(蓮仏美沙子)は、世界観を壊しかねない。
とても残念。
監督:加戸誉夫
熱すぎる野球アニメ映画。
サウスポー投手としてメジャー昇格を果たした茂野吾郎(声:)は、日本へ帰り福岡へと向かう。
思い出したのは、小学校5年生のとき、父親の仕事で転校したころのことだった。
小学校4年に横浜のリトルリーグの強豪と接戦の末打ち砕いた茂野は、右肩の故障を抱えていた。
福岡でもリトルリーグを、と考えていた茂野は、名門の博多南の門を叩く。
一度は断った博多南だが、茂野が三船のエースピッチャーだと気づくと、彼を口説きに訪れる。
順風満帆に見えた新生活だったが、父親の茂野はエースとして勝てなくなり、母親には新しい命が宿っていた。
孤独を感じる吾郎は次第に笑顔を失っていく。
野球漫画の映画化と言えば「ルーキーズ」だって?
そんなアリエンティな一昔の野球漫画なんて、僕は全然評価しない。
どうせ、かっこいい役者を寄せ集めただけでしょ?(観てないけど)
日本にはもっとおもしろい漫画、おもしろい野球映画がある。
それが現在73巻まで続く長寿漫画の「MAJOR」である。
僕はジャンプ派だったので、長らくこの漫画とは縁がなかったが、友人に勧められて一通り知っている。
といっても、長すぎて全部は読んでいないわけだが。
「タッチ」も確かにおもしろいかもしれないが、ここまで野球に対して情熱を傾けている漫画はそうはない。
それが、アニメ化されることになり、そして映画化されるまで成長した。
世の野球小僧は、是非この漫画を読むべきである。
そんなこんなで、今回その「MAJOR」の映画版を観たわけだ。
▼以下はネタバレあり▼
小学校入学前に母親と父親を亡くし、保育園の先生に育てられる。
その保育士の母親と、父親の親友茂野と結婚することになり、本田姓から茂野へと姓をかえる。
その暗く重い少年の心を支え続けていたのが、野球という親子の関係さえもつなぐものだった。
暗い!
暗すぎる!
少年誌としては、重すぎる!
けれども、この作者は野球を知っている。
そしてタイトルに「MAJOR」とつけておきながら、幼少期から描こうというとんでもない企画力を持っている。
何よりも、すべて野球に通じるような情熱を持っている。
通り一辺倒の展開で、結局野球やチームメイトへの情熱に気づいて危機を克服する、という話になっている。
それでもコミック本70巻を超える連載を続けてこれたのは、それだけおもしろいからだろう。
この映画は、そうした長い物語のほんの一部分でしかない。
アニメ化された時に、この部分だけはカットされた。
それはこの映画化をもくろんでのことだろう。
だから、原作やアニメを観ないと、ちょっとついて行けないところがあるかもしれない。
この映画のおもしろさは、そうした長い物語を知らなくても、まとまりあるように作ってあるところだ。
流れを知っている方が楽しめるのは間違いないが、きちんと一本の作品ということを強く意識している。
ジャンプのほかの映画化作品や、ほかの少年向け映画とはひと味違っているのはその点だ。
潤沢な資金がNHKから出ていたのか、このシリーズはきわめて完成度が高い。
観客に観てもらおう、あるいは視聴者を楽しませようという意識が観ている側に伝わってくる。
どこかの「アマルフィ」とかいう映画とは全然違う。
例えば、プロの古賀と茂野、少年の古賀と吾郎とのやりとりのリンクや、吾郎が疎外感を感じるあたりのやりとりは、課題が同時にやってくる。
そして、その課題の克服を、「一人では野球はできない」という古賀の父親にの言葉によって吹っ切る。
それは家族の中で孤独を感じていた少年、吾郎へも響くようになっている。
課題と克服が見事に一致するのだ。
その複雑な心情を、見事に短時間で描ききっている。
これだけのことを、違和感なく見せていることが、なによりもすごい。
観客に気づかれない配慮を、この制作陣はできるのだ。
ただ原作に依存しているようなアニメなら、きっとここまでのものは作れなかっただろう。
「今ここで降りたら、俺は一生後悔する」
という強い意志はそのまま中学生や高校生へも継承されていく。
その前後の物語を知っている観客にとっては、もはや当たり前の台詞とも言えるが、初めて観る観客にもそれがすんなり受け取れるように感じる。
それは、それまでの物語の中で、そのようにもっていっているからだ。
キャラクターに依存していないというのは、最後まで踏襲されているわけだ。
「後悔はしていない。
けれども、もう野球ができないと言われたら、俺どうしていいか分からなくて。
野球をとったら何が残るのかなって。」
だからこそ、その後に訪れる絶望感は絶大なものだ。
そして、それをひっくり返す茂野英毅の言葉は、大きなカタルシスをもたらすことになる。
漫画にある熱すぎる野球への情熱を正しく映像化している、そんなアニメだ。
だが、残念ながら古賀の妹はいらなかった。
このあたりの原作を読んでいないので原作でもいたのか、アニメ化に当たって作ったのか、それは知らない。
けれども、違和感たっぷりのあの声優(蓮仏美沙子)は、世界観を壊しかねない。
とても残念。
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