secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ミッション・インポッシブル フォールアウト

2018-08-21 16:30:04 | 映画(ま)

評価点:77点/2018年/アメリカ/147分

監督:クリストファー・マッカリー

イーサンの罪悪感。

シンジケートを壊滅させたはずのイーサンだったが、実際にはシンジケートの志をもった組織アポストルが生まれていた。
また、同じ頃、奪われたロシアの三つの核弾頭を奪還するで、イーサンたちは核弾頭を失ってしまう。
その取引に、アポストルが関わるという情報を得たイーサンらは、謎の男ラークが取引現場に現れるというパリに向かう。
IMFのあり方に疑義を唱えるCIA長官は、CIAからエージェントを同行させることをイーサンに認めさせる。
そのエージェント・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル )とともに、イーサンはパリを訪れるが……。

言わずと知れた、イーサンが活躍する不可能作戦の最新作。
スタントを使わないことを公言するトム・クルーズはこの作品で骨折して、それがニュースになった。
前評判も高く、育児をほったらかしにしてまでも見に行かせる何かがあるはずだと意気込んで映画館に向かった。

もちろんアマゾンプライムで「3」~「ローグ・ネーション」は予習済みだ。
これほどまでに高い質のアクションとサスペンスで観客を楽しませ続けるシリーズはなかなかない。

次はヘリコプターの操縦までしないといけない観客(俺)は大変だが、それもしかたがない。
映画館は盆休みであったこともあり、満員だった。
日頃映画館に来ない人も、来ていたことだろう。

▼以下はネタバレあり▼

前作のシンジケートの続きとなっている。
シリーズでは、味方以外が続けて登場し続けるのは初めてで、女エージェントのイルサやシンジケートのボス・レーンも再び登場する。
故に「ローグネーション」を見直しておいた方が物語にすんなり入り込めるだろう。
私は、レーンを演じるショーン・ハリスの声が大好きなので、再び登場してくれたことには喜んでいる。

スパイ映画らしく、今作も前作引き続き、登場人物の思惑が絡んで本音を言わない。
CIAは、IMFという組織を疑い、ウォッチメン(監視役)となるエージェントを送り込む。
マフィアのウィドウはよりよい条件で売り手と買い手を結びたい。
アポストルは、レーンと核弾頭を同時に手に入れたい。
M16に復帰せざるを得なくなったイルサは、核弾頭のことよりも任務(レーン)の引き渡しを最優先させたい。
IMF(というかイーサン)は、核弾頭を回収し、レーンを野放しにすることもできない。

そういう思惑が複雑に絡み合い、これまでとは違って作戦の「立案」「実行」「結果」というような流れになっていない。
いくつものミッション、アクションがあるが、それぞれが複雑にからみあって、ストーリーを追うのが大変だった。
(作戦前の、最初の前提がすでに複雑で、だれがだれなのかわかりにくい)

その中で今回のキィとなるのが、「イーサンにある罪悪」である。
物語の冒頭、仲間を救うために核弾頭を失う。
また、イーサンは妻のジュリアを置き去りにしたままになっている。
証人保護プログラムによって安全に過ごしてはいても、彼は妻と一緒にいる生活を送れていない。
そのことが、「自分の勝手な判断によって周りを不幸にしている」という罪悪を生む。
それに呼応するように、IMFの行動が、「客観的に見て」、レーンを有利に動かすことになっていく。
核弾頭の喪失、レーンの誘拐などである。

それぞれの思惑が交錯する中、悪をくじきながらその悪の被害に遭っている人たちを救えるのか、という不可能作戦なのである。

大変良くできたシナリオなのだが、私はあまりに複雑にしすぎたために、キャラが描ききれなかったように感じた。
特に、イルサだ。
彼女の役回りがあまりにシナリオの都合の良いように立ち回ったことで、どうしたいのかわからなくなっている。
特に終盤、カシミヤ地方に向かうとき、彼女が当たり前のようにIMFのメンバーのような顔で立ち回っているのが、解せない。
イーサンともっと対立して利害が相反するように描いておいたほうが、スリリングになっただろう。
しかし、いかにもその時間(上映時間)が足りなかった。

CIAにしても、ウォーカーを指名しながらその彼こそが裏切り者であったり、すんなりレーンのふりをしてウォーカーをだました割にはアジトを簡単に暴かれたり。
映画だから何でもあり、といえばそれでおしまいなのだが、展開が早すぎてそれぞれの思惑のぶつかり合い、という点が弱くなってしまった。

演出やアクションについては申し分ない。
大丈夫とわかっていても、そしてスケールが大きい物語を描きながらも、それでもかゆいところに手が届かない、はがゆい演出は、さすがである。
どこかのトム・クルーズの映画でも指摘したが、私たちは「ミッション・インポッシブル」という話を見ているのではなく、トム・クルーズがいかにして世界のために頑張っているかという物語を見ているのだ。
だから、彼の挑戦(演技)を見ることが楽しいし、より「リアル」に感じることができる。
メディアミックスの時代、こういう映画外のコンテクストを「演出」として利用し、映画を作り上げていく時代に、すでに突入していることを思わせる。

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