評価点:68点/2002年/フランス
監督:フローラン=エミリオ・シリ
とても「潔い」アクション映画。
ある日の午後、ドイツで捕まえられた売春組織のボス、ネクセップ(アンジェロ・インファンティ)を護送するため、特殊部隊が護送車に乗り込む。
同じ頃、新型パソコンを倉庫から盗み出すため、窃盗団は、用意周到に警備システムに侵入していた。
着々と盗み始めた頃、護送車が何者かに襲撃される。
逃げ込んだ先は、なんとその巨大倉庫。
ボスを取り返そうと、売春組織の大掛かりな装備をもった者たちが包囲する中、窃盗団、特殊部隊、倉庫の警備員というアンバランスなメンバーで、危機を脱しようと試みるが。。。
フランスのアクション映画。
アメリカ映画でこのくらいの出来の映画ならば、もっと話題になっているだろう。
おもしろい作品に仕上がっている。これぞアクション映画、という作品である。
▼以下はネタバレあり▼
最近のアメリカ映画では、アクション映画であってもストーリーをおろそかに出来ない。
観客が感情移入できるような設定や状況を考えるのに必死になっている。
それはもちろん、当たり前といえば当たり前だが、この映画はストーリーを省みないで、アクションを生み出す状況のみを想定している。
その点に好感が持てる。
過剰な演出をしたりや、無理に整合性を考えたりしないので、観客の心に訴える部分は弱い。
しかし、その無機質とも、説明不足ともいえる演出は、より臨場感と恐怖感を生んだ。
極悪組織のボスを護送する特殊部隊、そしてそのボスを奪還しようとする組織の部下たち。
一方、金のためにパソコンを盗む窃盗団。
そしてそのターゲットとなった倉庫の警備員。
それぞれ四者がいかに一つの事件に巻き込まれるか、という展開が非常にスムーズで、倉庫という閉鎖的空間のなかに人物たちを押し込めていく方法が、蛇足的な説明や、無駄な演出がないため、潔い。
ここまで見事に一つの空間にそれぞれを追いやっていく展開は、それだけで映画の見どころとなっている。
また、マフィアたちのなかに顔と名前のある人物が一人もいないことも、いい効果を生み出した。
無機質で、なんでも徹底的にやってくる「戦闘集団」というイメージになって、取り残された者たちの閉鎖感を増幅させる。
彼らの人間性を捨象してしまうから、より恐怖感や絶望感も増す。
登場人物たちの視野が極端に狭いのも、演出として成功している。
この映画のいい点を一言で言うならば、「潔い」ということである。
一般的な映画の基準で考えるなら気にする点を、バッサリ捨てた。
これが、この映画の最大の魅力である。
アメリカでは、もはやこういう映画は撮れなくなっている。
日本でも、これくらいのアクション映画ならとれそうなのに。
ストーリーのリアリティなんて、いくらでも見せられるのだということを教えてくれる。
しかし、バッサリ捨てすぎた感もまた否めない。
捨てすぎたのは、キャラクターの色分けと心理。
事件が起こってしまうまでの時間があまりに短いため、それぞれのキャラクターを書き分けることができなかった。
窃盗団のサンティノとナセールの心理はよくわかるが、それ以外の窃盗団のメンバーの心理がわかりにくい。
状況を理解しきれていないと思われる段階でも、特殊部隊に素直に従っているのは、どうなのだろう。
自分たちが逮捕されるという可能性を考えていない。
特殊部隊も特殊部隊で、相手は窃盗団であるにもかかわらず、銃をすんなり渡してしまう。
危機的状況ではあっても、もっと悩むべきだ。
相手は、マフィアほど危険ではなくとも、犯罪者であることには変わりない。
また、警備員のルイも、協力的でとまどってしまう。
もちろん、以前消防士だったという設定を見せてはいるが、それでも「物分り」が良すぎる。
せめて一言、窃盗団をとがめるような台詞がほしかった。
(確かに、カッコいい役どころではあったけれども)
その点では、マフィアのボスが特殊部隊を殺してしまうシーンは良かった。
あの手際の良さは、徹底的なマフィアへの説得力が増すような効果があった。
全体としておもしろい作品に仕上がっている。
ハリウッド映画にはない、気持のいい映画といえるだろう。
(2004/7/1執筆)
監督:フローラン=エミリオ・シリ
とても「潔い」アクション映画。
ある日の午後、ドイツで捕まえられた売春組織のボス、ネクセップ(アンジェロ・インファンティ)を護送するため、特殊部隊が護送車に乗り込む。
同じ頃、新型パソコンを倉庫から盗み出すため、窃盗団は、用意周到に警備システムに侵入していた。
着々と盗み始めた頃、護送車が何者かに襲撃される。
逃げ込んだ先は、なんとその巨大倉庫。
ボスを取り返そうと、売春組織の大掛かりな装備をもった者たちが包囲する中、窃盗団、特殊部隊、倉庫の警備員というアンバランスなメンバーで、危機を脱しようと試みるが。。。
フランスのアクション映画。
アメリカ映画でこのくらいの出来の映画ならば、もっと話題になっているだろう。
おもしろい作品に仕上がっている。これぞアクション映画、という作品である。
▼以下はネタバレあり▼
最近のアメリカ映画では、アクション映画であってもストーリーをおろそかに出来ない。
観客が感情移入できるような設定や状況を考えるのに必死になっている。
それはもちろん、当たり前といえば当たり前だが、この映画はストーリーを省みないで、アクションを生み出す状況のみを想定している。
その点に好感が持てる。
過剰な演出をしたりや、無理に整合性を考えたりしないので、観客の心に訴える部分は弱い。
しかし、その無機質とも、説明不足ともいえる演出は、より臨場感と恐怖感を生んだ。
極悪組織のボスを護送する特殊部隊、そしてそのボスを奪還しようとする組織の部下たち。
一方、金のためにパソコンを盗む窃盗団。
そしてそのターゲットとなった倉庫の警備員。
それぞれ四者がいかに一つの事件に巻き込まれるか、という展開が非常にスムーズで、倉庫という閉鎖的空間のなかに人物たちを押し込めていく方法が、蛇足的な説明や、無駄な演出がないため、潔い。
ここまで見事に一つの空間にそれぞれを追いやっていく展開は、それだけで映画の見どころとなっている。
また、マフィアたちのなかに顔と名前のある人物が一人もいないことも、いい効果を生み出した。
無機質で、なんでも徹底的にやってくる「戦闘集団」というイメージになって、取り残された者たちの閉鎖感を増幅させる。
彼らの人間性を捨象してしまうから、より恐怖感や絶望感も増す。
登場人物たちの視野が極端に狭いのも、演出として成功している。
この映画のいい点を一言で言うならば、「潔い」ということである。
一般的な映画の基準で考えるなら気にする点を、バッサリ捨てた。
これが、この映画の最大の魅力である。
アメリカでは、もはやこういう映画は撮れなくなっている。
日本でも、これくらいのアクション映画ならとれそうなのに。
ストーリーのリアリティなんて、いくらでも見せられるのだということを教えてくれる。
しかし、バッサリ捨てすぎた感もまた否めない。
捨てすぎたのは、キャラクターの色分けと心理。
事件が起こってしまうまでの時間があまりに短いため、それぞれのキャラクターを書き分けることができなかった。
窃盗団のサンティノとナセールの心理はよくわかるが、それ以外の窃盗団のメンバーの心理がわかりにくい。
状況を理解しきれていないと思われる段階でも、特殊部隊に素直に従っているのは、どうなのだろう。
自分たちが逮捕されるという可能性を考えていない。
特殊部隊も特殊部隊で、相手は窃盗団であるにもかかわらず、銃をすんなり渡してしまう。
危機的状況ではあっても、もっと悩むべきだ。
相手は、マフィアほど危険ではなくとも、犯罪者であることには変わりない。
また、警備員のルイも、協力的でとまどってしまう。
もちろん、以前消防士だったという設定を見せてはいるが、それでも「物分り」が良すぎる。
せめて一言、窃盗団をとがめるような台詞がほしかった。
(確かに、カッコいい役どころではあったけれども)
その点では、マフィアのボスが特殊部隊を殺してしまうシーンは良かった。
あの手際の良さは、徹底的なマフィアへの説得力が増すような効果があった。
全体としておもしろい作品に仕上がっている。
ハリウッド映画にはない、気持のいい映画といえるだろう。
(2004/7/1執筆)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます