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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

柄谷行人「無意識の憲法」

2016-10-01 17:27:47 | 読書のススメ

★ネタバレなし★

岩波新書から出ている、柄谷行人の著作。
柄谷行人は、マルクスの研究者として有名だが、以前浅田彰らと対談した「近代日本の批評」という本のどこかで「戦後という言い方は終わった。むしろ今は戦前の文化的な様相に似ている」といようなことを指摘していた。
私はそのことを強く覚えていて、時事問題、とくに国防や憲法九条に係わるようなニュースについては注視してきた。
柄谷行人の著作は、たくさんの引用からなり、ある程度の知識をもっていないと理解できないものが多い。
学生時代はそれでも読まされたり進んで読んだりしていたが、最近は買っても積んであるだけになっていた。

参議院選で、大きな焦点となっていたのは、憲法改正をどう考えるかという点だった。
しかし、実際の選挙活動では、憲法についての議論は、どちらかというと活発ではなかった。
そういう疑問? もあり、また、手頃な新書を探しているタイミングでもあったので、手に取った。

最後まで読んで分かったことだが、いくつかの講演を1冊の本にまとめたものだ。
語り口は柔らかく、ただし、私には理解できない論理の飛躍があり、なかなか歯ごたえのあるものだった。
ただ、まとまりのある連続したテーマというよりは、大きなテーマを多角的に切り取ったという印象が強い。

タイトルにある「無意識」という切り口で、憲法九条、そして象徴天皇を定めた一条について序盤では詳しく説明される。
また、後半には日本のおかれてる世界の情勢を、第二次世界大戦前ではなく、第一次世界大戦前に酷似していることを指摘する。
私が、あのときの問題提起と同じだと感じたのはこのことだ。
すなわち、60年周期で展開される世界史のサイクルは、いよいよ戦前の様相を呈しているということだ。

戦争の是非や、九条の是非は、ここでは議論しない。
ただ、いつ、どんなタイミングで世界戦争に陥るかわからないという点は、佐藤優らが抱いている危機感と共通しているような気がする。
イスラム過激派組織によるテロが毎日のようにニュースに出るとき、私たち日本に住む多くの人は対岸の火事のように感じていることだろう。
私たちが置かれている現状を、もっとよく知る必要があるのだろうと今更ながら思う。


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