銅版画制作の日々

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オール・ザ・キングスメン “善は、悪からも生まれる”

2007-04-20 | 映画:シネコン

 
『オール・ザ・キングスメン』は、手段と目的の関係、悪の結果としての善であっても、
“善”なのか、という道徳的問題を提示している。(監督スティーヴン・ゼイリアン)


 

先週、東宝二条シネマにて鑑賞した。久しぶりに観る、ショーン・ペン主演の映画だ。多分「ミスティック・リバー」以来だと思う。そのショーン・ペンと共演するのは先日観た「ホリデイ」のジュード・ロウにケイト・ウィンスレットそして「ボビー」・「世界最速のインディアン」などで活躍の大物俳優アンソニー・ホプキンスとかなりの豪華キャスト

原作は日本では、「すべて王の臣」というタイトルで白水社より、1966年に刊行されている。原作者はロバート・ペン・ウォーレン。「ライ麦畑でつかまえて」などとともに、《新しい世界の文学》シリーズの1冊として、今年3月に復刊された。

原作の基となったヒューイ・P・ロングは1893年、ルイジアナ州で9人兄弟の8人目として生まれている。父親は農業従事者で、彼は地元の高校に通学するも、学校側と衝突卒業直前に退学。訪問販売の仕事なども経験、最終的にはテュレイン大学で法律を専攻、ルイジアナ公共事業委員会で政治的キャリアをスタートその後は州知事、上院議員と・・・・。貧困層の絶大な支持でパワフル政治体制を敷きいた。1949年に同タイトルで「オール・ザ・キングスメン」が製作されて、アカデミー賞3部門という快挙を成し遂げている。(日本では政治的圧力から1976年に公開)

そんな作品を再びを映画化あえて、前作を見ず・・・・。原作の普遍的テーマに惚れこみ忠実に脚本を書いたゼリアン監督。不朽の名作を50年の時を経て、見事に現代に甦らせた。

時の大統領ルーズベルトに“最も危険な男”と言われた政治家と貴族階級出身のナイーブなジャーナリスト。ウィリー・スターク(ショーン・ペン)とジャック・バーデン(ジュード・ロウ、まったく異なったバックグラウンドで互いに理想を持つ2人はなぜ惹かれあったのか1949年ルイジアナ州メーソン市。上流階級出身、クロニクル紙の記者ジャックがウィリーと会ったのは、ウィリーが郡の出納官だった頃。妻ルーシーは学校の教師。ルーシーはが嫌いなため、ウィリーもを断っていた。実直なウィリーが注目を浴びたのは、市に新しい小学校が建築されたときのこと。建設入札の不正があり、役人の汚職を激しく非難したのがウィリーだった。毎日のように街角で汚職に対する真実を訴えるウィリー、でも労働者からの支持は得られず自分の職を辞める羽目にその後の彼は掃除用品のセールスをする毎日に・・・・。それでも、自分の信念を曲げず、訴え続けるついに欠陥工事が発覚校舎で事故児童3名の死者を出す大惨事ジャックの記事によってウィリーの人気は絶大なものにそんなウィリーのところへ、州の役人タイニー・ダフィ(ジェームス・ガンドルフィーニ)がで現れる!知事候補にと声をかけるのだ。タイニー・ダフィの後ろ盾で知事候補に立候補するウィリーでもこれは、相手候補の票を割るための手段だった利用されたウィリーその様子を記者ジャックは傍観していた。ある日選挙の広報官セイデイ・パーク(パトリシア・クラークソン)に告げる。「ウィリーは、票を割るために利用されただけ。君たちは人を利用して平気で捨てる」と。その頃、ウィリーは、与えられた街頭演説の原稿を読んでいた。有権者は次第にウィリーに関心を向けなくなる焦るウィリー知事になりたい何を人々は望んでいるのジャックはウィリーに真相を告げる。演説スタイルを変えるようにと・・・・。意を決意して、自分自身の言葉で喋りだす貧しい生い立ち、労働者、農民の立場に立っていることなども。その演説は貧しい人々の心を打つ選挙戦は有利にこのことを記事にしたジャックにクロニクル紙幹部はジャックは辞めることに。ウィリーは州知事に州の歴史をぬりかえる結果だった。ジャックの家族や他の大企業等はウィリーには投票せず。彼の公約は富裕層への宣戦布告

5年の歳月が過ぎた。ウィリーの権力は絶大なものに。次期大統領候補とまで言われる。あんなに嫌がっていた汚職・愛人などのスキャンダルにまみれるウィリーになっていた。“知事に弾効”と遂に判事(アンソニー・ホプキンス)が声明を発表した。窮地立たされたウィリージャックはウィリーに判事の声明を崩すために、判事の弱点探しを命じる「君が俺のために働くのは、俺が俺自身であり、君が君自身だからだ。俺たちはこの道を進む運命だったのさ。」と・・・・。ジャックは親同然の判事のスキャンダル探しをすることに・・・・。何と自分は判事を脅迫しようとしているのだ

 


判事の登場シーンは何と3つだけ。観客を説得するには、アンソニー・ホプキンスという実力俳優だけだ

ジャックには、心に秘めた少女の影があったその少女は“アン・スタントン”(ケイト・ウィンスレット)、彼女の父は当時知事を務め、繊細な兄アダム(マーク・ラファロ)はジャックの親友。判事の過去を暴くため、アンと再会


今は落ちぶれてしまい、大邸宅は電気も切られている


アンの兄アダムに、ウィリーは新病院の院長就任を要請潔癖なアダムは辞退するが。ジャックに「君の弱さは、正しい目的なら望まぬこともやるからだ。知事は“悪”でも、病院は“善”だ。」と・・・・。

ジャックに更なる絶望アンとウィリーの関係セイデイが言った。「あの女と寝た“礼”に、アダムを院長にしたのよ」

2人はうそ~


スティーヴン・ゼイリアン(監督・脚本・制作)
映画化に至った訳はこの原作を読んで、素晴らしいと思ったから。1949年にロバート・ロッセンが映画化しているが、それは観ていない。だから、この作品はリメイクではない原作を読んで、映画を作ろうと思った。私のインスピレーションの元はあくまでもなんだ。ウィリー・スタークという政治家だけの物語ではなく、人間というものの、人間の現実というものを描きたかった。ウィリーとジャックだけの物語ではなく、アンやアダム、判事といった複雑な人間模様が入り交じって、進んでいくところがこの映画の見どころのようだ。

人間は権力という地位によって、知らない間に人格さえも変わるということを、この作品から、教えられた気がする。もしかしたら、自分も優位な立場に立てば、無意識なうちに変わるのかもしれない怖いよね

 

 オール・ザ・キングスメンオフィシャルサイト 

 

 

 

 

Comments (3)
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