ジャーニーは、サンタナに在籍していたグレッグ・ローリーとニール・ショーンが中心となって結成されたグループです。
だから、そのサウンドを耳にするまでは、泥臭くてブルージーなハード・ロックか、(サンフランシスコ出身のバンドなので)サイケデリックなハード・ロックが売り物なんだろうと、漠然と思っていました。
『お気に召すまま』で初めてジャーニーに接したぼくは、想像とはまったく違う、洗練されたカッコ良さにすぐひきこまれました。
当時、とっても仲の良かったユミちゃんが、ジャーニーのレコードを持っていました。
ぼくがジャーニーを気に入っているのを知った彼女は、『お気に召すまま』の入ったレコード『ディパーチャー』を貸してくれたんです。
ジャーニーのサウンドは、驚異的なテクニックを誇るニール・ショーンのギターを中心になっていますが、スティーヴ・ペリーがヴォーカリストとして参加するようになってからよりスケール・アップしています。
野性味と叙情性を併せ持ったようなスティーヴの歌声は、並みいるヴォーカリストの中でも抜きん出た実力があると思います。"The Voice"とも称賛される伸びやかなハイ・トーンは、バラードを歌っている時にいっそう映えますね。
スティーヴ・ペリー(vocal) ニール・ショーン(guitar)
ハードでポップ、そのうえにプログレッシヴ・ロック風の緻密で幻想的なサウンドを加えて、ジャーニーはとてもスペーシーでドラマティックな世界を作り上げています。
当時は、彼らをTOTOやカンサス、ボストン、スティクスなどと並べて「アメリカン・プログレ・ハード」などと呼んだメディアもあったようですね。
レコードを借りたまま、いつしかユミちゃんとは会わなくなってしまいました。会わなくなってしまった原因はぼくにあったので、いつかはそれを謝りたかったけれど、年月はあっという間に経つもので、ひとこと謝りたいことや、ジャーニーのレコードを借りたままになっていることなどを、ぼくはすっかり忘れてしまっていたんです。
もう10年以上も前のある日、本を借りるために図書館に立ち寄りました。いろいろ書架を巡っているうち、カウンターの中にいるひとりの女性に目がとまりました。
ユミちゃんだ。
さんざん迷ったすえ、結局思い切って声をかけてみました。
そして、勤務時間が終わってから、何年ぶりでしょうか、一緒にお茶を飲みました。
ぼくは長年心に置いていたおわびの言葉を、やっと伝えることができました。
別れ際に「もうすぐ結婚するの」、とちょっと照れたように教えてくれたユミちゃん。結局レコードは返しそびれたままになっています。
もうユミちゃんに会うことはないかもしれません。だけど、ユミちゃんのお陰で知ることができたジャーニーの音楽と別れることはないでしょう。
『お気に召すまま』『オープン・アームス』『時への誓い』『オンリー・ザ・ヤング』『ドント・ストップ・ビリーヴィン』などなどがぼくの愛聴曲です。