ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

バラード (Ballads)

2005年11月10日 | 名盤

 
 秋の夜長にはなんてジャズが似合うんだろう、と思います。
 (春の夜にも夏の夜にも冬の夜にも似合う、と思うんですけれどね


 空気が澄み切って、静けさが部屋の隅々までしみ渡っているような、そんな夜です。
 今夜もステージがあったので、家へ帰ったのはもう真夜中過ぎ。
 軽く夜食をとったあとで、コーヒーを飲みながら、ジョン・コルトレーンの「バラード」を聴いています。
 
 
          
 
 
 年ごとに抽象的に、難解になってゆくコルトレーンですが、このアルバムでは、とても柔らかに、エモーショナルに、テナー・サックスを吹いています。まるで、耳元で優しく歌う子守唄のような、美しい音です。


 激しいブロウで強烈な演奏を繰り広げるコルトレーンのイメージとは対照的に、この作品のコルトレーンは、淡々と、率直に吹いているので、とても身近に感じられるのです。そして、コルトレーンの「歌」がたっぷりと堪能できます。
 夜の暗がりに一筋の光を投げかけるかのような、色気のある音色には惹きこまれてしまいます。


 とくに、冒頭の「Say It」から2曲目の「You Don't Know What Love Is」(恋の味をごぞんじないのね)への流れは出色の出来ではないでしょうか。コルトレーンのテナーの音色が、彼の内面を映し出しているようで、聴いていると気持ちがほぐれるばかりは、ちょっとばかりせつなくなります。
 「I Wish I Knew」や「Nancy」などもたいへん叙情的で、聴きほれてしまいますね。

 
          
     
 
 ドラムスのエルヴィン・ジョーンズは、他のアルバムよりは控え目に聴こえますが、逆にいつにも増して豊潤に歌心が流れているような気がします。
 ピアノのマッコイ・タイナーと、ベースのジミー・ギャリソンのプレイも、コルトレーンの音楽にさらなる深みを与えているように聴こえます。


 深夜ひとり静かにコーヒーを飲みながら、コルトレーンの音楽に浸る。こういうのも小さな幸せ、って言うんでしょうね。



◆バラード/Ballads
  ■演奏
    ジョン・コルトレーン・カルテット/John Coltrane Quartet
  ■録音
    1962年11月13日①~⑤、1962年9月18日⑥, ⑧、1961年12月21日⑦ (いずれもヴァン・ゲルダー・スタジオ)
  ■リリース
    1963年3月
  ■レーベル
    インパルス!/Impulse!
  ■プロデュース
    ボブ・シール/Bob Thiele
  ■エンジニア
    ルディ・ヴァン・ゲルダー/Rudy Van Gelder
  ■収録曲
    ① セイ・イット/Say It (Over and Over Again) (Frank Loesser, Jimmy McHugh)
    ② ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ/You Don't Know What Love Is (D. Raye, Gene DePaul)
    ③ トゥー・ヤング・トゥ・ゴー・ステディ/Too Young to Go Steady (Harold Adamson, Jimmy McHugh)
    ④ オール・オア・ナッシング・アット・オール/All or Nothing at All (J. Lawrence, Arthur Altman)
    ⑤ アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー/I Wish I Knew (Harry Warren, M. Gordon)
    ⑥ ホワッツ・ニュー/What's New? (Bob Haggart, J. Burke)
    ⑦ イッツ・イージー・トゥ・リメンバー/It's Easy to Remember (L. Hart, Richard Rodgers)
    ⑧ ナンシー/Nancy (With the Laughing Face) (Jimmy Van Heusen, P. Silvers)
  ■録音メンバー
    ジョン・コルトレーン/John Coltrane (tenor-sax)
    マッコイ・タイナー/McCoy Tyner (piano)
    ジミー・ギャリソン/Jimmy Garrison (bass)
    レジー・ワークマン/Reggie Workman (bass⑦)
    エルヴィン・ジョーンズ/Elvin Jones (drums)



 

コメント (2)
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