女性ミュージシャンの活躍が目覚しい、最近の日本ジャズ界です。ピアニストでは、山中千尋、上原ひろみをはじめ、将来を期待される人が続々と現れていますね。この流れのきっかけを作ったひとりが、大西順子ではないでしょうか。
彼女に関する情報は長い間途絶えていましたが、今年になって大野俊三(trumpet)のツアーに同行するなど、活動を再開したというニュースを聞きました。これ、個人的にはちょっとうれしい知らせだったりします。
そういうわけで、このところCD棚から「WOW」や「ヴィレッジ・ヴァンガードの大西順子」を取り出して聴いています。とくに「ヴィレッジ・ヴァンガード~」は、ぼくがはじめて聴いた大西順子の作品でもあります。
このアルバムは、1994年5月に行われた、ニューヨークのライヴ・ハウス『ヴィレッジ・ヴァンガード』におけるライヴを収録したものです。
『ヴィレッジ・ヴァンガード』は「ジャズの聖域」ともいえるライヴ・ハウスで、そこで収録されたライヴ・アルバムの発表を、日本の、それも女性ミュージシャンが成し遂げたというのは、当時の日本ジャズ界ではセンセーショナルなできごとだったようです。
強力なスウィング感、ゴリゴリした疾走感、パワフルなタッチ。聴いているとなんとも言えない快感に襲われます。低音部の使い方や、ひたすらシングル・トーンで押しまくるソロが、いかにも「大西順子」らしいですね。
クラシックの端正な風情も時折伺わせますが、彼女のピアノは独特の陰影を持った個性の強いもので、聴いていると、たとえばエリック・ドルフィーとか、オーネット・コールマンとか、チャールズ・ミンガスなどの「濃い」ジャズを連想してしまいます。大西順子の持つ「濃さ」が、ぼくにはたまらなく心地よいのです。
彼女の新たなエネルギー、どんどん放出してもらいたいし、新しい作品をそろそろ聴いてみたいですね。
◆ヴィレッジ・ヴァンガードの大西順子/Junko Onishi Live At The Village Vanguard
■演 奏
大西順子トリオ
■アルバム・リリース
日 本 1994年9月21日
アメリカ 1995年5月2日
■録 音
1994年5月6~8日 ニューヨーク・ヴィレッジバンガード
■エグゼクティヴ・プロデューサー
行方均
■レコーディング・エンジニア
ジム・アンダーソン/Jim Anderson
■収録曲
①ソー・ロング・エリック/So Long Eric (Charles Mingus)
②ブルー・スカイ/Blue Sky (Irving Berlin)
③コンコルド/Concorde (John Lewis)
④ハウ・ロング・ハズ・ディス・ビーン・ゴーイン・オン/How Long Has This Been Goin' On (大西順子)
⑤ダーン・ザット・ドリーム/Darn That Dream (Eddie De Lange & Jimmy Van Heusen)
⑥コンジニアリティ/Congeniality (Ornette Coleman)
■録音メンバー
大西順子/Junko Onishi (piano)
レジナルド・ヴィール/Reginald Veal (bass)
ハーリン・ライリー/Herlin Reiley (drums)
■レーベル
日本 Somethin' Else
アメリカ Blue Note
■チャート最高位
1994年週間アルバム・チャート オリコン56位