日差しが照りつける明るい場所から、急に家の中に入ったとき、一瞬真っ暗で前の見えないことがあります。
思春期の子育てとは、これに似ている点があります。親にとっては、急に前が見えにくくなり、とまどいます。
そのようなとき、少し待っていると、だんだんと周りが見えてきます。また、電灯をつけると、すぐに周りが見え出します。
このように、子どもが思春期の子育ては、親が「待つ」か、親が「工夫をする」ことが必要になります。つまり、先の見えにくい闇に光が射すまで待つか、別の光を当てるかです。
子どもが思春期になると、親と子の「間」が変わってきます。そしてこの「間」はずっと同じではありません。少しずつ距離が広がっていきます。
私は経験上、親子の距離感は、おおざっぱに言えば、おおむね次の3つの段階に分かれると考えています。
1⃣前思春期(小学校4年生ぐらいから):「手とり・足とり」のかかわりから、親が心理的に少し距離を置きます。親がすぐに「こうしなさい」というのではなく、ひとまず「どうしたらいいと思う?」と考えさせます。
2⃣思春期(中学生ぐらい):「手をかける」子育てから「目をかける」子育てへ移行させる。子どものことをずっと気にはかけているが、すぐに手を出すことは極力控えます。ただし、子どもが助けを求めてきたときには「手出し」をします。このときも、子どもに「どうしたらいいか」を懸命に考えさせることは欠かせません。
3⃣思春期後期(高校生):自立に近づいている段階ですので、基本的に本人に考えさせ、どう行動するかも本人に任せます。ただし、完全に「目」を離すのではなく、親はいざというときにはアドバイスができる、というスタンスです。
思春期というのは子どもが親から離れようとする時期です。だから、親も子どもから離れようとするのです。つまり子どもの思春期は、「親の子離れ」の時期なのです。