わたしは校長を務めているとき、学級担任には「子ども理解のため、生徒の地域での活動をできるだけ見に行きなさい」と、言ってきました。
もちろん、教師にとって勤務時間外なので強制はできませんし、無理強いもしませんでしたが、勧めることはしました。
生徒の中には、学校での活動以外に地域のスポーツクラブや習いごとをしている子がいます。
新体操をしている子、いけばなをしている子、ミュージカル、バレエ、自転車競技、ゴルフ、太鼓などさまざまであり、それらの活動ができる部活は、ふつう学校にはありません。
自分の得意なことに懸命に打ち込んでいる姿は学校内ではみることができないこともあります。
たとえば、将棋をやっている生徒の姿は通常学校では将棋部の部活動もないので、見ることができません。
そこで、学外での中学生の将棋大会を見に行くのです。
すると、真剣なまなざしで将棋に打ち込んでいる様子を目の当たりにして、学校とは違ったその子を知ることができるのです。
翌日学校へ行くと、「先生、きのうは来てくれてありがとうございました」と言いにきます。
そこで、見た感想をのべたりすることで、その子との人間関係が深まります。
このような理由で、わたしは教員に、生徒の地域での様子をできるだけ見に行くことを勧めるのです。
範囲を今度は学校の中だけに焦点化します。
教員は、授業や学級活動、学校行事の機会に生徒の様子を見ます。
しかし、中学校の場合、部活動でも生徒のがんばっている様子を見ることができるのです。
それが、中学校教師の生徒理解の助けになるという側面はけっこう大きなものです。
しかしながら、今回部活を学校から切り離し、地域に移行していく国の方向が打ち出されています。
部活の時間に教室とは違う表情や態度をみせる生徒がおり、部活が地域に移行されれば、その表情や態度を、教師が見ることができなくなる心配があります。
子どもは、本来多面性をもつものです。
学校の部活の運営の主体を地域に移行させるのなら、生徒の多面性を知り、生徒理解を深めるほかの方法を見つけなければならないのです。
この点が現場感覚で学校教育を考えたとき、わたしが思うことです。