箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

事実を詳しく説明することの大切さ

2020年07月19日 07時21分00秒 | 教育・子育てあれこれ


新聞記事に以下の特集を見つけました。

東京都江戸川区の東京臨海病院は、2月に帰国者・接触者外来を開設した。一般病棟の一つのフロアに入院していた患者をすべて他のフロアに移しそこに、新型コロナウイルス患者の専用フロアを設置した。

医療スタッフ総出で対応に当たる中、さまざまな差別や偏見を経験したという。

新型コロナウイルス感染患者が亡くなった際には、近隣の火葬場から受け入れを断られ、4日間遺体を安置したのち、遠くの火葬場まで運んだこともあります。
新型コロナウイルス以外の病気で入院した患者の治療が終わり、その人の住む老人介護施設へ連絡したところ、「“コロナ病院”から退院した人は引き取れない」と断られた。

同病院の看護師は、保育所に預けた子供を迎えに行くと、施設内に入ることを拒まれ、門の外で待たされたと言う。家族から仕事を辞めるよう求められた人もいた。

このように、病院と医療従事者は、新型コロナウイルスだけでなく、社会の差別・偏見とも向き合わなければならなかった。

そうした中で、小林滋病院長は、内情を知ってもらおうと報道機関の取材に応じることを決めた。そして、4月下旬に毎日新聞デジタル版やテレビで報道されると、「風向きが大きく変わった」という。

集中治療室や新型コロナウイルス患者専用フロアなどを公開し、小林病院長自らインタビューに応じて、病院の感染防護体制や病院が直面している課題、差別などについて詳細を説明した。

これが大きく報じられると、「直後から新たな差別は偏見の報告はほとんどなくなり、激励や称賛の言葉をもらうことが多くなった」と病院長。SNS上には「そのうち院内感染を起こすぞ」などと病院の取り組みを否定するような書き込みもあったが、むしろ少数であり、「温かい応援の方が圧倒的に多かった」という。また、病院にはN95マスクや防護服や食料品が、手紙とともに届くようになった。

飲食店や仕出し店からも弁当などの支援の申し出が相次いだ。インドの家族が新型コロナウイルスに感染して入院した際には、(よく受け入れてくれたと)近くに住む30人ほどのインドの人が救急外来の前で感謝の拍手をしてくれて、カレー弁当を差し入れしてくれた。

小林病院長は「治療はたいへんだったが、そうした支援一つ一つにスタッフはほんとうに励まされ、人の温かさに触れることができた」と話す。当初、退院患者の受け入れを拒んでいた施設なども、丁寧に説明を続けると、協力してくれるようになった。

医療関係者に対する差別・偏見について、病院長は「実際に院内感染が起きた病院もあり、一般の人がそういう気持ちになるのは無理もない」と理解を示す。その上で、「一般の人は病院の内情を知り得ないので不安になるのだろう。実情を公開したことで、理解をしてもらえたのではないか」と語る。
(2020年7月15日『毎日新聞』朝刊の「クローズアップ」の「情報開示で偏見改善」からほぼ全文を抜粋。一部表記を変更しました。)


この記事を読んで、私が考えたことや感想を三つ紹介します。

(1)学校での人権教育や社会での人権啓発の大切さ
偏見や差別は「知らないこと」から起こることが多いものです。その意味で、病院長が、詳細に病院の実情を説明したことで、人びとは自分の思っていた印象が思い込みで、正しい実態を知らずにいたことを理解できたのです。
これは、学校で児童生徒に対して人権教育をおこなうこと、また社会人に人権啓発をおこなう意義と大切さをあらためて教えてくれます。

人権の問題に対して、正しい知識と行動力をもっていないと、
1 .自分で勝手に「あの人は」とか「あのグループは」というひとくくりのきめつけ(ステレオタイプ的な見方)をしてしまいがちです。
2 .次にそのグループや人に嫌悪の感情をもちます。(偏見
3 .さらに、「来ない」でと避けるとか、排除する言動が生まれます(差別

(2)メディアの効果
テレビ離れや新聞離れが進んでいると言われますが、一つの正確な事実や情報を、多くの人びとに知らせるというテレビや新聞の役割は、やはり大きいと思います。

(3)人間はやっぱり温かい
がんばっている人に対してエールを送ったり、励ましたり、差し入れをしたりという温かいハートをもっているのが人間であると信じたいのです。
そして、その温かさに触れた人は、どれほどうれしくて、仕事のやりがいを感じることができるか。

新聞記事を読んでいると、暗いニュースも多いですが、このような人間の温かさをとりあげたものもあります。


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