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まさに柿色、入り日色の柿が数えきれないくらいに並んでぶらさがっていま
した。ここは山梨県の塩山、武田信玄の菩提寺、恵林寺に近い静かな
村です。有名なころ柿作りの今が最盛期。所狭しと吊るされ、干されてい
る柿の光景は壮観でした。青い空に夕日のような柿の色が映えて、なん
と美しかったこと。
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大きな渋柿を剥いて干し、コロコロころがしながら乾燥させるのだそう
で、枯露柿とも書くそうです。柿って日本の果物という感じがします。
persimonという英名は一応ありますが、世界中でkakiと言ったほうが
通じるんですって。サルカニ合戦、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の
句や、「隣の客はよく柿食う客だ」なんて、早口言葉にまでなっていま
す。「柿の種」というおかきもありますね。
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万葉集にも柿は出てくるそうです。なんといっても万葉一の歌人が柿本
人麻呂ですからね。でもあの時代の柿は全部渋柿だったとか。やっぱり
干し柿にして食べたのでしょうか。買って帰った甘い半なまのあんぽ柿
を食べながら「そう言えば、今は亡き叔母は柿が大好きだったなあ」なん
て思い出しています。