キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

クリスマスの思い出-A Christmas Memory

2011-12-24 11:15:02 | 
クリスマスの思い出
山本 容子,村上 春樹
文藝春秋
A Christmas Memory
Beth Peck
Knopf Books for Young Readers


        トルーマン・カポーティは『ティファニーで朝食を』がとても有名ですが、

        恐ろしいノンフィクション・ノベル『冷血』も有名です。英語で小説を読

        むのが何とかでき始めた頃、最初に読んだのが『冷血』でした。おぞま

        しい内容なのに、文体が簡潔明瞭で、英語力より感覚で読めたので

        しょうか、長編を瞬く間に読み終えた記憶があります。

        

        それに比べてこの『クリスマスの思い出』のやさしさは何でしょう?

        今度はじっくりじっくり味わって読んでいます。村上春樹が「イノセ

        ント・ストーリーズ』と名付けて、カポーティーの小品を6作集めて

        訳を出しています。そのうちには山本容子のユニークな銅版画がつい

        ている版も出ています。どれもカポーティの子どもの頃の体験が背

        後にあるようです。彼は享楽的な両親に言わば見捨てられ、幼いこ

        ろ親戚の家を転々として過ごしたのだそうです。この『クリスマスの

        思い出』の主人公の親友で年の離れた従姉(60才を過ぎた、世間

        的にはちょっと知恵遅れの、それだけに子どもの心を失っていない)

        のモデルになった人もきっといたのでしょうね。カポーティは大人に

        なって、社交界の寵児となり、結局は社交界から追放されてといっ

        たスキャンダラスで自堕落な生活を送ったようですが、それだけに

        イノセントな子ども時代を取り戻したい気持ちが強く、このような

        一連の作品を書いたのでしょうか。『クリスマスの思い出』は原作

        で読んでも村上春樹訳で読んでも、ピュアで、切なくて、チャーミ

        ングな、心が悲しみと同時に喜びで満たされるようなお話です。

             
コメント
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