Christmas Spirit: Two Stories by Robert Westall | |
John Lawrence | |
Catnip Publishing Ltd |
レコードやCDのジャケ買いと同じに、本も時々表紙買いをしますが、
これもその一冊です。英国の児童小説作家ロバート・ウェストールの
"Christmas Spirit"『クリスマス・スピリット』、中には"Christmas Cat"
『クリスマス・キャット』と"Christmas Ghost"『クリスマス・ゴースト』
というクリスマスにちなんだお話が二つ入っています。ウェストール
のお話のほとんどの挿絵を描いているジョン・ローレンスの表紙が良
いんです。雪の降る通りに街灯がぽつりと一つ灯って、その下を男の
子が駆けていきます。いつまでも見ていたいような味わいがあります。
『クリスマス・キャット』
勝気なキャロラインは、あるクリスマス・シーズン港町で牧師をしている
伯父さんのもとで過ごすことになります。そこで待っていたのは、手ごわ
い伯父さんの家政婦ブリンドリー夫人。伯父さんを町の人々から遠ざけ
て、我が物顔で牧師館を支配しています。当然キャロラインにもつらく
当たります。ある日キャロラインは牧師館の納屋に忍び込んだ町の
少年ボビーと出会います。貧しいが誇り高いボビーと彼女は不思議な
友情で結ばれます。ボビーは余命幾ばくもない隣家の少女に、納屋で
生まれた子猫たちを見せてあげたいと願い、彼女も賛成します。そして
クリスマスの夜、納屋のほのかな明かりで、忍び込んだボビーたちは
ブリンドリー夫人に見つかってしまいます。でもその光景は、ああ、な
んとキリスト生誕の厩の光景とそっくりでした。感動した牧師の伯父さ
んは、警察を呼ぶと騒ぐブリンドリー夫人を叱りつけ、みんなをクリス
マスのご馳走にさそいます。怒ったブリンドリー夫人は牧師館を出て
行き、戻りませんでした。それから何年後か、再会したキャロラインと
ボビーは結婚し、そして今、キャロラインはその時のことを孫娘に語っ
て聞かせているのです。
かかし | |
Robert Westall,金原 瑞人 | |
徳間書店 |
ウェストールには『ブラッカムの爆撃機』(宮崎駿の『紅の豚』のヒント
になったらしい)や、『海辺の王国』など実体験を基にした戦争絡みの
読み物が多くあります。それ以外も、上の『かかし』のようないわゆる
spookyな、背筋がゾクゾクするようなお話が多くて、ホラーの苦手な
私にはちょっとつらいのですが、このクリスマスの二つのお話は、とく
に『クリスマス・キャット』はウェストール独特の不気味さがあまりなく、
それでいてぴりっとしたユーモアがあって、この時期になると読み返
したいと思う好短編です。