キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

クリスマス・スピリット

2011-12-16 06:29:50 | 
Christmas Spirit: Two Stories by Robert Westall
John Lawrence
Catnip Publishing Ltd


        レコードやCDのジャケ買いと同じに、本も時々表紙買いをしますが、

        これもその一冊です。英国の児童小説作家ロバート・ウェストールの

        "Christmas Spirit"『クリスマス・スピリット』、中には"Christmas Cat"

        『クリスマス・キャット』と"Christmas Ghost"『クリスマス・ゴースト』

        というクリスマスにちなんだお話が二つ入っています。ウェストール

        のお話のほとんどの挿絵を描いているジョン・ローレンスの表紙が良

        いんです。雪の降る通りに街灯がぽつりと一つ灯って、その下を男の

        子が駆けていきます。いつまでも見ていたいような味わいがあります。

       

       『クリスマス・キャット』

       勝気なキャロラインは、あるクリスマス・シーズン港町で牧師をしている

       伯父さんのもとで過ごすことになります。そこで待っていたのは、手ごわ

       い伯父さんの家政婦ブリンドリー夫人。伯父さんを町の人々から遠ざけ

       て、我が物顔で牧師館を支配しています。当然キャロラインにもつらく

       当たります。ある日キャロラインは牧師館の納屋に忍び込んだ町の

       少年ボビーと出会います。貧しいが誇り高いボビーと彼女は不思議な

       友情で結ばれます。ボビーは余命幾ばくもない隣家の少女に、納屋で

       生まれた子猫たちを見せてあげたいと願い、彼女も賛成します。そして

       クリスマスの夜、納屋のほのかな明かりで、忍び込んだボビーたちは

       ブリンドリー夫人に見つかってしまいます。でもその光景は、ああ、な

       んとキリスト生誕の厩の光景とそっくりでした。感動した牧師の伯父さ

       んは、警察を呼ぶと騒ぐブリンドリー夫人を叱りつけ、みんなをクリス

       マスのご馳走にさそいます。怒ったブリンドリー夫人は牧師館を出て

       行き、戻りませんでした。それから何年後か、再会したキャロラインと

       ボビーは結婚し、そして今、キャロラインはその時のことを孫娘に語っ

       て聞かせているのです。     

かかし
Robert Westall,金原 瑞人
徳間書店


       ウェストールには『ブラッカムの爆撃機』(宮崎駿の『紅の豚』のヒント

       になったらしい)や、『海辺の王国』など実体験を基にした戦争絡みの

       読み物が多くあります。それ以外も、上の『かかし』のようないわゆる

       spookyな、背筋がゾクゾクするようなお話が多くて、ホラーの苦手な

       私にはちょっとつらいのですが、このクリスマスの二つのお話は、とく

       に『クリスマス・キャット』はウェストール独特の不気味さがあまりなく、

       それでいてぴりっとしたユーモアがあって、この時期になると読み返

       したいと思う好短編です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする