Excellent Women (Virago Modern Classics) | |
Alexander McCall Smith | |
Virago Press Ltd |
よくできた女(ひと) (文学シリーズ lettres) | |
芦津 かおり | |
みすず書房 |
ジェーン・オースティンがお好きな人はわかると思いますが、別にたいした事件も起こ
らないし、哲学的な深い内容があるわけでも、ミステリーがあるわでもなく、ただ男女
が散歩したり、手紙のやりとりをしたりして、ぐだぐだしてるだけなのですが、何だか
最後まで読んでしまい、しかも面白かったと思う。この『よくできた女』の作者バーバ
ラ・ピムの小説もそうなんです。彼女は現代のジェーン・オースティンなんて言われ、
その後、長い間時代後れだと、出版社に出版を断られ続け、つまり干されていたわけ
ですが、最近、もっとも過小評価されている作家の第一位として取り上げられ、復活
した作家です。
教会に奉仕している中年女性の何ということもない日常が、一人称で描かれたお話
なのですが、なんだかつるつる最後まで読んでしまいました。「よくできた女」とい
うのは、かなり考えてしぼり出した訳でしょう。excellentを「よくできた」と訳すのは
なかなかの技です。結婚し権力を振るわけでもなく、ある程度の距離をおいて牧師さ
んの都合のよいように、教区を回していく、そんな女性陣のお話です。だから日本語
の題名の「よくできた女」だと一人のように思われますが、実は複数の女たちです。
牧師さんが魔性の女にひっかかって結婚しそうになったり、自分もちょっと不倫し
そうになったり、ちょっとふらふらするのですが、結局一人が一番。人生ってこん
ものかなって思わせるようなお話です。そうですねえ、こんな人生も悪くないかも。
秋の四重奏 (lettres) | |
Barbara Pym,小野寺 健 | |
みすず書房 |
バーバラ・ピムの代表作はこの『秋の四重奏』です。定年した四人の男女の日常生活
を淡々と描いていますが、ちょっと毒気のあるユーモアを感じる面白い読み物です。