キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

冬の薔薇

2013-01-09 15:25:35 | 季節の花々
              フランスの一輪ざしや冬の薔薇       正岡子規

             

          新聞でこの句を見つけて、なんとすてきにセンスのある句なんだろう

          と思いました。咲き残った冬の薔薇が一輪。しかもフランス製の一

          輪ざしに挿してある。今現在の句としても洒落ていて、しかも冬の

          薔薇というところに陰影があって。萩原朔太郎が「ふらんすへ行き

          たしと思へど、ふらんすはあまりに遠し」と詠ったより更に前、明治

          の句とは。この一輪ざしは叔父さんからもらったガラス製のもので

          「椿」は相応しくないと「冬の薔薇」にしたとか。心憎い組み合わせ。

           

          薔薇は洋花のイメージで、与謝蕪村の「うれひつつ岡にのぼれば花

          茨」などは別にして、あまり俳句には使われなかったようですが、

          正岡子規は好きだったようです。こんなきれいな句があります。

              薔薇深くぴあの聞こゆる薄月夜  正岡子規

           

          さすがにこの季節、花屋さんで売っている薔薇の花は少ないですが、

          ありました、ありました。フランスよりもっと遠い所から来た薔薇が。

          フェアトレードでケニヤから来た淡い色の可愛いバラが。季節感も、

          遠い土地フランスへの憧れも希薄になったけれど、一方では、南米

          やアフリカで育てられた花を、日本で真冬に愛でるという、また違っ

          た面白い時代ではあります。さて、今子規が生きていたら、どんな

          句を作るでしょうか?
コメント
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