NPO法人美濃の森造隊だより

人と森林との最適な関係を探るため、岐阜県恵那市を中心に人工林の間伐をしながら森造りを行なうグループの活動報告です。

南アルプス原生林・塩見岳(8月28日、29日)

2009年09月03日 | 森林
「美濃の森造隊」の活動とは関係なく、個人的に遅い夏休みを取って南アルプス塩見岳を登って来ました。
塩見岳への登山口は、大鹿村の鳥倉林道からと塩川小屋からの二つあるのですが、塩川小屋のコースは明治初めまで伊那谷と駿河、甲斐を結ぶ伊那街道だったという話に興味を引かれ、今回は塩川小屋コースを選んでみました。
標高1300mの塩川小屋から標高2600mの三伏峠小屋までの道のりは、最初に出会う堰堤を過ぎると全て人の手の入っていない原生林の中の道のりです。
谷を離れて登りに入ると周りはシラビソ、ツガの大群生で、標高が上がると樹高が低くなり、幹も細くなるようでした。



また同時に倒木も多くなり、その上にミズゴケが生え、新しい苗床となっていました。
それはまるで表土の少なさを自らの幹で補うかのようです。
シラビソの枝の柔らかさにも驚きました。
いつも身近なヒノキやスギの枝の硬さが当たり前のものではない事を知りました。
この柔らかさは風や氷や雪をうまくやり過ごす工夫なのでしょうか。
標高が上がるにつれはっきりと変化する原生林の姿は生育条件の厳しさを示しているようです。

樹間は比較的狭いのに森の中は明るく感じます。
ヒノキの人工林とは葉の付方が違うせいでしょうか。
急登にあえぎながら一人でひたすら上り続け、ようやく三伏峠小屋に着いたのは16時半でした。
落石危険ということで塩川小屋かなり手前から林道を歩く羽目になったので、7時間近く歩いた事になりました。
翌日午後から雨の予報でしたが塩見岳を目指して暗いうちに三伏峠小屋を出発しました。
塩見小屋手前の標高2600m位まではほぼ樹林帯で、他に比べてここは森林限界が高いような気がします。
台風11号がもたらした南風が通過するはずの寒冷前線を押さえ込んで、霧か雨を予想して上った塩見岳は時間が経つにつれ雲が晴れ、頂上からは南に荒川岳、南東に富士山まで望む事が出来ました。
北岳方面は最後まで霧の中でしたが、天気ではかなりの幸運に恵まれました。

荒川岳


富士山


塩見岳東峰から見た西峰


塩見小屋から北岳方面を望む。
左から仙丈ケ岳、遠くに駒ケ岳、正面に北岳と間ノ岳、右手に西農鳥岳、農鳥岳


帰路、振り返って塩見岳を望む。

天気予報を見て半分諦めていた塩見岳登頂を果たせ、13時間の長い帰路もそれ程つらく感じませんでした。

今回の山歩きのほとんどが原生林の中で、標高2800m以下の山肌を隙間無く覆っていました。
しかし、標高が上がるにつれ樹種は少なくなり、樹高が低く幹は細くなり、群生する事で身を寄せ合って必死に生きている様子です。
いつも見慣れている標高1000m以下の人工林の中では、光環境が改善でたちまち様々な植生が繁茂する樹木の生命力を感じますが、こうして標高2800m近くで必死に生きている姿を見ると、見渡す限り地表を多い尽くしながらも少しの環境変化で命が危険にさらされる危うさも感じます。
森の姿は標高や地質や温度といった地理的環境でかなり大きく変わるようです。
どんな姿がその場所の本来の森で、どんな森を快適に感じるのか、もっと深く知りたくなりました。

塩川小屋近くの塩川の流れ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする