NPO法人美濃の森造隊だより

人と森林との最適な関係を探るため、岐阜県恵那市を中心に人工林の間伐をしながら森造りを行なうグループの活動報告です。

クリスマス集材 (12月25日)

2010年12月29日 | 間伐
クリスマスイブは午後から北風が強くなり、暗くて重い雪雲も時々流れ込んで来ました。
夜には、やはり雪がちらつき出しました。
雪道は、橇には滑りやすくて良いかもしれませんが、車では少々問題です。
そして25日の朝を期待ではなく不安な気持ちで迎えてみると、屋根は雪で覆われているものの路面には雪はありませんでした。
ぎりぎりセーフのようです。
それでも空は暗く、時々雪が舞っています。
恐らく今朝の寒さは今年一番の厳しさでしょう。
その寒さの中を野井の里山で1年前に倒した材を集材します。
今回の参加者は横井さんと私の二人です。

ここでは今まで何度か人力や引っ張りだこでの集材を試みたのですが、傾斜が緩やかでとても材は運び出せませんでした。
そこで今回は林内作業車で直引きすることにしました。
林内作業車は佐々良木の渡辺さん、運搬車は東海バイオから借用しました。

こうして大きな機材を借りられるようになったおかげで、我々の活動も幅を広げて行く事が出来ます。
これから山の手入れを学ぼうとする山主さんや資金力の乏しい活動団体に、こうして機材を貸してくれる人や組織があれば、閉塞状況の森造りを草の根森造りといった新しい発想で切り開いて行く事が可能でしょう。

集材状況です。




林内作業車の能力は予想通り満足の行くものでした。
折り重なって動きそうもない末口30cm、9m程の材を引っ張り下ろすことが出来ました。
これがあれば今まで切り捨てていた材を搬出出来ます。

残念な事に、今回搬出した材は、切ってからほぼ1年林内に放置されていたものです。
さすがにこれ程長い間放置しておくと辺材は腐食しています。
しかし心材は全く腐食していませんので、80%位が心材の中径木なら、辺材を切り落としてもテーブルの天板に利用で来ます。
ただ早く集材していれば、良い材を沢山出すことが出来ました。
それが少々心残りではあります。

来年は、もっと上手な間伐材利用が目標です。
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里山、掛木処理、焚火 (12月19日)

2010年12月22日 | 間伐
久しぶりに三郷の里山に戻ってきました。
今日の参加者は天野さんと私の二人だけです。
天野さんも私もバイクで現場に来ましたので、流石に寒さが身に染みました。
早速焚火で暖を取ります。




天野さんのポーズが少しわざとらしく見えますね。
これは年賀状用に撮影した1枚です。
もうそんな季節なんですね。
(気付くのが遅すぎる?)
後に写っているのは天野さんが名古屋から乗って来たバイクです。

焚火に当たってのおしゃべりにすっかり寛いで1時間半程も費やしてしまいましたが、本日の目的の間伐にも取り掛かる事にしました。


先ずは田圃との境界のヒノキに取り掛かりました。
ところが見た目以上に足場が悪く、伐倒準備に手間取った上しっかりと掛木になってしまったものですから、随分手間取りました。
しかし、掛木をあれこれ工夫しながら安全に処理するプロセスは大切な経験です。
こうした経験をを抜きにして安全な間伐作業は出来ません。
しかも正確に倒す事がいかに大切かという事を身をもって知る事が出来ます。
今回はいい体験になりました。

焚火に当たりながら昼休みに寛いでいると、脇を通り過ぎる車が大体不思議そうに見つめて通り過ぎます。
道路沿いで焚火に当たっている姿は、この田舎でも珍しいかもしれません。

午後は場所を少し換え、スギを間伐しました。

ヒノキとスギの伐倒感覚の違いが良く解りました。

2時には作業を終え、少し林の中を歩いてみました。
落葉樹の優勢な辺りの林床のやわらかさと木漏れ日のやさしさは、人工林のものとはまるで違います。
何も言葉にする必要の無い充足感に包まれます。
人工林の問題は、両者を同時に体験すれば誰でも理屈無しで簡単に理解出来るに違いありません。

今日は焚火を囲んでのおしゃべりの一日でした。
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講演会(勉強会) (12月18日)

2010年12月20日 | 森林
中野生産森林組合の理事会、忘年会、講演会(勉強会)が、土曜日の夜に開かれました。
そして、短い理事会の後、直ぐに私の出番が回ってきました。
ほぼ60代以上の組合理事を相手に「森林の現状とこれから」という学生さんを相手にする時のようなテーマで話をするのです。
この夜の参加者は30人程、今まである程度は自主的に森林に関わろうとしている人達だけを相手にして来ましたが、今夜の相手は違います。
緊張しました。

この日のために私が用意した資料は以下の通りです。

<配布資料>
森林の現状とこれから
(1)森林の歴史
137億年前 宇宙誕生
46億年前 地球誕生
38億年前 生命誕生
3.5億年前 シダ植物の森誕生
2億年前 裸子植物 スギ、ヒノキ誕生

6500万年前 恐竜絶滅
350万年前 猿人誕生
160万年前 火を使った痕跡

(2)人工林の歴史
1950年から1970年頃 住宅建設ラッシュ
1960年から1996年 拡大造林 累計625万ha
現在の人工林 1000万ha
3779万ha国土の66% 2512万haが森林、その内1000万ha(39%)が人工林

恵那市では
市域 50412ha 森林 38920ha(市域の77%)
民有林 33918ha ヒノキを主とした人工林 20689ha(市域の41%) 

(3)森林との係りの減少
 一次産業の衰退(農業、漁業、林業)
 過疎化、高齢化
 森林文化(林産物、燃料使い)の衰え

(4)森林(人工林)の現状(一般論)
ほとんどの人工林が間伐遅れ或いは管理放棄
過密による光環境悪化により材の成長の遅れ、下層、中層植生の衰退、土壌の流出
保水力の低下による洪水最大流量緩和機能の低下
土壌流出による川、海の汚染(河床への泥の堆積により魚類産卵場所の減少、栄養バランスかく乱による近海漁場の疲弊)
生物多様性の低下による動植物生息環境の減少、悪化
土砂災害の危険性増加

(5)森林の機能
① 生物多様性保全機能(遺伝子、生物種、生態系)
② 地球環境保全機能(温暖化防止、気候システムの安定化)
③ 土砂災害防止機能/土壌保全機能
④ 水源涵養機能(洪水緩和、保水、水質浄化)
⑤ 快適環境形成機能(気候緩和、大気浄化、騒音防止)
⑥ 保健、レクレーション機能(療養、保養、レクレーション)
⑦ 文化機能(景観、宗教、学習、芸術)
⑧ 物質生産機能(木材、食料、肥料、飼料、薬品)

(6)中野生産森林組合の現状
森林組合法
第一条  この法律は、森林所有者の協同組織の発達を促進することにより、森林所有者の経済的社会的地位の向上並びに森林の保続培養及び森林生産力の増進を図り、もつて国民経済の発展に資することを目的とする。

(7)今後の目指す方向
 組合員の財産価値の拡大、保全
 森林機能の増大
  間伐の実施
 森林管理を通して地域社会に貢献

(8)間伐の技術
 相対幹距離 20以上
 林分形状比
 地位指数
 枯れ上がり度 
 
(9)人工林のあるべき形態
混交林、複層林
近自然型造林

大体はこの資料の順番で話を進めましたが、持ち時間の40分を使い切っても終わらなかったので、(7)と(8)は省きました。

さて、反応はどうだったかと言うと・・・・・

1/3は無関心、1/3はまあまあ好意的、そして1/3は反発でした。
反発は、今までのやり方を否定するものだ、理事の顔をつぶすのか、理想論だ、等です。
出来るだけ穏やかに話を進めたつもりでしたが、どうしても今行なっている下刈りや技術レベルや勉強不足に批判が及びますので、組織を運営している側は我慢が出来なかったのでしょう。
さてこれで戦いの火蓋が切って落とされました。
今後の展開に乞うご期待。
(案外何事も無かったように現状維持だったりして。)

それにしても疲れた。
コメント (2)
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収穫祭 森の恵みの猪肉(12月5日)

2010年12月07日 | 自然農
「美濃の森造隊」メンバーと「山里力育成塾」メンバー合同で収穫祭を行ないました。
場所は中野方棚田です。
流石この時期の中野方は冷えます。
名古屋からバイクで来た天野さんが、19号線を走っている時と中野方へ向う道路を走っている時の空気の冷たさがまるで違うと驚いていました。
確かに棚田に着いた時、掘っ立て小屋も周りの草木も全て霜に覆われ凍り付いていました。
そこで最初にした事と言えば、当然火を熾し暖を取る事です。
山に入り、落ちて乾燥したスギの枝や間伐したヒノキの葉や枝を集めます。
この時焦らずゆっくり時間を掛け、多すぎると思うくらい乾燥した細い枝を集めるのが大切です。
往々にして早く温まりたいと中途半端に焚き付けを集めて火をつけてしまいがちですが、それでは失敗します。

煙は盛んに上がるのですが、なかなか火が育ちません。
この時も危うく失敗しそうでした。

ようやく火が大きくなり、なぜか皆で火を眺めています。
実はこの時、凍りついたトタン屋根の氷が溶け出し、小屋の中で雨が降っていたのです。
ですから落ち着いて座っていられなかったのです。


どんどん火を育てます。

火の粉が盛大に飛び散っているので、ナイロン素材の衣服は孔だらけになる可能性があります。

そうこうしている内に本日の参加者全員が集まりました。
本日の参加者は、天野さん、青島さん、杉岡さん、横井さん夫婦、宇井さん、三宅さん、鬼頭さん、そして森岡の9人でした。
なかなか盛況です。

火も安定してきたので皆で持ち寄った素材で昼食会の開始です。
先ず横井さんがここの畑で育てたハブ茶が振舞われました。
今年は畑の作物は豆類も含めて全体的に不作でしたが、このハブ茶は元気に育ちました。
ハブ茶の原料はエビスグサの種子、別名決明仔(けつめいし)と言い、視力、高血圧、肥満に効能があるほとんど万能の漢方薬だそうです。
お茶は麦茶の香ばしさと仄かな薬味があり、爽やかな飲み口です。
全員一致で早速来年は沢山作ることになりました。
次は宇井さんの持参した猪肉です。
罠にかかった猪を捌いたものを宇井さんが知り合いから手に入れ、今朝ニンニク、みりん、しょうゆで味付けして持ってきてくれました。
そして炭火で焼いたものがこれです。

これが絶品でした。
今までの猪肉の概念をひっくり返されました。
今まで猪、熊、鹿等の獣の肉を口にしたことがありますが、大体どれもあくが強かったり獣の臭みがあったりして珍しいけれど進んで食べるほどの事はないと思っていました。
ところが今度の肉は違いました。
臭みはまるで無く、噛み応えは弾力があり、かといって硬くは無く、味も豚や牛とは違った旨みがたっぷりでした。
これなら十二分に高級肉として商品になります。
これも森の恵みの一つとしてうまく利用したいですね。

横井さんが用意してくれたホットドッグにも挟んでみました。
カレー味のキャベツとの相性がぴったりでした。

畑で取れたサトイモもアルミホイルに包んで焼いてみました。

中までしっかりと火が通り、味付けは何も無くても美味でした。

この他青島さんと西岡さんが坂折の棚田で育てた新米を、ホーローの弁当箱ごと暖めて少しついたおこげと一緒に頂きました。
これも餅米のような弾力と甘みで、思わず顔がほころびます。


ソラマメの種を播く事などすっかり忘れ、食べたりおしゃべりをしている内に帰る時間になってしまいました。
お腹も一杯になったことですし、名残惜しいですが帰る事にしましょう。
美味しい食材を用意してくれた皆さん、ありがとうございました。

最後に記念撮影です。
(残念ながら天野さん、三宅さんは用事で早めに帰ったので写っていません。)


これで今年の畑仕事は終了しました。
来年3月畑の凍結が解けるまで畑作業はお休みです。
さて来年にはどんな作物を作りましょうか。
蕎麦と小麦に挑戦してみたいですね。
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山姥恐るべし (11月27、28日)

2010年12月01日 | 間伐
友人が間伐材を使うと言うので、23日の現場で集材しようと朝8時過ぎ濃い霧の中を愛車スーパーカブで佐々良木に向いました。
途中の道路沿いの温度計表示は2℃、ヘルメットの風防の結露で霧は水滴だったんだと改めて気付かされつつ、待ち合わせ場所の「らっせいみさと」駐車場までのほんの20分のドライブで、体はすっかり冷え切っていました。
冬の朝にバイクに乗るのは相当気合が必要です。
待ち合わせ場所から現場に着くと、パレットを積んだ台車を押しながら坂道を登るおばあさんに出会いました。
人に会うのが意外だったので声を掛けると、少し上に畑があってそこに行くという返事でした。
何をしているのかと聞かれ間伐をしていると答えると、家の山もやってくれないかという話になり、集材に取り掛かる前に早速一緒に畑に隣接する森林を見に行く事にしました。
後から来た友人を集材現場に何も言わずに残してきてしまったので、おばあさんと連れ立って行ってしまう私の後ろ姿を見て、一緒に来ていた友人の娘は、私が山姥に連れて行かれたと言っていたそうです。
後で聞いたのですが、おばあさんは今日2度目の収穫で、収穫した野菜は道の駅「らっせいみさと」に卸していて、売上げは1万円ほどになると言う事でした。
休日のみの売上げかもしれませんが、1日1万円の売上げはたいしたものです。
弱者で一括りされがちな高齢者ですが、山里のおばあさんは違います。
人気の無い山道で小さな台車を腰を曲げながら押しているおばあさんを舐めてはいけません。
恐るべき山姥かもしれません。

おばあさんの山林を見て間伐を約束し、霧も晴れた現場に戻り集材作業に取り掛かりました。


今回必要な材の仕様は、元口の直径が10cm程、末口もそれ程変わらなく真っ直ぐな4mのヒノキというものですので、かなり厳しい条件です。
この条件を満たすのは、しっかり間伐が遅れて細いまま成長した50年程のヒノキの2番玉といったところでしょう。
間伐遅れの人工林で切捨てにされるこうした間伐材も、欲しい時にはなかなか手に入りません。
しかしこうして少ないながらも需要はあるわけですから、小さな需要をうまく吸い上げられれば間伐材ももう少し利用出来るでしょうね。


集材は午前中に終わったので、材を運んで行く友人を見送って、午後からおばあさんの山林で少し間伐をしました。

28日も引き続きおばあさんの山林で一人のんびり間伐をしました。
27日施工前の様子です。

28日施工後の様子です。




随分切っていますが、外からの見た目はあまり変わりませんね。
これを見るとまだもう少しという思いになります。
しかし、森の手入れは何年も時間を掛けてゆっくりと取り組むものなんでしょう。
慌てて結果を求めるには、森林が時間的にも面積的にも人のスケールでは測れない対象だという気がします。
また数年後にこの森に会いに来ます。

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