1月29日(日)島根県立石見美術館 展示室A あなたはどう見る?関連イベント「みるみると見てみる?」
作品名:「ディヴァン・ジャポネ」1892-93年 アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック
鑑賞者:9名(内みるみるメンバー4名)
ナビゲーター:松田淳
<はじめに>
〇この作品を選んだ理由
・この作品は、自分が勤務校の授業で毎年使っている作品であり、本物でのナビにチャレンジしたいと強く思った。
・ポスター作品でありながら、物語性がある人物や背景が描かれている作品であり、トークをしながら作品の意味を考えていけると考えた。
〇ナビをするにあたって
・授業と同じ流れでナビを行い、参加者からのアドバイスをいただくよう考えた。
・描いてあるものから場面を想像したあと、このポスターが伝えたいことを考えることにより、ポスターの役割とおもしろさを感じてほしいと思った。
・はじめから予定していたわけではないが、最終的にポスターの意味について複数の意見が出たためかすっきりしない雰囲気だったため、何を伝えたいポスターであったのかは確認しておきたいと思い、トークが終わったあとに学芸員による解説を付け加えてもらった。
<鑑賞会より>
※はじめにポスターの作品であり、伝えたいことが必ずあることをナビが確認した後に鑑賞会を始めた。
・左上の白いドレスの女性が舞台で歌っている。弦楽器が見えるから音楽に合わせたミュージカルのようなステージ。指揮者や幕も見える。
・手前の2人はその公演を見に来ている客だと思う。
・中央の女性とその隣の男性は、裕福な人だと思う。華やかな洋服だから。
・右の男性は執事で、中央の女性は主人だと思う。裕福な感じだから。
・中央の女性は扇子のようなものを右手に持っていて、その下に黄色のお金を入れる袋のようなものが見える。祝儀を投げるのかも。
・左上の女性は顔が見えないが、向こうを向いているようにも見えるので、舞台を去ろうとしているのでは。ということは舞台が終わったところなのかも。
・指揮者ではなく、喝采を送っているのかもしれない。
・ディレクターというような文字が見えるので、誰かが監督のような役なのかも。
※小まとめをしたあとに、「では、このポスターは何を伝えたいのでしょうか?」
・ミュージカルや舞台の宣伝だとはじめは思ったが、歌を歌う人の顔が見えず、客が大きく描かれているので店のポスターだと思った。文字は読めないが、数字もあるのでその店の名前と住所が書いてあるのでは。
・お客さんが大きく描かれているので、こんな人も来るイベントを知らせるポスターなのかも。あるいはこの舞台がある箱物の宣伝かも。
※トークを終えた後、学芸員からポスターの意味を伝えてもらうようお願いした。
・ディヴァンジャポネ(日本の長椅子)という店を宣伝するポスター。
・左上の女性は、黒い腕カバーといえばこの人というのが分かるような有名な歌い手。
・手前の2人の人物も誰もが知っている有名人。
<鑑賞会のナビをふりかえって>
・いつも画像で鑑賞をしている作品の本物での鑑賞会であったため、自分自身が楽しくナビをすることができた。
・授業と同じ流れで行ったが、時間が短めであったこともあり、誘導的になってしまったかもしれない。
・もっと時間をとってみなさんの意見を聞きたかった。
<みるみるの会メンバーから>
・今の時代のポスターと違いがあるため、ポスターの典型として見せるのはどうなのかと疑問に感じた。
・ポスターということをはじめに伝えたが、伝えずに見ても話していくうちにわかるので必要ないと思った。
・ポスターを成立させている条件を提示するなどして、ポスターとは何かを伝えたうえでこれはポスターという投げかけならよかった。
・この作品の造形的なおもしろさを感じた話が出なかった。
・色遣いのおもしろさがこの作品にはある。色数が少なくても色が想像できるのがロートレックのうまさ。
・ポスターの代表的な作品ではあるが、ポスターとしての機能(店の宣伝にどれだけの効果があったかなど)が評価されているわけではない。絵画的な評価が大きい。
・デザインとは「使う」ものをつくることと、生徒に伝えており、この作品を鑑賞して、ポスターは伝えるために使うものであることを教えたいと思っている。
・デザインは情報を整理することである。平面構成だけなど狭い意味ではない。石見美術館はファッションを基本にさまざまなジャンルの作品を集めているためか、デザインの解釈の幅が広いのかもしれない。
<おわりに>
ディヴァン・ジャポネは、ポスターの作品として「伝え方」のおもしろさがあるように思う。人物やものの関係からどのような場所なのかを想像し、文字の意味が分からないからこそ描かれているものから想像する中で意外性もあり、何が伝えたいポスターであるかを考える楽しさがある。そのためこれまでデザインの作品鑑賞の入り口としての位置づけでこの作品を中学校1年生と鑑賞してきた。
今回の鑑賞会と振り返りを通して、この作品を「ポスターの作品」として“見させる”ことの課題を考えることができた。自分にとってはポスターの典型の作品でも、現代の子どもたちのポスターに対する感覚とズレがあり、この作品のみでポスターとはこういうものだとすることは危険である。また「デザインってよくわからない…」とならないためにと思い、「デザインとはこういうもの」と伝えるように意識してきたが、ポスターの定義と同様にデザインの定義や解釈の幅が広いため、偏った考え方をうえつけないようにしたい。加えて、ポスターだから伝えたいことを考えようと誘導したことで、ロートレックの色彩などの上手さなど造形的なよさに目が向けられなかった。美術のおもしろさはドラマチックな物語性だけではないという意見もあったように、作品の“つくり”も見て話せる鑑賞を今後考えていきたい。
次回の「みるみると見てみる?」は2月11日に開催です。
皆さまとトークできることを、楽しみにしております!
作品名:「ディヴァン・ジャポネ」1892-93年 アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック
鑑賞者:9名(内みるみるメンバー4名)
ナビゲーター:松田淳
<はじめに>
〇この作品を選んだ理由
・この作品は、自分が勤務校の授業で毎年使っている作品であり、本物でのナビにチャレンジしたいと強く思った。
・ポスター作品でありながら、物語性がある人物や背景が描かれている作品であり、トークをしながら作品の意味を考えていけると考えた。
〇ナビをするにあたって
・授業と同じ流れでナビを行い、参加者からのアドバイスをいただくよう考えた。
・描いてあるものから場面を想像したあと、このポスターが伝えたいことを考えることにより、ポスターの役割とおもしろさを感じてほしいと思った。
・はじめから予定していたわけではないが、最終的にポスターの意味について複数の意見が出たためかすっきりしない雰囲気だったため、何を伝えたいポスターであったのかは確認しておきたいと思い、トークが終わったあとに学芸員による解説を付け加えてもらった。
<鑑賞会より>
※はじめにポスターの作品であり、伝えたいことが必ずあることをナビが確認した後に鑑賞会を始めた。
・左上の白いドレスの女性が舞台で歌っている。弦楽器が見えるから音楽に合わせたミュージカルのようなステージ。指揮者や幕も見える。
・手前の2人はその公演を見に来ている客だと思う。
・中央の女性とその隣の男性は、裕福な人だと思う。華やかな洋服だから。
・右の男性は執事で、中央の女性は主人だと思う。裕福な感じだから。
・中央の女性は扇子のようなものを右手に持っていて、その下に黄色のお金を入れる袋のようなものが見える。祝儀を投げるのかも。
・左上の女性は顔が見えないが、向こうを向いているようにも見えるので、舞台を去ろうとしているのでは。ということは舞台が終わったところなのかも。
・指揮者ではなく、喝采を送っているのかもしれない。
・ディレクターというような文字が見えるので、誰かが監督のような役なのかも。
※小まとめをしたあとに、「では、このポスターは何を伝えたいのでしょうか?」
・ミュージカルや舞台の宣伝だとはじめは思ったが、歌を歌う人の顔が見えず、客が大きく描かれているので店のポスターだと思った。文字は読めないが、数字もあるのでその店の名前と住所が書いてあるのでは。
・お客さんが大きく描かれているので、こんな人も来るイベントを知らせるポスターなのかも。あるいはこの舞台がある箱物の宣伝かも。
※トークを終えた後、学芸員からポスターの意味を伝えてもらうようお願いした。
・ディヴァンジャポネ(日本の長椅子)という店を宣伝するポスター。
・左上の女性は、黒い腕カバーといえばこの人というのが分かるような有名な歌い手。
・手前の2人の人物も誰もが知っている有名人。
<鑑賞会のナビをふりかえって>
・いつも画像で鑑賞をしている作品の本物での鑑賞会であったため、自分自身が楽しくナビをすることができた。
・授業と同じ流れで行ったが、時間が短めであったこともあり、誘導的になってしまったかもしれない。
・もっと時間をとってみなさんの意見を聞きたかった。
<みるみるの会メンバーから>
・今の時代のポスターと違いがあるため、ポスターの典型として見せるのはどうなのかと疑問に感じた。
・ポスターということをはじめに伝えたが、伝えずに見ても話していくうちにわかるので必要ないと思った。
・ポスターを成立させている条件を提示するなどして、ポスターとは何かを伝えたうえでこれはポスターという投げかけならよかった。
・この作品の造形的なおもしろさを感じた話が出なかった。
・色遣いのおもしろさがこの作品にはある。色数が少なくても色が想像できるのがロートレックのうまさ。
・ポスターの代表的な作品ではあるが、ポスターとしての機能(店の宣伝にどれだけの効果があったかなど)が評価されているわけではない。絵画的な評価が大きい。
・デザインとは「使う」ものをつくることと、生徒に伝えており、この作品を鑑賞して、ポスターは伝えるために使うものであることを教えたいと思っている。
・デザインは情報を整理することである。平面構成だけなど狭い意味ではない。石見美術館はファッションを基本にさまざまなジャンルの作品を集めているためか、デザインの解釈の幅が広いのかもしれない。
<おわりに>
ディヴァン・ジャポネは、ポスターの作品として「伝え方」のおもしろさがあるように思う。人物やものの関係からどのような場所なのかを想像し、文字の意味が分からないからこそ描かれているものから想像する中で意外性もあり、何が伝えたいポスターであるかを考える楽しさがある。そのためこれまでデザインの作品鑑賞の入り口としての位置づけでこの作品を中学校1年生と鑑賞してきた。
今回の鑑賞会と振り返りを通して、この作品を「ポスターの作品」として“見させる”ことの課題を考えることができた。自分にとってはポスターの典型の作品でも、現代の子どもたちのポスターに対する感覚とズレがあり、この作品のみでポスターとはこういうものだとすることは危険である。また「デザインってよくわからない…」とならないためにと思い、「デザインとはこういうもの」と伝えるように意識してきたが、ポスターの定義と同様にデザインの定義や解釈の幅が広いため、偏った考え方をうえつけないようにしたい。加えて、ポスターだから伝えたいことを考えようと誘導したことで、ロートレックの色彩などの上手さなど造形的なよさに目が向けられなかった。美術のおもしろさはドラマチックな物語性だけではないという意見もあったように、作品の“つくり”も見て話せる鑑賞を今後考えていきたい。
次回の「みるみると見てみる?」は2月11日に開催です。
皆さまとトークできることを、楽しみにしております!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます