みるみると見てみる?
平成27年2月1日 13:30~14:10 ナビ 上坂美礼
鑑賞者 一般参加者 13名、みるみる会員3名
会場 展示室A 「あなたはどう見る? ―よく見て話そう美術について」
作品 6黒き帯 岡田三郎助 1915(大正4年)油彩・カンヴァス
作品 7西洋婦人像 藤島武二 1908~1909(明治41年~明治42年)油彩・カンヴァス
作品 8青いドレスの女 藤田嗣治 1939(昭和14年)油彩・カンヴァス
まず、学芸員の廣田さんからのご挨拶。第2回の「みるみると見てみる?」を始めます。対話を重ねて鑑賞しようというアプローチで、他の人の意見に耳を傾けて、作品を鑑賞する時間をお楽しみください。というオープニングで幕を開けました。以下、Nはナビの上坂コメント。当日は、同時に記録を金谷さんが打ってくださっていたので、追記しながらレポートします!
発言者の代名詞として、匿名イ・ロ・ハ・二・ホ・ヘ・トで表記します。
N)初めて参加する方もいらっしゃるので、この会の進め方を確認します。まず、絵をよくみる。何を観ているのか、何を感じているのかを考えます。そして、自分が絵を見て考えたことを話します。話したくなったら、その時に挙手をしてください。みんなでそのお話をじっくり聴きます。みる、かんがえる、はなす、きく、この活動のくり返しの中で絵を楽しんでほしい。
N)今日は、この三つの作品をみます。まず、(6を指しながら)こちらから見ていきます。1分か2分か、しばらく、近づいて、よく見てください。
廣)みなさん、どうぞ、椅子よりも前に近づいてご覧ください。椅子をもっと前に出しましょうか。
(予め椅子は移動していたのですが、さらにもっと近くで見ることができるように、椅子の移動をみなさんでしていただきました。ありがとうございます。絵との距離は、1m前後になりました。)
N)この絵の中で、見えていることやみつけたことなどを、お話しください。
イ)絵の内容とは関係ないのですが、ぱっと見て気付いたこと。真ん中の 7の作品は、向かって右が少し上がっている。
(7の絵の展示についてのコメントの後、参加者みんなで爆笑!もしかして、このコメントでみんなの雰囲気が和んだのかも!?)
N)三つの作品が展示作品してあると、水平線が気になりますね。
イ)では、絵の内容について。6の絵のモデルについて。ポーズが、指から見て、初めてモデルしたような硬さを感じる。左手が少し大きすぎるように思える。この絵が描かれたいきさつは分からないが、ぎこちないポーズの感じがする。
N)手の様子から、モデルさんのぎこちなさを感じる、ということですね。
へ)今の話に関連するのですが、座っている様子が窮屈そう。例えば、昼過ぎに、ブランデーの入った紅茶を飲んで酔っ払っているような。そして、画面の左下だけ明るいのはなぜ?という疑問が沸く。
N)何でしょう?(6「黒き帯」の画面右下の明るい色については、先週の、みるみる予習の会でも出た話題!
ロ)屋外なので、こもれびでは?
ハ)先ほどの話からも午後、という話が出たのですが、背景の色から、ぽかぽかしていい天気なのではと。午後の暖かい日差しを感じる。
N)他に何かありますか。
二)8の絵について。女性とねこが描かれているが、背景が気になる。
!! 6の作品について話を進めているなか、発言者の話題が8になる。
N)
6と8の両方、背景に注目していただきました。人物のしぐさだけでなく、背景もみていただきました。背景について、今、とても貴重な意見をいただいた。
ホ)6姿勢がたよりなげで、体幹がしっかりしていない。物思いにふけっている。背景もきれいな感じ。
N)女性の姿勢が気になる。手はぎこちないのですが、姿勢は心もとない感じ。(小まとめ)
この姿勢は…?
6の絵に描かれている女性に、より注目して、しばらくご覧ください。
へ)白い着物に黒い帯していて、いいのか?という疑問がわく。
N)この黒い帯に、何かちょっと疑問がわくという意見ですが、何か。
イ)柄のない真っ白い着物 帯をしているので、長襦袢などの肌着ではない。
何かが終わって疲れた感じ。または出かけて帰って、疲れた感じ。帰宅して、疲れて休んでいる。
二)バックのもやっとした感じから、女性の心情が表されている感じがする。
N)この情勢の心情が、この背景や帯の色から表現されている。どんな心情なのでしょうか。
チ)バックの色に対して違和感。この女性は楽しそうじゃない。疲れている。帯の黒が気持ちを表している。このような背景なら笑っていてもおかしくないのに、この表情との対比なのでは。
N)女性の気持ちが、黒い帯に表されている。(小声過ぎ、と反省。)
ハ)「ふー」といった感じ。(参加者から爆笑。)
目線が遠い。先ほども、お酒を飲んだ後の感じがする、という意見がありましたが、はー、終わったーという感じ。
ホ)体は不安定。顔はしっかりしている。でも第一印象は、凛としている感じ。身体は弛緩しているが、顔には、何かひとつのことを思う気持ちが感じられる。
N)凛とした感じは、どこから?
ホ)顔は、凛としているところから。なにか意志がある感じ。何か思いがある感じ。
N)(手振り身振りで、困っていると・・・)
ト)手がとてもきれい。上流階級の御嬢さんという立場かな。
N)顔の凛とした感じと手先から、頼りなげな感じもする。背景と女性、そして、とても温かな日差しについて。関連して見ていただきました。
N)黒い帯について調べてみました。実は私も、この黒い帯とやさしい光との違いが、不思議だなーと思って調べてみたのですが、昔は、喪服に白い服を着ていた時代もあったそうです。関係あるかどうか、分かりませんが。また後で、関連して見ていただきたいと思います。
では、(7の作品を指して)こちらの女性を見てください。〈13:45〉
N)近寄ってみてください。
二)みなさんが大事な話し合いのために集まって会議している途中で、何か物音がして、目だけこちらを見ているような感じ。顔はこちらに向けられないけれど、物音に気付いた表情。
へ)やさしそうじゃない、にこやかでない。
ホ)どこかのきびしい王女様。
N)優しいというより、厳しさを感じる。どのあたりからでしょう?
ホ)目
N)目。顔はこちらに向けられないけど、目だけこちらを向いていますね。
イ)デッサンとして、左の耳は、下すぎる。肖像画にしては、顔のかきこみが少ない。どのような部屋なのかも分からない。いっそ、暗く塗ってもよかったのでは。
N)背景に何が見えますか?
ハ)木。窓の内側の雨戸のようなもの。
N)なぜ、そのように感じますか。
(沈黙)
N)今、木でできた戸ではないかという意見をいただきましたが、自分も同じように感じる人、という人はいませんか。
ホ)木の戸かどうかは分からないが、背景は壁ではないけど、重厚な感じの建物。
N)重厚な感じの背景。そして、先ほど、王女さまのような身分の高い人という話題が出ていましたが、どのあたりから?
ト)服にレースがついている。
N)どのあたりからレースだと思いますか?
ハ)首の辺り、薄くて繊細なところから。ふわっとしたもの。新品ではない。嫁入り道具。
N)年齢はどのぐらいでしょう?(前列のお母さんと娘さんが、お母さんと同じくらい?と会話している様子から)お母さんより、年を重ねている感じ?お母さんとは、また違う雰囲気だね。
イ)年齢とは関係ないけど、構図がより過ぎている。画家はそのことに気が付いたから、背景に明かりをつけるように調整したんじゃないか。格子戸のような背景にしてバランスを取ろうとしたのでは。
N)光を感じさせたいという画家の意図があったのでは。
ロ)6の明るい戸外で書かれた絵とくらべて、暗い室内で描かれているところからも、気の強い人という感じ。目の強さや口元から。
N)目元や口元から、意思の強さを感じる。どんな強さなのでしょう。
ハ)家を守っている。
ホ)何かを背負って頑張っている。
ロ)ある一家を任された女中頭など、責任ある立場の女性。
N)意思を感じる女性、(6と7を交互に手で示しながら)というつながりが出てきていますね。
では、話の途中かもしれませんが、こちらの3枚目8をご覧ください(13:54)
ヘ)全体として ぼんやりしている
N)関連しているところがあれば 気づいたことどんどん 話してください
リ)背景について。6番は明るいが、煩わしい印象をもった。 8番は描いてないところで、すっきりとした印象を持った。
N)
ホ)目が良くないのでよく分からないが、8の背景は真っ白だと思ったが、近づいてみるとネグリジェのような寛いだ衣装で、猫も寛いでいて、寝る前の寛いでいるような雰囲気ではない。不安な感じが白く広がっているように見えた。寝る前の感じだけど、不安が白く広がっているようだ。
N)女性の不安を、背景の様子は表している。
イ)フジタの初期の作品かな。未完成ぽい感じがする。試行錯誤しているはじめの頃の感じ。未完成っぽい。左の手の描き方がぎこちない。バックも荒いような感じ。
N)迷いがみえるということでしょうか。
イ)それもあるかもしれませんが、未完成のよう。
N)影が見えますか?ほんのりと影が見える。
ロ)影にも見えますが、輪郭線に沿ってオーラのようなものがある。夢みたいと言うのは、非現実的なの(オーラ)があるからだと思う。
N)それは、もっと詳しくお願いします。
ロ)女性の左側から、猫の
イ)あれ(オーラ)がなくても、絵として成り立つ。なぜ、あれがあるのか?
N)わざと、女性を引き立てるための、何かですね。
女性の表情に注目してみましょう。どんな表情でしょうか?
ト)悲しそうに感じる。
ハ)悲しいという気持ちもあるし、さみしい。遠くを見ている感じ。
N)
二)悲しみを癒すために、猫がいる。オーラが気になる。
N)オーラが気になりますよね。
イ)表情は、描く側からみるとくたびれてきた感じ。
ヌ) 8のモデルさん、心がない感じがある。意思がない、ただモデルをしている。
イ)6 7は女性の内面が出てきているけど、家に飾るなら左の8の絵がいい。じゃまにならない。
N)そろそろ時間になってしまった。みなさんから、たくさんの意見が聴けて、ありがたかったです。 どの女性に言葉をかけたいですか?
へ)6 の女性に、声をかけて、やさしく肩をだきたい。
8 不思議に思う
7 怒っている
イ) 学芸員の方 展示の仕方がうまい。右側の絵は3点の構図のバランスがいい。
N)三つの作品が、三角形になっている。
ロ)先ほどの話にも出ましたが、
右6の女性に声をかけたい 誰かによりそっていかなくては生きていけない
3人三様の女性の姿
ル)6 の女性は、喪に服している。亡くなった人を思いだしている姿。服装から寂しさを表している。
N)
イ)6彼女の感情を左下のオレンジの色彩で支えている。
N)話が尽きなくて。女性の目、視線や姿勢、着ているものについて話が出ました。
ル)8の途中の作品 完成品ではない。ぼやけた猫とか、輪郭をきっちりと描く画家なので、このようなタイプの表現は珍しい。
N)珍しい。分かりました。ありがとうございます。
はい、では今日は、ここでおわります。 14:10
学)たくさんお話が出て、よかったです。私も、もっと調べてみたいなと思いました。
今日のように、どうかな、こうかなと考えていただきたくて、この展示は、キャプションをつけていません。時間の許す限り、みてほしい。
アンケートに感想や意見をおよせください。
ふり返り
上坂さん自評
上)先週事前に、見たのがよかった。視線と姿勢に注目してみようと試みた。
・実際、ナビをすると、そこに集約できなかった。
・進め方としては、廣田さんの説明のあとで、言ったがどうだったか?
→「みる」「考える」「話す」「聴く」は、毎回確認したいこと。
・順をおってみようといったが、背景と人物を関連付けて言えてよかった。
・参加者が、どんどん発言してくれてよかった。
・声の大きさは確認したい。
・次の絵にどうつなげるか、迷いがあった。
・黒い帯の情報について、「情報を出していいか。」という参加者への問いかけは不要。
・「話しかけたい人いますか?」と問いはチャレンジだった。
・黒い帯の女性に「意思を感じる」うれしかった。その後、女性と意志とをつなげることができた。
・先週の予習の後に、三枚の絵に共通することとして、「ぱっと見で判断しないで」と、絵の中の女性は言っているようだが、そこまでいけなかった。
・フジタの女性の衣装に触れられたが、先週の予習の時のような話題にならず、掘り下げられなかった。
・背景など意見を出されたが、まとめることができなった。鑑賞者の意見でまとめられて、よかった。
・描かれた女性に人間味があるなど、意見が出てよかった。
・飾るなら8で、というところでいい時間となった。
・3点とも10分ちょっとだった。
・スムーズでおもしろかった。
・6から順に見る、とはじめ言っていなかったのでは。フジタの絵8に意見がとんだ時に、うまく返していた。複数みる時には、みる順番を説明した方がよい。
・挙手したときに、すぐに当てなくてもいい。ナビの発言が終わってから、当てていい。
・黒い帯のくだり、前置きはなくていい。情報を出したのはよかった。
・鑑賞者の疑問にナビが応えるのではなく、鑑賞者の中から「こうではないか」と意見が出てよかった。
・鑑賞者から、着物や背景のことが早い時点ででたが、あまりそれらを拾っていなかった。が、今回のキーワードが「視点」と「視線」と聞き、納得。終わりのところで、それらが合流していったのはよかった。
・はじめて鑑賞する人は、声が小さい方が多い。そこは、ナビが大きい声でパラフレイズすることで、全体で意見をシェアすることができると思う。
・まとめすぎないことで、意見が言いやすかったのかもしれない。取材が入っていたが、気にしていない様子だった。これも、みんなで見る良さだったかもしれない。
・アンケートをみると、「人の話が聴けてよかった」とある。いろんな人と一緒にみることのよさを感じてもらえた、いい時間だった。
・終わりのところで、「みなさんといっしょにみることができてよかった。」「一人で見るより多くのことが分かった」ということを、鑑賞者に伝える(思いを言語化する)ことで鑑賞者の中にある思いも言葉にしたくなる。オープンエンドで終わることから、正解はないけど深く考えることができて、満足感は得て帰ることができる。
・背景に視点を当てたのはよかった。背景で3点を比べることができた。
・6の絵で、背景がうるさいほどに描かれている。それを、彼女の心情と照らし合わせて考えることが できる。
・一体感が感じられた鑑賞会だった。新規の方が、たくさん話してくれた。
・子どもがもっと多かったら、子どもバージョンと二つに分けてもいいかもしれません。
・鑑賞者の発言。絵のどこを見て言っているのか、(声が小さかったので)返した方がいい。
・鑑賞者の発言の中の「キーワード」を拾いなおすことで、話が広がっていくと思う。絵のどこを見ていたか、視点の戻しがあるとよりよかった。
・3点を合わせて全体をみる時、発言者の言葉をつかって返していた(焦点をしぼっていた)のはよかった。「話しかけたい人」という質問はよかった。
・作者の意図をみつけるのが目的ではないが、発言の中でそれにかかわる言葉を拾うのは大切。
・(作品6,7,8は)シークエンスとしてよかった。
★改めて文字おこしをしてみての気づきとして、新規の方も他の人の発言を受けて発表していたことで、よい展開になっていた。みるみるのメンバーを含め、常連さんたちの発言で、つなげていただいた局面もたくさんありました。記録してくださった金谷さん、廣田さん、ここぞ!発言をしてくださった房野さん、Nさん、Oさん、ありがとうございました。
〇今回、私は参加していませんが、前回の実践後に予習をされたのが良かったように思います。その予習にも私は参加できていませんが・・・。
〇文字起こしを読んで、読むからこそ気付くのですが、「根拠を明らかにする」ことが、まだ弱いかなと思います。「どこからそう思うのか?」を確認することで、発言者とその他の参加者の視点を共有できます。ナビは、発言者の言っていることが比較的わかりやすい(絵をみるのに慣れているため)が、初回の参加者には、「どこを見て、そう考えたのか?」が「???」のことが多いと思うし、そこに齟齬が生じている可能性もあると思うので、面倒でも「どこから?」を忘れずに確認することが大事だと思う。根拠を発言者に語らせずに、ナビが語っている場面があるので、ナビが語るのではなく、鑑賞者から発信するようにしなくてはならないと思います。
〇なんにせよ、上手くなりたい!!参加者が満足して帰ることのできる鑑賞会にしたいと、予習会までして今回に臨んだ上坂会員の熱意が伝わる2回目の「みるみると見てみる?」になったと思います。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます