みるみる会員の金谷さんが参加していたACOPの2回目のレポートが届きました。ちょっと、旬は逃してますが、でも、VTS日本語訳「学力をのばす美術鑑賞」に併せて読んでいただければ、対話型鑑賞の核心が分かると思います。
では、どうぞ・・・。
みるみるの金谷です。11月30日に、京都造形芸術大学のACOP鑑賞会(第2回目)に参加してきました。その様子をレポートします。
今回も4つの作品をみることができました。1作品目は「メイヤー・シャピロの肖像」(ジョージ・シーガル/メトロポリタン美術館蔵)です。ナビゲーターはなんと、みるみるの会の研修会でもお世話になっている、アート・コミュニケーション研究センターの北野さんです。スクリーンに映し出されたのは、ごつごつした青い壁から、西洋人っぽいおじいさんの上半身が半分出ているような、(背面が)埋まっているような不思議な立体作品でした。人物の顔と体の前で硬く握られた両手は、人の肌の色に近いのですが、それ以外のジャケットやシャツはバックの壁と同じ青い色。
私は、この作品をみて最初に、悲しみを味わっている人のように思えました。作品全体を覆う青と、人物の表情と手の様子から悲しみを感じ、また背後の壁から出てくるのでもなく、また埋もれるのでもないような感じから、この場に留まり今を感じ、味わっているようにみえたのです。他のみなさんからは、「口元が微笑んでいるから安らかな感じがする」「地球を征服に来た、宇宙人ジョーンズみたい」「埋もれていたのを掘り起こされたみたい」等々、また、この人物が時間や空間を行き来しているようだ、というような意見も出されました。
自分の考えとは違う意見を聴き、それらをふまえたりふまえなかったりしながら、自分はどう思うのか、そしてその根拠はなにか?とまた自分に問いかけていたら、もう脳味噌が沸騰しそうでした。ナビから、「この人の職業は何だと思われますか?」というような投げかけがあったときも、「何か、この人先生っぽい感じがするんだけど、その根拠となるものを言葉に出来てないーぃ。くぅーっ。もっと、みるんだぁ」と、密かにもんどりうっておりました。
北野さんのナビは、軽快でテンポもよく、とても楽しいのですが、なるほど!という情報とともに、それをふまえてどう思いますか?というなかなかヘビーな問いかけが、ドカーンとくるので、やっぱり脳味噌が沸騰してしまいます。鑑賞って、奥深くて、おもしろくて、はまっていますが、時に自分の底の浅さまでみえてしまいますね。
家に帰ってから、埃をかぶっていたシーガルの画集を手に取りました。「メイヤー・シャピロの肖像」も載っていました。けれども、今までは意識してみていませんでした。でも、今は、私にとって特別な作品のひとつです。
2作品目は、「クリスティーナの世界」(アンドリュー・ワイエス/ニューヨーク近代美術館蔵)です。
この作品、じつは、みたことがあります。以前みた時の情報が、自分のなかでそわそわしていて、ちょっとへんな感じがしていました。集中的にみるところが、拡大されたりしているのに、素直にみれていない自分がいました(今思うと、すごくもったいない!)。その作品に関する情報は持ちながらも、ちょっと脇に置いといて、作品を素直にみたり、話を素直に聴いたりするのが、(今更ですが)やっぱり大事だなぁと思いました。これは、ナビをする時はもちろんですが、人とかかわるときにも自分の基盤にしたいと思っています。そのためにも、頭だけではなくて、からだで聴けるように、日々精進中です。
さて休憩時間に、お茶とお菓子をいただいて、リフレッシュ&糖分チャージ(脳味噌の栄養)!3作品目は「盲人の寓話」(ピーテル・ブリューゲル/カポディモンテ国立美術館)です。「あ、これなんかブリューゲルっぽい」というのが第一印象でした。そう思う自分に、「それで?」と突っ込む自分。我ながら惜しいなぁ、時代背景やどこの国の人なのか、もう少し知っていたらいいのにねぇ、と。でも、それがわからずとも、「この絵の中で、いったい何が起こっているの?」と、ぐいぐい惹きつけられる作品です。「巡礼中?」「もしかして、こけてるの?なんで?」と、妄想や疑問が膨らんでいきます。もっとみてわかりたい、よくみたい、あの服装は何を表しているの?と、目が貪欲にといっていいほどこの作品をみたがりました。他の方々から「これは風刺画では」という意見もあり、「私もそう思う!」とうなずきながら、この作品は何を表しているの?何を伝えようとしているの?と、より作品に迫っていく面白さを体感することができました!
最後の4作品目はアニメーションの1場面「シンプソンズ」(マット・グローニング)です。スクリーンにぱっと、このアニメの静止画像(TV画面をカメラで写した感じの画像)が映し出されたとき、正直「まじっ!?」と。まさか、アニメがくるとは思いませんでしたから。
シンプソン一家が、部屋の中でテレビらしきものを見ている画像なのですが、どことなく不気味なのです。一見家族でソファに座っているようにみえるけれど、ソファは無いし(空気イス状態)、テレビをただ見ているというよりも、超ガン見!・・・失礼しました。あの飛び出した目で凝視しているし、家族の間に会話やあたたかさなんて一切感じられない!そして部屋には窓も無し!なにコレ!?
先ほどの3作品目は、目の不自由な方々が描かれていたけれど、このシンプソンズ、目はやたら大きいが、いったい何を見ているのやら・・・。対話をするなかで、情報の受け手としての自分たちの在り方にまで話が進んでいきました。一人でさらっと見ていたら、こんなところまで考えが及ばないな、と改めてそう思いました。そして、対話型鑑賞は守備範囲が広いなぁと思うとともに、よくこの素材(画像)をみつけてこられたなぁと、頭が下がる思いがしました。
今回は、言葉になりそうで、ならなくて、発言を聴いて「そう!うちも、そう云いたかったんさ」と、激しくうなずいてしまうことも、しばしば。ふと、この第2回鑑賞会を振り返ると、思っているのに言えなかったこともたくさんあったなぁと。そして、その裏には「なんか、いいこと言いたーい!」「かっこいいとこ、見せたーい!」なんて、下心があったのでは(と、自分で書きながら恥ずかしくなっています)。だからこそ、頭も体もかたくなって、素直にみたり、聴いたり、話したり、考えたりできないところがあったのかもしれません。
次回(12月14日)はいよいよ第3回目、ラストACOP2014です。頭と体とこころをほぐして、作品はもちろん、ナビをはじめとする学生のみなさん、一緒に鑑賞するみなさんとの出会いを楽しみたいです。どうぞよろしくお願いします。
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