土曜日に浜田市世界こども美術館で行った2回の対話型鑑賞会のうち、澄川さんが行ったナビの文字起こしとその後2回の実践を振り返ったMTGのレポートが届いたのでお届けします。
まずは、文字起こしから・・・
<澄川ナビ>
6月20日(土)
作品:「旅」(俵典子)
参加者 一般男性2名 女性2名 みるみる会員4名
(N:ナビゲーター 参加:参加者)
今回対象とした作品は抽象的な要素の高い作品である。一見すると多くは青のみで描かれ色のみの要素ばかりと捉えられるが、ナビゲーター本人が作品と対峙した時のように詳細を見ていく中で参加者はそこに「何か」を見出していくのではないか、という思いから、本作品を選定した。事後の振り返りでもあったが、「抽象であればあるほど、(読み取り、解釈の)自由度が増す」という意見のように、参加者は「自由に」述べている。この「自由度」をどうとらえ、どのように着地点を設定するのかはナビゲーションの力量だと感じた。ともすると、「見立て」に終わってしまわないかという心配もあったが、参加者に支えられた時間となった。まあ、正直、難しかったな~・・・。
文字起こし
N:見てはじめに思ったことは?
参:この絵を抽象画としてみた場合に、作者はすごく素直な性格なのではないかと思った。
N:素直な性格ではないかと・・・。それをどこからそう思ったのか?
参:ここに顔にあるから・・・。描きたいものを描いているような。
N:ここ(画面を示して)の部分か?横顔。そう言われたことで、そんな風に見えてしまった。
参:単純に空かなと思った。青の色がいろいろあって、白い部分が雲で、まんまるいのが月みたいで、下の黒い部分が島だと思う。
参:夏だと思う。雲で、島でなくてヨットかな。雲があって月があって変だなと思うが、でも、青空の、昼間のように見えるけど、この辺りには夜だと言われれば夜だし・・・。
N:今、夏っぽいと言われました。そこから、雲があってヨットがあって、だけど月があって・・・。と、いろんな要素を探し出していただいた。他には?
参:よく抽象画を見ると、具体的な何かに必ず結びつけているのではないかと思う事がある。色あい、構図とかバランスとか非常に気をつけて描いているのではないかと思う。破天荒な部分はなく、非常に落ち着いた印象を受ける。安定感というか・・・。
N:落ち着いて雰囲気が、全体からする?
参:ちょっと違うんだけど、白をどこに置くのかというのがポイントではないかと思う。緑がこういうところに(青と白の間の色を指して)緑をおくこともポイントかと。ブルーと白の間に緑がかったブルーを持ってくることで、それを消してしまう・・・
N:消してしまうというと?
参:青色がはっきりしすぎているので「白!」「青!」というのではないかんじを生む。それから、日本人は、青色が一番好き。僕は、こういう絵、青い絵を見るのが好きなんですよ。藍色とか。
N:藍色、日本古来の色ですね。それを聞かれて、大きくうなずかれましたけど、どうですか?
参:自分も一番最初に見たときに、素敵な青色でハッと思った。この色いいなと最初に思った。最終的にはじっくり色々見てこの夏のシーズンに家にあったらいいなとおもった。買うんだったらこの絵を買うなと。
参:色がきれい、空だな、そしたらなんか海かな、夜空かな、真ん中のところの質感が違うところが道かなと。真ん中のところの、薄い・・というか画材の地の色が出ているような気がするけどピンクっぽいような。すごい想像を掻き立てられる楽しい絵。
N:この絵は、多くは青が使われている絵で、その青から夏の雰囲気がし、海と言われて方もおられた。そんな風に「青」っていう色からいろんなことをイメージされたと思う。では、皆さんがもっている「青」っていうイメージは、それだけか?
参:信号機の色。すすめ。
参:自分も、貰えるのならこれが欲しい。青を見ると心が落ち着く感じがする。落ち着く上に、空見ると落ち着くし、白いところが雲に見えて、空以外見えていないから、ごろんと地面に寝転がって見上げた感じ・・・ということは寝っ転がっているから落ち着く。そういう平穏な感じがするとともに、この白が雲だとしたら画面からはみ出ているので、空がずっと続いているような、果てなく続いている広さも感じる。
N:この白い色が雲だとすると、空は広がっているので、そんな描かれ方をしている。
空の広さを見せているんじゃないか。見上げた空だという発言があったが、寝転がって見上げていることを想像すると落ち着いた感じがするな、ということだった。
参:ブルーも白も非常にきれい。それに対して額縁が汚いというか。絵も同じようにくすんでいたのを洗ったのではないか。額と絵に違和感がある。
参:ステンレスの額だといいんじゃないか。
N:今、額のことに触れていただきましたけど、もしかすると私たち鑑賞者は額も含めて絵として見ている、そうなると額そのものも意味のあるものだと捉えるのかもしれない。
参:白い雲に見えると言っている部分は雪山に見えて、額縁は木でできているから、雪山の隣に見える茶色は木にも見える。そう見るとこの額縁は違和感がない。逆に言うとステンレスだと、山って思うかな?自然だなと思った。
N:そうなると、額縁の色と中の作品を関連させながら対象を見ているというところ?
参:落ち着くのは何かとみていると、この線の延長が画面の角に向かっていないからではないか。すごく計算されている。線が画面の角に向かっていると窮屈な印象になる。だから、落ち着いた感じ。
N:そこが「破天荒な感じを受けない」抽象画につながると?そこが、今言われた線の置き方というところに通じるのかもしれないということか。
参:同じことで言うと、みんな青なんだが、広い面積で同じ青なところがあまりない。変化し続けているような。ほとんど青なんだけど、全部同じ色でベタなところはない。心情って一定じゃないから、そんなところと関係があるんじゃないか。うすいところや濃いところ、厚く塗り重ねているところがある。そういうところが見ていて飽きないから、買うんだったらコレ、になる。
N:一瞬見ると、青という強烈な印象をもつが、じっくり見ていくと今言われたように薄い部分もあれば濃く塗り重ねら部分もあり、決して単調ではない塗り方がしてある。
参:抽象的な要素が強く、欲しいと言われましたけど、これは画面を回転させると4度味わえる作品。もともとこっちを下に考えて描いているのか。
参:もしかしたら描いているうちに、こっちを下にしようと思ったのでは。
N:描き手の立場に立っても見ていただいた。他には?
参:真ん中の垂れている部分が好きで、すごく懐かしさみたいなのを感じる。でも、人間って瀧やしずくが落ちるとか、共通にもっている「いいね」があって、すっと落ちる感じがすごく惹かれる。画面を横にしたら、それは消えちゃうから、自分はこの作品の方向はこれだと思う。
N:今この真ん中の部分から「懐かしさ」を感じると言われたが、滝の流れる感じとか少し自然に置き換えてイメージしていただいたかと思う。今までの皆さんの話を聞いていると確かに自然に置き換えながら見ておられると思った。他には?
参:「旅」というタイトルがついている。抽象的なタイトルだなと。タイトルから感挙げると良くわからなくなる。(見る時に)あえて「旅」と結びつけて考えてしまう。それはそういうところに描いた人の策略にはまっているような。
N:実は私もその策略にはまってしまった。タイトルから、ここに道があるなとか、これは山で、向こうに向かって自分は旅をしている。それは、地図を見るたびじゃなく見えないものに向かっていく旅というものに例えているのではないかと思った。皆さんどうか?
参:何年か前にそういう文学的なタイトルがはやったことはある。旅というとそれらしいものを想像するが、今は文学を抜きにして
参:抽象的な無機質的なタイトルがついていたとして、それがタイトルに誘導されることはあるとしても、本当に抽象なのか、実は具象ではないかと思って見ていた。抽象と具象の境は何だろうかなど思っていた。人間は「見立てる動物」なので、何か自分の心の中にあるものに見立てて投影させてしまっているところがあるのではないか。創意無意味でもいろんなものを受け入れてくれると思う。特にその日本人の好きな青であり、白であったりという色によって、心情面に訴えるものがある。タイトルの旅、旅って聞くだけで頭の中に妄想が広がる。いろんな意味でマッチングしているのでは。
N:自分もこの作品と対峙していると、いろんなものに見えてきた。道にも見えるし山にも見える。私は月とここにも人の顔があるなと思ったりしていた。おそらく自分の中にいろんなフィルターがあってそのフィルターを通して作品を見ているんだという自分に気づいた。だからこの作品を他の方々が見た時にどんなことを感じるのか非常に興味があった。今日はいろんな話を聞くことができて良かった。
振り返りのレポートは、日を改めて・・・。
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