ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

光中で授業を参観した大学生の感想をお届けします

2014-06-08 09:16:20 | 対話型鑑賞
光中で授業を参観した大学生の感想をお届けします


生徒のワークシートは月曜日に届くので、授業を参観してくれた島根大学の学生さんの感想を先行して載せたいと思います。

学生A)
 今回のような鑑賞は初めてでした。作者の名前やタイトルを明かさずに、絵に描かれていることからいろいろ連想・推測していてとても楽しかったです。ほんの小さな手がかりから使っている人の年齢や性別まで考えることができていて、生徒たちもとても積極的に鑑賞を行っていると感じました。今までの、私の中での鑑賞のイメージは、作者のこと、絵についての説明を聞いて感想を述べるという受動的なものでした。今回のように、絵について自分の意見を述べる授業はとても新しく楽しかったです。

学生B)
 生徒たちは今まで漠然と見てきたり、体験したりしていたものを言葉で表すことで、自分なりの見方、考え方を実感していたと思う。また、友だちの意見を聞くことで自分の考え方との類似点や相違点をみつけているように見えた。しかし、意見を言う人が限られているように見えたので、生徒全員が自分の考えを言葉に出して発表するにはどうしたら良いのかと疑問に思った。中学生の発達段階だからこそ、相手に自分の意見を伝え、受け入れてもらう体験は人間関係の形成に効果的に働くのではないかと思った。

学生C)
 絵のタイトルを教えない(伝えない)で始めることで、子どもたちに自由な想像を可能にしていた。また、子どもたちの意見は肯定的に受けとめ、「こんな考えや思ったことでもいいんだ。」と気軽に対話に参加できたのではないか。しかし、発言していた子どもは限られていたことから、1人1人に最初に意見を言う機会を与えても良いのではないかと思った。自分の考えを口に出すことで「あ!自分はこんなことを考えていたのか。」というメタ認知ができたり、何か伝えようと努力したりするのではないか。

学生D)
 対話型鑑賞のイメージが少し変わりました。私は大学生(小学校3年生設定)で対話型鑑賞を行ったことがあります。その際は空想的で様々なモチーフが入っている絵画を選択しました。一つのテーマだと子どもたちの積極的な発言が期待しにくいと思ったからです。しかし、今回の授業では、イスを中心に、背景などをふまえて絵を読み解くという内容で、私の中では、対話がふくらむの?という気持ちが少しありました。自分の中では難しそうな題材だと思ったイスから子どもたちが思い思いにイメージをふくらませている様子に、私も興奮してしまいました。

 学生さんはいずれも女性で初等教育学科に所属しています。4年生なので今夏小学校の教員採用試験緒を受験予定だそうです。Dさんは卒論に図工・美術における様々な鑑賞についての研究をテーマにされているそうです。今回の授業参観もDさんが対話型鑑賞の実際を見たいということから実現しました。
私は15年前に島根大学大学院に内留しており、その際川路教官には大変お世話になり、また、その時の私の修論テーマも「美術教育における鑑賞教育」であり、その後も継続して「鑑賞教育」の研究と実践を続けていることをご存じだったので、ここ3年くらい年に1回は先生の担当する学生さんに授業を公開しています。私としては、若い先生の卵たちに「対話型鑑賞」の素晴らしさを実感してもらって、現場で実践してほしいと思うからです。今回4名の学生さんが参観してくれ、その後の協議でも活発な意見交換ができたので、ぜひ現場に立たれたときには実践してほしいと思いました。日文から出された副読本も差し上げました。
 特にDさんは卒論テーマにされているだけあって、しっかり勉強されていてするどい質問も出ました。今回の記述にも「作品選び」に関することが挙げられていますが、本当に対話型鑑賞を教育現場で行うときの「作品選び」は重要だと思います。限られた授業時数の中で鑑賞ばかりを行うわけにはいかない実情もあるので、3か年間の経年計画も立て実践していくことが重要だと私は考えています。光中では残念ながら3年生の1年間しか担当できないので、1年間で3年分の鑑賞を実践できればと考えています。そういう意味でも今回の作品は「入門編」でしたが、さすが3年生です。一気に読み取りが深まりました。生徒の読み取りを踏まえた感想は次回にUPします。
 また、発言に関する指摘(限られた生徒が発言していた)がありますが、生徒は全員で17名です。今回の対話で発言しなかったのは男女それぞれ1名でした。15名の生徒は1回以上発言を行ったので、私としては許容範囲かと感じます。以前の勤務校では40名を対象に実践し、発言者は10名程度のこともありましたが、発言しない生徒の中でも「内なる対話」は行われているので、必ずしも全員発言しなくてはならないものでもないと考えるからです。しかし、これも学齢によって異なると思います。幼稚園や小学校低学年では発言場面を均等に与える配慮は必要かと思います。しかし、小学校高学年から中学生剘では、ケースバイケースではないかなと感じています。まあ、そのあたりについては、また機会をとらえてお伝えできればと思います。いずれにしても、授業を公開することで、先生の卵さんたちになにがしかの刺激を与えることができたとしたら、光栄です。


 今回の鑑賞作品 筆記サンプル「旅芸人の一座」ピカソ
         対話型鑑賞作品「椅子」ゴッホ
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光中学校で2回目の実践を行いました

2014-06-07 07:50:53 | 対話型鑑賞
光中学校で2回目の実践を行いました


光中学校で2回目の実践を6月6日金曜日の午後に行いました。
今回の実践では、VTSで行われる「筆記サンプル」も取りました。

また、島根大学教育学部初等教育の4名の学生さんも授業参観しました。指導教官の川路先生は私が島根大学大学院に内留した時に大変お世話になった先生で、その先生から対話型鑑賞の授業を参観させてほしいというオファーをここ数年来受けてのことです。今回は卒論に「鑑賞」をテーマにする学生さんもいるということで、授業後の協議にも熱が入りました。
実践での様子やその後の協議についてはおってレポートしますので、まずは授業風景をご覧ください。
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「日本の中のはまだの美術」展で対話型鑑賞のレポートが届きました

2014-06-05 20:26:40 | 対話型鑑賞
「日本の中のはまだの美術」展で対話型鑑賞のレポートが届きました!!


はまだの美術   2014.5.31   浜田市世界こども美術館14時  コレクション室
 観客  みるみるの会員6名 学芸員 他9名  計およそ16名
 ナビゲーター 春日美由紀

まず、ナビから開会のあいさつの後、対話による鑑賞のルールが以下3点示された。
①作品をじっくり見ること。
②感じたことや考えたことを述べる際には、挙手をして指名された時であること。
③人の話をしっかり聞くこと。
皆で語りながら鑑賞する際に守ってほしいルールが明快に伝えられた後、我々は、しばらく作品をじっくりと見入った。ナビから挙手を求められ、一瞬の間もあったが、次々に手が挙がり、浴衣を着た二人の女性の関係や、背景の楓と空高く見える花火を根拠に夏の終わりの季節を描いたのではないかという推論が展開された。二人の女性の視線は交わらず、また、背後で打ち挙げられている花火に関心があるようでもない。二人とも足にはペディキュアが施されているが、左の女性のものは色が濃く、右の女性の爪は肌の色に近い。左の女性の鼻緒は紅く、施された爪の色からも推測して今どきの若い女性ではないか。右の女性は姿勢よく落ち着いた雰囲気で、年上に見える。姉妹か、母と娘か。同級生同士で恋の話に興じた後か。そんな二人の様子について語られた後、左側の女性の後ろの人影に話題が移った。その背後の謎の人物は、うつむいていて男性か女性か定かでないが、「この三人の関係について、どう考えられますか。」とナビが投げかけた途端、挙手が相次いだ。浴衣の女性二人は母と娘で、背後の人物は娘のボーイフレンドで、照れくさくてうつむいているのでは。あるいは無理に連れてこられ、ふてくされているのでは。その後、三人の関係性を推察する話から一転、左端の人物は浴衣の女性たちとは全く無関係の存在で「構図としてバランスをとるために描かれた。」という意見が出た。ついに、前半の話題から季節は盆過ぎだという話も顧みて・・・もしかしたら靈なのではないか。そういえば足も無い!と連続して幽霊説が三者三様に述べられた。「足が無いので幽霊ではないか。」と私たちに見えない足を根拠に述べられたとき、ナビは「最初に足の無い幽霊を描いたのは応挙ですよね。」というコメントを添え、幽霊説を意見のひとつとして受容の姿勢を示した。そのうち、「実は足は左側に描かれている。」という発言によって、背景の色に溶け込んだ色ではあるが、しっかりと二本、描かれているのが見えた。足の存在に気付いたギャラリー一同ではあったが、それでも幽霊説は続き、心霊写真のように写りこんだ地縛霊のようにそこに在るのではないか!という意見も出て、左奥の謎の人物は幻の存在となっていた。私自身も、うつむく左奥の人物と手前の浴衣姿の二人の女性の雰囲気は、随分異なるように感じて見ていた。キャプションに「遠い花火」とあるので、この大きな画面のメインは空に描かれている花火である、という意見も出た。ナビが「遠い花火、という題名ですね。遠いというのは、距離でしょうか、時間でしょうか。」と投げかけた。私は、遠いのは時間か距離かというナビの問いをきっかけに、「時間だ。」と感じた。それまでは謎ばかりだったのが、ナビの問いかけによって、思考が整理され、一つの推論に至ったような心地よさを感じた。自分の推論は、幽霊などの幻ではないかという他の人たちの話も聞いているうちに、生まれた発想でもある。左奥でうつむく謎の人物について「実はあまり意味のない存在」「偶然映り込んだ靈」という解釈が述べられたとき、ナビは「描かれている人物ですので、何か描かれる理由があるような存在ですよね。」と念を押し、やんわりと軌道修正を試みた。「写真であれば写りこむこともあるかもしれませんが、わざわざ描かれている存在です。」と描かれていることの意味を読み取るように促した。何度かナビは「描かれている存在には、画家の何かしらの意図がある。そこを鑑賞者は読み取ろう。」という明快な意思を示したが、受容の姿勢は自然体だ。鑑賞者たちは改めて、幽霊でもなく、無意味な存在でもなく、いったいどんな意図があって描かれているのだろうと、自然に促され、考え始めていた。背後の男の子の背中に左側の浴衣の女の子はもたれかかっているようだ、という意見もあり、幽霊だった人物は再び生き返った。「浴衣の女性二人と、左奥でうつむく人は特に関連性はないが、実は周囲には彼ら以外にも多くの人物がいて、そのことを示唆するために描かれているのではないか。」という意見も出た。私はその意見を聞いて、考えたことを述べてみた。後から考えると、前半で「時間だ。」とひらめいた時に述べた自分の推論が、鮮やかな色彩で描かれているものほど過去にさかのぼるのではないか、という主旨で述べようとしていたというところで、点と点が線になった発言だったといえる。自分の意見に賛同者がいたかどうかは分からないが、およそ40分間、一つの作品を見ながら話を聞くうちに、ナビの交通整理によって思考が整理され、次第に自分の推論が明快になっていったことが心地よく感じられた。
ナビによる鑑賞ツアーが終了した後、今回の企画展示を担当した学芸員の神さんから、作品についての情報を伺った。なんとなく「タネ明かし」的なものがほしいというムードもあった。オープンエンドではあるものの、情報があったら、ちょっと得した気分になるかもしれないからだ。神さんからは、描いた画家・橋本弘安さんは家族をモデルに描かれることが多いということから、背後の謎の人物は、もしかしたら…というお話だった。「それ以外の種明かしはありません。」と神さんは笑った。モデルは家族かもしれないが、描かれている世界が家族を題材にしているとは限らない。作品の情報を知ったからといって作品を鑑賞したとは限らないという意味で、みるみるのスタンスを、神さんも理解したうえで発言されたのかな、と感じた。

レポーター 上坂 美礼(みるみる会員)
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「日本の中のはまだの美術」展で対話型鑑賞を実践しました

2014-06-01 22:09:25 | 対話型鑑賞
「日本の中のはまだの美術」展で対話型鑑賞を実践しました


5月31日(土)14:00~
浜田市世界こども美術館で企画展「日本の中のはまだの美術」展に併せて対話型鑑賞の実践を行いました。詳細なレポートは上坂会員から寄せられたらUPしたいと思います。

画像をみながら当日の様子を垣間見てください。

作品は橋本弘安氏の「遠い花火」と言う作品です。キャプションも隠さず、対話の参考にもしました。様々な見解が語られ、40分間参加者が語りっぱなしでした。

参加者の中に初参加の方がおられたので終了後に感想を聞いたところ「とても楽しかった。こんな風に作品をみてもいいんだ。と言うことが分かって、それなら楽しくこれからも絵がみられると思いました。また、スケジュールが合えば来ます。」と言って帰って行かれました。私よりちょっと先輩かな?と思う女性の方でした。

一夜明けた日本海は夏を思わせる様相でした。熱中症で病院に搬送された人が300名も出たという、熱い一日になりました。

明日から6月第1週が始まります。また、元気に働きたいと思います。週末は光中に出前授業です!!
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