今月はお盆に入って少し暑さがゆるんだと思っていたら、明けてこの猛暑に閉口している。工房で冷房をつけていても頭がボーッとしてくるほどだ。
暑いといっても山野や水辺の生物の世界の暦ではすでに秋のシーズンが始まっている。15日、お盆の中日。ひさびさに千葉県習志野市にある『谷津干潟国設鳥獣保護区』に野鳥観察に行ってきた。以前は、月に2-3回、集中的に通っていた時期があったが、最近は仕事(制作)の関係で一年に数回のペースとなってしまった。この干潟の今の季節はシベリヤやアラスカなどの原野で繁殖した旅鳥のシギ・チドリが多数立ち寄っていく時期である。これから秋冬期に向かい越冬地である東南アジアやオセアニアに渡っていく途中、餌となるゴカイやカニなどの多い日本の干潟で十分栄養補給をしていくのである。
干潟での野鳥観察は『潮』の干満があるため干潮と満潮の時間を事前に調べて行かなければならない…と、書くと海釣りを連想する人もいるだろう。なぜかと言うと、満潮時にあたってしまうと鳥が留まることができず他の場所へ飛び去ってしまうし、逆に完全に干潮になれば広い干潟に鳥たちが散らばってしまって、距離が遠かったりする。その、中間を狙うのがベテラン・バーダーなのだ。この日は『中潮』。干潮が15:19で、満潮は21:26。と、いうことは午後遅くからゆったりと満ちてくるというところである。したがって、いつもよりゆっくりめに家を出た。
お昼過ぎに干潟の周回路入り口に到着。ほぼ満潮状態で干潟には水の中に立っていられる足の長いサギ類の姿が目につく。日陰のあるハイドのベンチで持ってきた弁当を食べながら望遠鏡をのぞいているうちに、東側に干潟が現れてきて、1時半ごろ東京湾方面からシギ・チドリの混群が飛来した。白黒のコントラストが眩しいチドリ科のダイゼン、同じくチドリ科で後頸から胸のオレンジが美しいメダイチドリ、そしてチョコマカと動いているのはシギ科のキョウジョシギとトウネンだ。ここでは特別珍しい野鳥というわけではないのだが、この季節と4-5月の春の渡りの時期にしかお目にかかれないので、じっくりと望遠鏡をかまえて観察しようとした…その時、視界に猛禽類の姿が横切った。と、同時に30羽ほどのダイゼンが飛び去ってしまう。あわてて双眼鏡を向けるとハヤブサである。干潟上を滑翔するように低く飛ぶと、顔面の特長的な模様がはっきりと解るほど近くを飛んでサービスしてくれた。まさに格好の良い戦闘機といった勇士であった。
さらに歩いて観察センター横の淡水池を除くがサギ類とカルガモ、カイツブリが見られたのみ。南側の四阿にもどると定位置に鳥友のK氏が来ている。挨拶を交わして鳥情報を交換したり、干潟の最近のようすを聴いているとあっという間に時間が過ぎ、東京湾から水路を通って、干潟の潮がグングンと満ち始めた。分散していたダイゼンやキアシシギがひっくり返ったボートのお立ち台に集まってくる。そろそろ今日の観察も終盤となる。ここから元来た周回路を右回りに戻り夕映えの中の野鳥たちを観察しつつ、心地よい潮風の吹く中、帰路に着いた。この日観察できた野鳥はスズメやカラスを入れて26種だった。画像はトップが夕映えの風景の中、水辺で休息するシギ・チドリ類。下が左から望遠鏡と谷津干潟風景。満潮時、干潟に集まってきたキアシシギ、水路周辺に群れるサギ類、夕映えの空。