先月26日。前回ブログで投稿した鴨川市の私設美術館『房総郷土美術館』での版画個展の翌日、せっかく家から車で3時間以上もかけて来たのだから美術館周辺の四方木(よもぎ)の集落のあたりを連れ合いと2人で歩いてみようということになった。昨晩は美術館からさらに山間にある鉱泉の温泉宿「白岩館」に宿泊。なかなか山深い中にある宿で、月夜と山桜咲く露天風呂を堪能し、夕食の猪鍋に舌鼓を打った。
カラスがカァ~で夜が明けて朝食とチェックアウトを済ませ歩くコースの確認などをしてから、10時過ぎゆっくり目に宿を出発した。昨夜の露天風呂がとても気持ち良かったのでもう一度入りたいと思ったが、さすがに朝風呂は我慢した。林道を車で10分ほど南下すると「四方木ふれあい館」という近隣の人々の集会所兼、観光案内所の駐車場に到着。駐車はフリーなのでザックの荷造りをしてからここに車を置き今日のコースとなる「不動の滝コース」に向けて出発した。このあたりは昔から「房総半島の秘境」などと言われあまりハイカーが歩いていない地域なのである。車道から林道に入るとウグイスが囀り、満開のヤマザクラや春植物の咲くのどかな山村風景が目前に広がっている。最近観察にはまっているコケ植物も多い。蝶々の仲間のテングチョウが1頭飛んだ。そういえば蝶々好きの人には解ると思うがここは清澄山系の一部であり、この周辺は日本で奈良県の一部とここにのみ生息すると言われるルーミスシジミという小さな蝶々で有名な場所でもある。集落が切れると薄暗い山林に入る。ふと右手の斜面林を見ると林床に白っぽい花がたくさん咲いているのが見えた。カメラに収めようと近づくとミツマタの花だった。樹皮を手漉き和紙の原料として使う低木だが、こんなにまとまってたくさん花が咲いているのを観たのは初めてだった。白っぽい黄色のなんとも繊細な色彩の花である(画像参照)。
このミツマタの斜面からしばらく進むと不動堂に到着。お不動様に手を合わせてから小休止。ここまで来て連れ合いはコケ観察に夢中になり遅れ気味な僕にあきれてドンドン先に進んで行ってしまった。「不動の滝自然観察園」という看板があり滝への誘導標識も付いていた。下方にある沢からは滝の音が聴こえてくる。今日のメインスポットの「不動の滝」はもうすぐである。一気に下り坂を下りると木製ベンチのある休憩所で連れ合いが休んでいた。その先には不動の滝の「雄滝」がザァーッ、ザァーッ、と音をたてて水を落としている。まだ3月で水量は少ない。落差9m、幅5m、とさほど大きくはないがなかなか雰囲気の良い滝だった。滝壺の水がまた美しく深いエメラルドグリーンをしていた。この雄滝の右岸にもう1つ別の水流が落下していて、これが「雌滝」である。落差6m、幅2~3mとさらに小さい滝である。この滝を見ながら持参したコンロで湯を沸かしコーヒー休憩とした。こうした環境で飲むコーヒーはまた格別である。滝の近くまで降りてしばらく写真を撮影したり動画を撮影したりしてのんびりしてからこの先のコースを地図で確認する。
滝から先はちょっとした冒険が待っていた。沢筋の周囲に山道は付いていないので「沢歩き」をすることととなった。まだ水量が少ないということも幸いして頭を出している川石をピョンピョンと飛んで渡ったり、石のない場所では少しジャブジャブと水に入って歩いたり、沢歩きというよりは気分的には「水遊び」といったところである。春まだ早く少しひんやりとした深い谷あいの沢で子供の頃の水遊びをひさびさに想い出していた。しばらく進んで振り返ると周囲の森林からこぼれる午後の木漏れ日に照らし出された沢床の黄色っぽい滑石が美しく浮かび上がって見えた。贅沢な時間である。沢の奥からはヤマアカガエルの大合唱が響いていた。
コンクリートの小橋の下の「延命水」というポイントに到着、ちょっとした沢の冒険もここで終了。ここからは山の斜面につけられた山道を登って行く。再びテングチョウが飛ぶ。ぬかった道のあちこちにホンシュウジカの足跡がついていた。林の中からはモリアオガエルの「カララ、カララ…コロコロ」という声が聞こえてくる。野鳥はウグイスの外、森林性のカラ類やホオジロの囀りぐらい、越冬の冬鳥はもう移動しているし夏鳥の渡来にはまだ早いので中途半端な時期である。さらにコースを進むと集落の跡地に出た。廃屋となった住居や錆びついた農機具がいくつも残されていて少し寂しい気分となる。村はずれにある「見星院・けんせいいん」という素敵な名前の小さな寺院に到着。ここも雨戸が全てしまっていて住職がいる気配はない。敷地内に残された石仏たちが静かに迎えてくれた。すぐ隣には産土様を祀る「熊野神社」が苔むす石段の上に建っていた。門前には大人が3人以上かかえられる槇の巨木があり、この廃村となってしまった集落の歴史の古さを物語っていた。
この先にはさらに廃屋やかつて使われていた畑の跡地があって、その先からは杉林の山をジグザグに下って行く。すぐにポッカリと開けた空間に出て丈夫そうなコンクリートの橋を渡ると個展を開いている私設美術館の裏手に出た。この日は休館日。ここから里の集落を抜けると出発時に車を止めておいた「四方木ふれあい館」に到る。スマホを見ると14:43。
かなりゆっくり歩いて4時間半ほどのウォーキング。途中、生物観察などしなければ半分ぐらいの時間だろう。早春の好天の日。房総半島に残された秘境歩きを楽しめたのでした。心地よい良い疲れの中、房総の海辺の長い距離の道に帰路を取って帰宅した。
画像はトップが房総の名瀑「不動の滝・雄滝」、下が向かって左から「不動の滝・雌滝、雄滝」、四方木の山村風景、斜面林に咲いたミツマタの群落、美しいコケ植物、沢の滑石、沢の風景、壊れた木橋、見星院の石仏、熊野神社、槇の巨木、廃屋、切り株に生えたコケ植物。
カラスがカァ~で夜が明けて朝食とチェックアウトを済ませ歩くコースの確認などをしてから、10時過ぎゆっくり目に宿を出発した。昨夜の露天風呂がとても気持ち良かったのでもう一度入りたいと思ったが、さすがに朝風呂は我慢した。林道を車で10分ほど南下すると「四方木ふれあい館」という近隣の人々の集会所兼、観光案内所の駐車場に到着。駐車はフリーなのでザックの荷造りをしてからここに車を置き今日のコースとなる「不動の滝コース」に向けて出発した。このあたりは昔から「房総半島の秘境」などと言われあまりハイカーが歩いていない地域なのである。車道から林道に入るとウグイスが囀り、満開のヤマザクラや春植物の咲くのどかな山村風景が目前に広がっている。最近観察にはまっているコケ植物も多い。蝶々の仲間のテングチョウが1頭飛んだ。そういえば蝶々好きの人には解ると思うがここは清澄山系の一部であり、この周辺は日本で奈良県の一部とここにのみ生息すると言われるルーミスシジミという小さな蝶々で有名な場所でもある。集落が切れると薄暗い山林に入る。ふと右手の斜面林を見ると林床に白っぽい花がたくさん咲いているのが見えた。カメラに収めようと近づくとミツマタの花だった。樹皮を手漉き和紙の原料として使う低木だが、こんなにまとまってたくさん花が咲いているのを観たのは初めてだった。白っぽい黄色のなんとも繊細な色彩の花である(画像参照)。
このミツマタの斜面からしばらく進むと不動堂に到着。お不動様に手を合わせてから小休止。ここまで来て連れ合いはコケ観察に夢中になり遅れ気味な僕にあきれてドンドン先に進んで行ってしまった。「不動の滝自然観察園」という看板があり滝への誘導標識も付いていた。下方にある沢からは滝の音が聴こえてくる。今日のメインスポットの「不動の滝」はもうすぐである。一気に下り坂を下りると木製ベンチのある休憩所で連れ合いが休んでいた。その先には不動の滝の「雄滝」がザァーッ、ザァーッ、と音をたてて水を落としている。まだ3月で水量は少ない。落差9m、幅5m、とさほど大きくはないがなかなか雰囲気の良い滝だった。滝壺の水がまた美しく深いエメラルドグリーンをしていた。この雄滝の右岸にもう1つ別の水流が落下していて、これが「雌滝」である。落差6m、幅2~3mとさらに小さい滝である。この滝を見ながら持参したコンロで湯を沸かしコーヒー休憩とした。こうした環境で飲むコーヒーはまた格別である。滝の近くまで降りてしばらく写真を撮影したり動画を撮影したりしてのんびりしてからこの先のコースを地図で確認する。
滝から先はちょっとした冒険が待っていた。沢筋の周囲に山道は付いていないので「沢歩き」をすることととなった。まだ水量が少ないということも幸いして頭を出している川石をピョンピョンと飛んで渡ったり、石のない場所では少しジャブジャブと水に入って歩いたり、沢歩きというよりは気分的には「水遊び」といったところである。春まだ早く少しひんやりとした深い谷あいの沢で子供の頃の水遊びをひさびさに想い出していた。しばらく進んで振り返ると周囲の森林からこぼれる午後の木漏れ日に照らし出された沢床の黄色っぽい滑石が美しく浮かび上がって見えた。贅沢な時間である。沢の奥からはヤマアカガエルの大合唱が響いていた。
コンクリートの小橋の下の「延命水」というポイントに到着、ちょっとした沢の冒険もここで終了。ここからは山の斜面につけられた山道を登って行く。再びテングチョウが飛ぶ。ぬかった道のあちこちにホンシュウジカの足跡がついていた。林の中からはモリアオガエルの「カララ、カララ…コロコロ」という声が聞こえてくる。野鳥はウグイスの外、森林性のカラ類やホオジロの囀りぐらい、越冬の冬鳥はもう移動しているし夏鳥の渡来にはまだ早いので中途半端な時期である。さらにコースを進むと集落の跡地に出た。廃屋となった住居や錆びついた農機具がいくつも残されていて少し寂しい気分となる。村はずれにある「見星院・けんせいいん」という素敵な名前の小さな寺院に到着。ここも雨戸が全てしまっていて住職がいる気配はない。敷地内に残された石仏たちが静かに迎えてくれた。すぐ隣には産土様を祀る「熊野神社」が苔むす石段の上に建っていた。門前には大人が3人以上かかえられる槇の巨木があり、この廃村となってしまった集落の歴史の古さを物語っていた。
この先にはさらに廃屋やかつて使われていた畑の跡地があって、その先からは杉林の山をジグザグに下って行く。すぐにポッカリと開けた空間に出て丈夫そうなコンクリートの橋を渡ると個展を開いている私設美術館の裏手に出た。この日は休館日。ここから里の集落を抜けると出発時に車を止めておいた「四方木ふれあい館」に到る。スマホを見ると14:43。
かなりゆっくり歩いて4時間半ほどのウォーキング。途中、生物観察などしなければ半分ぐらいの時間だろう。早春の好天の日。房総半島に残された秘境歩きを楽しめたのでした。心地よい良い疲れの中、房総の海辺の長い距離の道に帰路を取って帰宅した。
画像はトップが房総の名瀑「不動の滝・雄滝」、下が向かって左から「不動の滝・雌滝、雄滝」、四方木の山村風景、斜面林に咲いたミツマタの群落、美しいコケ植物、沢の滑石、沢の風景、壊れた木橋、見星院の石仏、熊野神社、槇の巨木、廃屋、切り株に生えたコケ植物。