絵画作品の新作『仏法僧・ぶっぽうそう』を制作している。例によって手漉きの和紙に顔料やアクリル絵の具を併用した手法で描いている。
今回のテーマは『仏法僧・ぶっぽうそう』。ブッポウソウはフクロウ科の夏鳥であるコノハズクの鳴き声。コノハズクはマレー半島等で越冬し、日本では九州以北の山地に夏鳥として訪れるムクドリより小さい小型のかわいいミミズクである。
夜行性で繁殖期には" キョッ、キョッ、コォー、キョッ、キョッ、コォー" と繰り返しよく通る声で鳴き、聞きなしとしては「仏法僧・ぶっぽうそう」と言われる。
この鳥に関しては古くから野鳥関係者の間で「声のブッポウソウ、姿のブッポウソウ」などと言われてきた。今でこそ声の主が判明したのでコノハズクの声だということが判っているのだが、昔の人はこの声の主をブッポウソウ科のブッポウソウだと勘違いしていたらしい。ブッポウソウ科のブッポウソウはコノハズクとは全く異なる野鳥である。
東南アジアやオーストラリア等で越冬し、日本では本州、四国、九州に夏鳥として渡来する。青緑色の美しい羽衣で嘴と足が真っ赤という、とても美しい鳥である。昼間に活動し、声は飛びながら" ゲッ、ゲッ、ゲッ、ゲッ、ゲゲゲーッ、ゲゲゲッ"などと姿の美しさからは想像できない濁ったダミ声で鳴くのである。
この両種の声と姿がどこでどう入れ違って混乱してしまったのだろうか?確かに繁殖期の夏には類似した環境に生息はしているのだが…。まるで何かのパラドックスのようでもある。
そして、この聞きなしとなっている『仏法僧・ぶっぽうそう』という言葉の語源は仏教用語に由来しているのだ。仏教には「三宝・さんぼう」という言葉がある。これは仏(ブッダ)と、法(ブッダが説いた教え)と、僧(僧侶や仏教徒が集まる場所)を示す言葉で仏教徒は出家者、在家者を問わず、これを敬わなくてはならないとされているのだ。
このコノハズクとその鳴き声、そして仏教用語をストレートに表す古の有名な句がある。
閑林に独坐す草堂の暁
三宝の声一鳥に聞く
一鳥声有り人に心有り
声心雲水俱に了々
<現代語訳>
のどかな林間の草堂に独坐して暁を迎える。
仏法僧と三宝を呼ぶ声を一羽の鳥の声に聞く。
一羽の鳥がその声を発し人に心の在り処が自覚される。
その声とその心、雲と水、相共に了々と明らかである。
「後夜聞仏法僧鳥」 沙門 空海
平安時代に和歌山県高野山に真言宗の修行道場を開いた弘法大師・空海の七言絶句である。高野山の深い山中の草堂で夜明け前まで瞑想修行をしていた空海和尚が1人明けゆく空を観ているとコノハズクの "ブッポウソーッ" のよく通る鮮やかな鳴き声がした。その声を聞いて自分の心もさわやかに晴れ渡ったという。状況がリアルに浮かび上がってくる写実的で見事な句だと思う。
作品はまさにこの句の状況のように深山の夜間に両目をキラキラと輝かせるコノハズクの姿を中心に描いている。少し幻想味を出したいと思い、星空や夜間に飛ぶ蛾の姿も描き入れてみた。今月に入ってようやく画面全体に絵の具ものってきたので、後は細部をどこまで描き詰められるかという段階に入った。
画像はトップが制作中の『仏法僧・ぶっぽうそう』の部分。下が同じく作品の部分、使用中の固形水彩絵の具、水彩用とアクリル用の筆。
今回のテーマは『仏法僧・ぶっぽうそう』。ブッポウソウはフクロウ科の夏鳥であるコノハズクの鳴き声。コノハズクはマレー半島等で越冬し、日本では九州以北の山地に夏鳥として訪れるムクドリより小さい小型のかわいいミミズクである。
夜行性で繁殖期には" キョッ、キョッ、コォー、キョッ、キョッ、コォー" と繰り返しよく通る声で鳴き、聞きなしとしては「仏法僧・ぶっぽうそう」と言われる。
この鳥に関しては古くから野鳥関係者の間で「声のブッポウソウ、姿のブッポウソウ」などと言われてきた。今でこそ声の主が判明したのでコノハズクの声だということが判っているのだが、昔の人はこの声の主をブッポウソウ科のブッポウソウだと勘違いしていたらしい。ブッポウソウ科のブッポウソウはコノハズクとは全く異なる野鳥である。
東南アジアやオーストラリア等で越冬し、日本では本州、四国、九州に夏鳥として渡来する。青緑色の美しい羽衣で嘴と足が真っ赤という、とても美しい鳥である。昼間に活動し、声は飛びながら" ゲッ、ゲッ、ゲッ、ゲッ、ゲゲゲーッ、ゲゲゲッ"などと姿の美しさからは想像できない濁ったダミ声で鳴くのである。
この両種の声と姿がどこでどう入れ違って混乱してしまったのだろうか?確かに繁殖期の夏には類似した環境に生息はしているのだが…。まるで何かのパラドックスのようでもある。
そして、この聞きなしとなっている『仏法僧・ぶっぽうそう』という言葉の語源は仏教用語に由来しているのだ。仏教には「三宝・さんぼう」という言葉がある。これは仏(ブッダ)と、法(ブッダが説いた教え)と、僧(僧侶や仏教徒が集まる場所)を示す言葉で仏教徒は出家者、在家者を問わず、これを敬わなくてはならないとされているのだ。
このコノハズクとその鳴き声、そして仏教用語をストレートに表す古の有名な句がある。
閑林に独坐す草堂の暁
三宝の声一鳥に聞く
一鳥声有り人に心有り
声心雲水俱に了々
<現代語訳>
のどかな林間の草堂に独坐して暁を迎える。
仏法僧と三宝を呼ぶ声を一羽の鳥の声に聞く。
一羽の鳥がその声を発し人に心の在り処が自覚される。
その声とその心、雲と水、相共に了々と明らかである。
「後夜聞仏法僧鳥」 沙門 空海
平安時代に和歌山県高野山に真言宗の修行道場を開いた弘法大師・空海の七言絶句である。高野山の深い山中の草堂で夜明け前まで瞑想修行をしていた空海和尚が1人明けゆく空を観ているとコノハズクの "ブッポウソーッ" のよく通る鮮やかな鳴き声がした。その声を聞いて自分の心もさわやかに晴れ渡ったという。状況がリアルに浮かび上がってくる写実的で見事な句だと思う。
作品はまさにこの句の状況のように深山の夜間に両目をキラキラと輝かせるコノハズクの姿を中心に描いている。少し幻想味を出したいと思い、星空や夜間に飛ぶ蛾の姿も描き入れてみた。今月に入ってようやく画面全体に絵の具ものってきたので、後は細部をどこまで描き詰められるかという段階に入った。
画像はトップが制作中の『仏法僧・ぶっぽうそう』の部分。下が同じく作品の部分、使用中の固形水彩絵の具、水彩用とアクリル用の筆。