長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

351. 伊豆沼・内沼、雁類 取材旅行 その一 

2018-12-08 19:19:04 | 野鳥・自然
先月末、11/27から二泊三日で宮城県の伊豆沼・内沼周辺に『野鳥版画』制作のため、野生の雁類の取材旅行に行ってきた。恒例の冬の遠出取材である。今年の二月に鹿児島県の出水平野に野生のツル類の取材を終えてから、次の取材地はどこにするのか連れ合いと検討をしていたが「久々に雁行が見たい」ということで早くから候補地として計画していた。

伊豆沼や内沼など、宮城県の栗原市、登米市一帯の内陸湖沼や周辺の水田地帯は昔から国内外でも有数の野生の雁類の越冬地であり、現在では国際的な湿地の生態系の保存条約である『ラムサール条約』の重要な登録地ともなっている。
雁類はカモ目カモ科に分類される比較的大型の野生水禽類で日本では現在11種・7亜種が観察確認されている。冬鳥として日本にはユーラシア大陸の北部や北極圏地域などから毎冬、渡って来るのである。

<JR.くりこま高原駅から伊豆沼・内沼サンクチュアリ・センターへ>

11/27 取材一日目、朝4時代に起床、電車を乗り継いで上野駅から東北新幹線に乗車、目的地の「くりこま高原駅」にはAM:10時ジャストに到着した。駅からロータリーに出るとさっそく上空をマガンの家族が " カハハン、カハハハ~ン " と、やや哀調を帯びた特徴のある声で飛んでいった。周囲をよく見渡すと数十羽が飛翔しているのが観られた。
レンタカー店で車を借りて真っ直ぐに「伊豆沼。内沼サンクチュアリー・センター」へと向かった。出水平野のツルの取材の時にお世話になった高校の先輩で鳥の世界の先輩でもあるT氏に今回も現地の情報を聞ける雁類の専門家を事前に紹介してもらっていた。センターの研究員であるS氏である。S氏もは偶然にも千葉の高校の10期後輩であった。カモ科の水禽類の生態研究が専門である。
センターに到着するとS氏が迎えに出て来てくれた。挨拶も早々にセンター内のテーブルで鳥の話。初対面なのでまずはお互いの鳥の世界の共通な「ヒト」の話。かなり重なるところがあり二人で驚いてしまう。そこから伊豆沼周辺の雁類の越冬状況やポイントとなる観察地をいくつか伺った。やはり地元で調査研究している方はアドバイスが的確である。

<伊豆沼東部の広い干拓地・カリガネとの出会い>

名残惜しいがまたの再会を約束してS氏と別れ、最初の観察ポイントへ移動。11月下旬、晩秋の里山の風景が美しい。工房のある千葉県の印旛沼周辺の里山によく似ているがそ、その規模はとても広く大きい。平野部といってもまったく平というわけでもなく、なだらかな丘陵地が車で走っていて心地よかった。
ナビゲーターを頼りにS氏から教わったポイントに到着。見渡す限りの広大な干拓地(水田)である。最初の内、雁の群れが見つからない。干拓地の真ん中あたりに到着。遠くに黒っぽい塊が見えたので双眼鏡で確かめると雁類の群れである。ゆっくりと車を徐行させ近づいていくと採餌中のマガンの大きな群れだった。周囲を良く観るといくつか大きな群れが降りている。ここからは車を降りずに車窓から観察する。降りるとドアの音で鳥が驚いて飛んでしまうからである。1羽1羽丁寧に双眼鏡で観察して行く。「いた!」連れ合いが静かに言った。「どこ?」「手前の群れの一番右!」言われるがまま双眼鏡で追うと…、いたいた、畔の上に雁の1種のカリガネの成鳥が2羽。マガンより一回り小さく嘴の基部の白色部が頭頂まで達し、黄色いアイリングがよく目立つチャーミングでかわいらしい雁である。歩いたり、空のカラスに警戒したり、伸びをしたり、ゆっくりとその姿を堪能させてくれた。この後、干拓地の空き地でコンロでお湯を沸かし、遅い昼食をとってから次のポイントへと移動。

<蕪栗沼周辺の干拓地・多くの雁類の採餌場・シジュウカラガンとの出会い>

二つ目の観察ポイントは伊豆沼・内沼に並んで多くの雁類の塒(ねぐら)となっている蕪栗沼(かぶくりぬま)周辺の干拓地。ここはかなり多い数の雁類が採餌場としている。結構距離を走ってポイントに到着する。土手の上の道路から広い干拓地を見渡すことができる場所である。とても大きな群れがついていた。マガン、マガン、マガン、見渡す限りのマガンである。双眼鏡で端から見て行く中、1羽の真っ白い鳥が目に入ってきた。距離は遠い。「もしや!」と思い高倍率の望遠鏡をセットし、じっくりと観察すると「ハクガン」であった。
しばらく観察してから蕪栗沼へと移動する。途中、マガンの群れをみつけては徐行し双眼鏡を向けてみた。農道のコーナーを曲がる時に前方にマガンのまとまった群れを発見、よくみると違う種類が混じっている。丁寧に観て行くと首から頭部にかけての白と黒のコントラストが美しい「シジュウカラガン」である。車の中から撮影する。数えると30羽ほどがいた。

<蕪栗沼・雁類の塒入りを観察する>

最後の観察ポイントは、この日のメインイベント「日入り時の雁の塒入り」である。15:35、蕪栗沼の小さな駐車場に到着。この塒入りを目当てのカメラマン5-6人がすでに集まっていた。バーダーというわけでもなさそうである。ここから、観察・撮影機材を担ぎ、沼の土手を歩いて水面が見える場所まで移動する。さすがに少し寒くなってきた。
ヨシ原越しに水面が見える場所に到着するが、マガンの数はまばらである。少し大きい雁がいたのでスコープで確認すると亜種オオヒシクイが25羽ほど見つかった。オオハクチョウも50羽ほど入っているが、まだ塒に入っている数ではない。待つこと1時間弱。そろそろ日の入りである。" カハハン、カハハハ~ン " いくつかのマガンの群れがさまざまな方角から入って来始めた。一つ一つの群れを追っているといつの間にか少し奥の空に大きな群れがこちらに向かって来ている。いちいちその数に驚いているうちに、どんどんとその数は増し、こちらももうあきれて口を開けて眺めているだけになる。その数は目算だが万羽単位だと思う。家族同士で行動する雁が迷わないように合図しているのだろうか、周囲はいつの間にか雁類の鳴き交わす声で騒がしいほどに溢れかえっていた。陽が落ちて周囲が暗くなってきてからも、どんどん塒入りしてくる。この光景は強烈に網膜に焼き付けられた。初日から感動的でダイナミックなシーンを観せてもらった。

結局、この日のうちに伊豆沼周辺で観察できる雁類、マガン、カリガネ、ハクガン、シジュウカラガン、ヒシクイの5種を観察してしまった。S氏の的確なアドバイスに感謝である。明日からはもう少し余裕を持って風景を含めて取材できるだろう。塒入りの熱い興奮が冷めないでいる状態のまま、宿である「伊豆沼ウエットランド交流センター」へと向かった。

画像はトップが夕陽に染まる蕪栗沼の雁類の塒。下が向かって左から蕪栗沼の夕景、マガンの大きな群れ、マガン、カリガネ、シジュウカラガン。



            





最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございました。 (uccello)
2018-12-20 20:13:17
ブロガーのみなさん、いつもマイブログにお立ち寄りいただきありがとうございます。
返信する

コメントを投稿