写真:門司港レトロ地区、第一船だまり辺り
10月14日は“鉄道の日”です。
明治5(1872)年のこの日、新橋駅と横浜駅との間で日本で最初の鉄道が開業したことに因んだもので、ちょうど秋の気候のよいシーズンになってきたので鉄道に乗ってどこかに行きたくなってきます。
それを見越したのか、全国のJRの普通列車が載り放題になる
「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」なるお得なきっぷも売り出されています(10/3~10/18まで1枚で3回有効、大人9180円)。
このきっぷを使って、秋の乗り鉄と洒落込むことにしました。
まずは、日本の鉄道の誕生日に想いを馳せて、九州の鉄道起点の地・門司港へ出発!
平成21年10月3日(「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」1/3回目)
鹿児島本線上り・鳥栖行き普通列車(5322M)で出発。
レザーシートにブティック風インテリアのファッショナブルな車内が自慢の817系電車です。
08:09、荒尾駅で5322Mから下車。
ここで同じプラットホームの隣に停まっている門司港行き準快速(4330M)に乗り換え。
811系電車。
5322M到着時はまだ「回送」の方向幕を出しています。ドアも開いていません。
08:37、荒尾駅発車。
今朝は早起きしたので、睡魔が襲ってきてそのまま寝落ち。
気が付くと既に北九州市内を走っていました。
11:11、終着の門司港駅に到着。
重要文化財・門司港駅駅舎。
威風堂々、風格の漂うネオ・ルネッサンス様式の駅舎は大正3年に建てられました。
僕が日本で一番好きな駅舎です。
門司港駅は九州の鉄道の起点として、また国際貿易港を擁する港湾都市の表玄関として明治から大正にかけて大いに栄えました。
駅周辺には今でも往時の繁栄の面影を残したレトロな建築が建ち並んでおり、現在は
「門司港レトロ地区」として一大観光スポットとして整備されています。
門司港レトロ地区全景。
明治・大正期の洋館と、高層タワーマンションやモダンなデザイナーズホテルが混在する、独特な景観です。
奥の方には吊橋の関門橋も見えています。
船だまりに沿って建つ「門司港ホテル」。
イタリアの著名な建築家アルド・ロッシ氏の遺作だそうです。
門司港レトロ地区から少し離れたところには、懐かしい雰囲気の商店街もあります。
この商店街で、以前から僕が気になってるのがこのお店。
研究熱心なうどん屋さんです。
神様への感謝も忘れない、御主人のなかなか素晴らしい心意気を感じます。
門司港レトロ地区周辺を歩き回っていると、街の中に線路が通っているのに気が付きます。
この線路はJR九州の鹿児島本線ではありません。
実はこれ、数年前まで門司の先にある港へセメントや石炭を運ぶ貨物列車の通る臨港線として使用されていたもので、貨物列車が運用休止となったのを機に門司港レトロ地区観光専用の路線として生まれ変わり今年の春に見事、復活を果たしたのです!
その名も
「やまぎんレトロライン 門司港レトロ観光線」!
今日はこの門司港レトロ観光線を走る
トロッコ列車「潮風号」に乗りたくてここまでやって来たのですよ。
さてトロッコ列車「潮風号」の人気は上々のようで、ネットで予約できる座席指定席も今日はほとんど満席売り切れ御礼でした。
何とか指定席を確保出来たのは午後1時に「関門海峡めかり駅」を発車する列車。門司港駅へと向かって走る列車なので、2キロほど離れた始発駅の「関門海峡めかり駅」へと向かわなくてはいけません。
とはいえ、時間はたっぷりありますし、天気もまあまあなので線路に沿って歩いて行くのも楽しそうです。
JR門司港駅のすぐ隣にある「九州鉄道記念館駅」から歩き始めます。
向うから、満席で指定席券が買えなかった便の「潮風号」がやって来ました。
ブルートレインを思わせる濃紺の塗装がシックで、なかなかお洒落ですねぇ!
門司港レトロ地区の中心部を眺めながら歩くうちに、すぐに「出光美術館駅」に到着。
この辺りだけ、線路が複線になっています。
臨港線だった頃は大きなDD51型ディーゼル機関車に牽かれた貨物列車が行き交っていたんでしょうねぇ。
漁港や貨物倉庫の建ち並ぶ地区にやって来ました。
関門橋がだんだん近付いてきます。
海上保安庁の船がいます。
関門海峡は「国際航路」ですから、警備も厳重なんですねきっと。
ノーフォーク広場(レストラン「ら・むゑっと」入口)駅。
駅名になっているノーフォーク広場はどこにあるのかなと思っていたら…
線路はトンネルに入って行ってしまいました。関門橋の下をくぐっているトンネルのようです。
ノーフォーク広場はトンネルのたもとにある小さな公園でした。
ノーフォーク広場の先にどんどん歩いて行くと…
関門橋が目の前にそびえていました!
以前、京都や長野にドライブに行った時は、この上を走り抜けたんですねぇ…
関門海峡を跨いで、一直線。
対岸は本州、山口県下関市です。
関門橋のわきにひっそりある、関門人道トンネル入り口。
一見、ただのビルですが、トラックの向こう側には珍しい歩行者専用海底トンネルの入り口があります。
但し現在、海底トンネルはリフレッシュ工事中で閉鎖中。関門橋を通る代行バスが走っているとのこと。
さらに海峡沿いの道を歩いて行くと、市民プールがある公園に機関車が!
銀色に輝くこの機関車、関門トンネル専用に造られたEF30。
いぶし銀の車体は海底トンネルに滴り落ちる海水の塩害から電気機器類を守るステンレスボディです。
かつては関門トンネルを通過するブルートレインの先頭にも立って大活躍した名機ですが、現在は後輩の機関車に海底の道を譲り全車引退しています。
ここにいるEF30はトップナンバーの1号機で、日夜海底を走り続けた海峡を地上から見守りながら余生を送っています。
茶色の旧型客車を従えて、関門橋の向うに向かって走って行こうとしているようですね。
ところで、このEF30の停まっている場所の隣が門司港レトロ観光線の「関門海峡めかり駅」です。やっと着きました!
早速、ネット予約してコンビニで受け取っていた座席指定券をボランティアスタッフの駅員さんに見せてプラットホームに入ります。運賃は全区間一律で片道300円(子供半額)、座席指定料金は100円です。
「関門海峡めかり駅」は終着駅ですが、線路はまだ先まで続いていますね。
この先の臨港線時代の貨物駅跡にトロッコ列車の車庫があるそうです。
トロッコ列車「潮風号」がやって来ました!
トロッコ客車の車端部を見ると、島原鉄道で検査を受けたことが記載されています。
実はこのトロッコ客車、以前は長崎県の島原鉄道で観光トロッコ列車「島鉄ハッピートレイン」として走っていた車輌を譲り受けたもの。
僕も
この時、島原鉄道で出会っていたりします。
午後1時発の「潮風号」はほぼ満席で「関門海峡めかり駅」を発車します。
自由席車では立席の乗客も出るほどの人気ぶりです。
EF30に見送られて出発。
すぐに関門橋の下をくぐっているトンネルに入りますが、トンネル通過中の暗闇では天井に関門海峡の海の中の世界が浮かび上がる趣向も。
トンネルを抜けると、車窓には海が。
さっき歩いてきた場所です。港のただ中を駆け抜けます。
なんと言っても、昔は貨物列車の乗務員しか見ることの出来なかった車窓です。
約10分で「九州鉄道記念館駅」に到着しました。
ああ面白かった!
トロッコから海峡やレトロの街並みを眺めるだけでも楽しいですが、臨港線という本来乗客が乗れない鉄道だった路線に乗れるのはワクワクしますね。
トロッコ列車「潮風号」の機関車、DB10。
とにかく小さい機関車なので、運転士さんは運転席に乗り込むだけで大変そうです。
実はこのDB10も、以前は熊本県の南阿蘇鉄道でトロッコ列車を牽いていた機関車。
僕も南阿蘇鉄道時代に一度、乗ったことがあったりします。
島原と南阿蘇のトロッコOBが門司港に集まってトロッコ列車「潮風号」は走っているんですね。
「九州鉄道記念館駅」からJR門司港駅に向かう途中、門司港駅構内の片隅にローズピンクの機関車が留置されているのが見えました。
先日の九州最後のブルートレイン「はやぶさ」「富士」廃止で役目を終えた関門トンネル区間でのブルトレ牽引専用機関車のEF81、「関門海峡めかり駅」にいたEF30の後輩です。
「JR貨物に売却されるらしい」という噂もありますが、ナンバープレートを外された寂しい姿で佇んでいます。
最後までブルートレインの縁の下の力持ちとして海底トンネルを地道に走り続けたEF81、トロッコ列車「潮風号」のように新しい使命を与えられ再び走り始めるといいがな…
そう願いながら、門司港駅を後にします。
「さぁ、僕も海底トンネルをくぐって本州に行くぞ!」
→秋の乗り鉄'09 長門本山駅に海を見に行こう!に続きます