宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

これまでになく大量の星が作られる場所

2012年08月18日 | 宇宙 space
地球から57億年離れた場所に、非常に明るい銀河団が発見されました。

南天の“ほうおう座(英名Phoenix)”にあるので“フェニックス銀河団”と名付けられました。

銀河団とは、数百の銀河が重力によって結びついている集団のことです。
今回発見された“フェニックス銀河団”は、これまで知られている銀河団の中では最も質量が大きいんですねー
銀河系を含む銀河群の総質量も、“フェニックス銀河団”の0.1%程度にしかならないそうです。

まぁー 銀河系が属する集団は銀河が30ほどしかなく規模が違いすぎますね。 
(銀河系は銀河団ではなく、銀河群と呼ばれる集団に属しています。)

そして、もう1つの特徴がこの銀河団から、史上最も明るいX線が観測されていることです。

これは、“フェニックス銀河団”の中心にある銀河が、活発に恒星を生み出す“スターバースト期”にあるからで、通常の1000倍近いペースで恒星を生み出しているようです。

NASAのX線観測衛星“チャンドラ”や、アメリカ国立科学財団の“南極点望遠鏡”、その他に地上と軌道上を合わせて、8つの望遠鏡からデータを得て分析したところ、この中心にある銀河が年に740個以上もの恒星を生み出していることが分かりました。
これまで銀河団の中心銀河による、恒星を生み出すペースの記録は年に約150個なので驚異的な数です。

銀河団の中心にある銀河は、ふつうその銀河団の中で最も古いんですねー
(特徴的な赤い光を放っているのが古い証拠になります。)
これは恒星を生み出す年齢を、はるかに過ぎていることを意味します。
なので今回の発見は、これまでの有力な説と合わない予想外のものになってしまいます。

恒星の爆発により放出されたガスは、時とともに自然に冷え迅速に固体化します。
そして星を形成するのに十分な低温のガスの流れが生み出されるはずです。

でも、これまでそのような現象が観測されていないんですねー
なぜかと言うと、たいていの場合には銀河の中心にある超大質量ブラックフォールから放出される物質のジェットが周囲のガスを加熱し、大量の恒星が誕生できる温度にまで冷えることを妨げているからなんです。





“フェニックス銀河団”の
中心にある銀河(想像図)
枠内はX線・可視光・紫外線で
見た“フェニックス銀河団”



でも“フェニックス銀河団”では何らかの理由でガスが加熱されないので、たくさんの恒星が生み出されています。

ひょっとすると、ブラックホールが十分な熱をもたらすほど強力になる前の段階なのかもしれません。
この段階が、ほんの1億年ほどの短い期間しか続かないとしたら…
“フェニックス銀河団”が特殊というより、短い“スターバースト期”にある銀河団を発見できたことに過ぎないんですよねー

今の“フェニックス銀河団”は通常の銀河の進化の中で、これまで知られていなかった重要な段階のひとコマなのかもしれません。

この説が正しいのかはまだ分かりませんが、
“フェニックス銀河団”は、いろいろな銀河団の進化を解明する手掛かりになるのは間違いないようです。